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EVキーマンに聞く/EVレース王者 地頭所光選手 ①「小学生時代、ラジコンカーが僕のレース本能に火をつけた」

2022年5月11日更新

地頭所光選手_1

春が来れば、2022 全日本EVグランプリシリーズ(ALL JAPAN EV-GP SERIES)が幕を開ける。

我々は、このレースへの興味関心をさらにかき立てるべく、4連覇中の王者・地頭所光選手(じとうしょ・ひかる、チームタイサン)にインタビューを試みた。

東京大学の現役大学院生(インタビュー当時)でもある彼は、いったいどんな人物であり選手なのか。

EVレースを勝ち続ける中、今後、どこに向かおうとしているのか――。

東大キャンパスの一室で行ったロングインタビューは、幼少期の思い出などをたどりつつスタートした。

珍しい名前

——まずは生い立ちからお聞きします。千葉県で生まれ育ったそうですね。

地頭所 はい。1997年に千葉県千葉市の蘇我で生まれ、そこで育ちました。鹿児島県出身の祖父が若いころに移り住んで以来、我が家はずっと千葉なんです。

——地頭所というと、歴史の教科書に出てくる「守護・地頭」を連想しますが、関係ありますか?

地頭所 いえ、鹿児島県の南さつま市に加世田地頭所町というところがあって、その地名から来ています。「守護・地頭」が由来ではないみたいですね。

——そうなんですか。初対面の人は、この苗字を聞いて驚くでしょう。

地頭所 はい。幼いときから1億回ほど「珍しいね」って言われ続けてきました(笑)。だからといって、嫌というわけではなく、むしろレース界で名前を売るのに役立っているので、すごく気に入っています。みんな、一発で覚えてくれますから。

——一方、ファーストネームは「光」とわかりやすい一文字です。

地頭所 前が大きい分、後は小さくしよういうことで親が付けてくれたんですが、光り輝く活躍をしてほしいという思いも込めたみたいです。

——光り輝く。チャンピオンっぽくていいですね。ご両親はどんなお仕事を?

地頭所 どちらも建築関係の仕事をしています。母は建設会社の事務をしていて、父は自分でリフォーム会社を経営しているんです。ちなみに、母方の祖父も工務店を営んでいました。いわば我が家は建築系なんですが、長男の僕はまったく無関係のことをやっているわけです(笑)。

文武両道の子

——幼いころは、どんな子どもだったんでしょう。

地頭所 今とは正反対で、すごく引っ込み思案な子でした。あと、さみしがり屋でもありました。保育園まで送ってくれた親が帰るときに、全力で阻止しようとしてましたから(笑)。

——へえ、意外です。

地頭所 人と普通に話せるようになったのは小学校の高学年ぐらいからかな。とにかく、社会性の構築がだいぶスローな子だったんですよ。

——引っ込み思案とはいえ、好きなことはあったんですよね?

地頭所 ありました。最初に興味を覚えたのは5歳くらいからはじめた公文の勉強でした。小学校レベルの計算を先取りした問題とかを解いて、先生に丸付けしてもらうのが楽しくて仕方なかった。100点の花丸フルコンボを達成するのが、ものすごい快感で……。もう、それをずっと追い求めていました。

——最初の趣味が勉強だなんて、さすがのちに東京大学に入るだけのことはあります(笑)。スポーツのほうはどうだったんですか?

地頭所 走るのが速かったし好きだったので、小学校に入ってからは昼休みにいろんなスポーツをやっていました。特にサッカーには熱中してましたね。

地頭所選手_小学校卒業式

——大人しいけれど文武両道だった、と。では、クルマへの興味はいつから?

地頭所 小学校3年生のときにラジコンカーに興味を持ったのが最初です。5年生のときに、お年玉を貯めたお金で京商の「ミニッツ」というハイスペックなものを買ってからは、ラジコンカーのレースにどっぷりはまり、毎週末には専用のサーキットに行ったりしてました。

——そのハイスペックなラジコンは、速さを出すために自分でいじったりするんですか?

