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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年7月5日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
一浪の末に大学生になったBくん(19歳)は、叔父さんから遅れ馳せながらの入学祝いとして、叔父さんが乗っていた原付バイクをゆずってもらうことになった。「どうせなら祝い金をくれればいいのに」とちょっと思ったのだったが、急な坂道がつづく大学までの自転車通学がかなりきついと感じはじめていたため、渡りに舟ならぬ渡りにバイクということで、ありがたくちょうだいすることにした。
バイク譲渡の日、叔父さんはBくんにこういった。
「こいつは便利だぞ。ラッタッターってな」
聞きなれぬ擬音にけげんな顔をしたBくんに、叔父さんは「ハハハ、昔の流行語だよ。軽快だろ」といった後、大切なことを付け加えた。
「バイクの名義変更は必ずやってくれよな。じゃないと税金の請求がオレにきちゃうからさ」
「あと、自賠責保険はあと1年ほど残っているので、すぐってわけではないんだけど、期限がくる前までに更新するのを忘れないようにな!」
Bくんは、とりあえず、叔父さんにいわれたとおり市役所で名義変更の手続きを済ませた。そして、その翌日から原付バイクによる通学をはじめた。「ラッタッター」と叫びたくなるくらい、それは想像以上に楽ちんで快適な通学方法だった。
が、Bくん、ワクワクの1年を過ごし、先輩として新入生を迎えた新年度の初っ端に、大きな悲劇にみまわれる。
新歓コンパの嵐も過ぎようとしていた春たけなわ、さすがのBくんもちょっと疲れ、ボーッとした状態で大学をめざす途中、前をいく自転車に軽く接触し、運転していたお爺さんごとパタンと転倒させる事故を起こしてしまった。
登りの坂道であったためにあまりスピードはでておらず、そんなに大事になるとは思えなかったのだが、どうしたことか、お爺さんの足の骨が折れていたことが判明し、けっこう重大な事態へと発展した。
お爺さんが多少よろけながら自転車を走らせていたという事情はあったものの、後方から追突する形での事故だったので、明らかにBくんに100%の過失責任がある事故といえた。実際、現場検証にきた警察も、そういう見解を示した。
たまっていた疲れからとはいえ事故を起こした自分の拙さを反省し、お爺さんに大けがを負わせた申し訳なさに、事後現場でBくんは、ひどく落ち込んだのだったが、その後にもうひとつショッキングな事実が判明し、Bくんはさらに激烈な落ち込みを覚えるに至った。
じつは、Bくん、叔父さんにいわれていた「1年経ったら自賠責が切れるので、それまでに更新すべし」ということをすっかり忘れていて、事故を起こした時点でバイクの自賠責の期限が既に切れている状態となっていたのだ。つまり、Bくんは、お爺さんへの補償をすべて自分で支払う必要に迫られ、かつ、自賠責切れの運転ということで、重い罰則が科せられることとなったのである。
「ラッタッター」な気分は、一瞬にして「ヤッチャッター」へと暗転。明るくなるはずだったその後の学生ライフにも、大きく黒い影がさすことになったのであった。嗚呼……。
原付には車検がないため
うっかり忘れが多発する
世の中には、自賠責(自動車損害賠償責任保険)の期限が切れたままの原付バイクに乗っている人が少なからずいます。そして、その多くは、Bくんと同じで「うっかり忘れていた」という人たちです(なかには確信犯もいるようですが……)。
うっかり忘れてしまう原因としては、本人が自賠責に加入することの重要性を認識していないという側面もあるのですが、原付バイクには車検がないという社会的制度も大きく影響していると考えられます。
自動車と250cc超のバイクには車検があり、それを通すためには自賠責に加入していることが必須条件となります。そのため、うっかり忘れるということがほとんど起こりません。
それに対して、原付バイク~250cc以下のバイクには車検というものがありません。なので、それらを運転する人は自分で自賠責の期限を認識しておき、切れる前に代理店、販売店、郵便局、コンビニ、インターネットなどで加入(更新)の手続きをする必要があります。
つまり、その人の認識と記憶とそれに基づく自主行動に頼るところが多く、こうなると、どうしてもうっかり忘れてしまう(あるいは面倒くさくて先延ばしにしてしまう)といった人が少なからず発生してしまうことになるのです。
自賠責の加入は
法律で義務付けられている
自賠責は、事故の被害者を救済することを前提にして最低限の対人賠償が行えるようにした保険です。法律で加入が義務付けられているため、一般には強制保険とも呼ばれています。
最低限の対人賠償額であり、そして強制ゆえに、加入料はそう高くはありません。原付バイクの例でいえば、1年で7,500円、2年で9,950円、最長5年で16,990円となっています。
バイクに乗るいっぱしの社会人(交通社会人)であるなら、せめてこれくらいはちゃんと払っておきたいものです。
◎自賠責による補償の支払い限度額
・死亡 3,000万円
・傷害 120万円
・後遺障害 75万円~4,000万円
なのに、うっかり加入しないままでいるとどうなるか?
当たり前のことですが、事故を起こしたときの補償の支払いは一切ありません。過失分のすべてが自腹での補償となります。自分の過失割合100%の事故で被害者がもし亡くなったとしたら、多額の補償の責務を一身に背負うこととなるのです。
もちろん、法的な咎めも当然あり、以下のように決して軽くはない罰則が科せられます。
◎自賠責が切れた状態で運転していた場合の罰則
・1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・6ヵ月の範囲内で免許停止処分
※自賠責の証明書を所持していなかった場合でも30万円以下の罰金
ほんのちょっとしたうっかりが、人生そのものを大きく狂わすことになるかも……。このことをしっかり心にとめて、自賠責には必ず隙間なく加入するようにしましょう。
満期年月の確認は
自賠責加入ステッカーで
自賠責切れを起こさない手立てとしては、自分でしっかりと満期年月を覚えておくということが一番なのですが、じつはわかりやすい目安となるものがあります。
それはナンバープレートに貼ってある、自賠責が満期となる年月を示す「自賠責加入ステッカー(保険標章)」です。
このステッカーを見れば、いつ更新すべきかが一目瞭然です。何年何月と自分の頭のなかで記憶しなくても、ことあるたびにこれを確認する習慣をつけておけば、おそらく“うっかり忘れ”の確率はかなり低くなることでしょう。
ということで、原付バイクに乗っている人は、改めてナンバープレートのこのステッカーの存在を確かめておいてください。
なお