地頭所 はい。速く走らせるために、サスペンションのバネからすべてをチューニングしていました。僕は、当時から「セッティング次第でマシンの挙動がぜんぜん違ってくる」ということをラジコンで学んでいたんです。



スーパーGTとの出会い

——そのころは、まだリアルなクルマやレースに目が向いていなかったんですか?

地頭所 いえ、かなり興味を持っていました。6年生でスーパーGT参戦車のラジコンを手に入れたとき、「スーパーGT」というレースがあることを知り、その延長線上でテレビ東京の『激走!GT』という番組を熱心に観るようになり、本物のレースの大ファンになったんです。

——そのころのスーパーGTでは、どんな戦いが繰り広げられていたんですか?

地頭所 2008~2009年くらいかな……GT500クラスでは、NSX対SC430対GTRという日本の三大メーカーのマシンによる熱いバトルが繰り広げられていました。当時、井出有治さん、細川慎弥さん、脇阪寿一さん、飯田章さんなどがバリバリの現役で走っていましたね。

——どのマシンを応援していましたか?

地頭所 自分が持っていたラジコンカーと同じRAYBRIG NSXを応援していました。ブルーを主体としたカラーリングがめちゃくちゃ格好いいなと思って。

——仮想とリアルがリンクして、気持ちが盛り上がったんですね。

地頭所 そうです。テレビの画面にRAYBRIG NSXが映ると「僕のラジコンカーと同じのが走ってる」と興奮していました。当時はよくスピンしたりぶつかったりして苦戦気味だったんですけど、鈴鹿1000㎞レースで井出有治さんがピットスタートから怒濤の追い上げで2位になったのを目の当たりにして、「本物のマシンでやるレースってすごい」と、感動したのを覚えています。

——そういうラジコンやレースに入れ込む気質は、ご家族からの遺伝的なものでしょうか?

地頭所 うーん、どうなんでしょう。父は一時期フェアレディZに乗っていましたけど、そんなにクルマやレースが好きという感じではなかったです。なので、遺伝ではない気がします。やっぱりラジコンありきの話。普通に勉強とスポーツをやっている中で、ラジコンカーで競う楽しさや本物のレースの魅力を知ったことで、レースに目覚めていったんだと思います。たぶん後天的な変異というやつですね(笑)。――つづく

EVキーマンに聞く/EVレース王者 地頭所光選手
①「小学生時代、ラジコンカーが僕のレース本能に火をつけた」
②「10分間の初カート体験。これが人生のターニングポイントになった」
③「“カートからレーサー”は無理と感じ、東大受験に専念」
④「“東大の神”と呼ばれた僕(笑)。偶然のEVレース参戦で夢が再燃」
⑤「4連覇できたのは、圧倒的に速いテスラ車を駆っていたから」
⑥「2022シーズンは強敵だらけ。5連覇はそう簡単じゃない」
⑦「トップレーサーになって、EVのワールドカップに挑戦したい」


地頭所光(じとうしょ・ひかる)
1996年千葉県生まれ。小学生のときにラジコンカーの趣味がきっかけでスーパーGTを観るようになり、レーサーになる夢を持つ。中学1年から高校2年にかけてカートレースを経験。2016年に東京大学に入学してからは自動車部に所属してジムカーナやラリーに出場して勝利を重ねた。大学3年時からJEVRA主催の全日本EVグランプリシリーズ(ALL JAPAN EV-GP SERIES)に参戦し、2021年のシリーズまで4連覇を達成。また、2021年にはTGR 86/BRZ Raceのクラブマンエキスパートクラスにも参戦し、開幕から6勝してシリーズチャンピオンに輝いている。2022年シーズンの目標は全日本EVグランプリシリーズの5連覇と、GR 86/BRZ Raceプロクラスでの優勝およびFIA-F4でのシリーズ入賞。

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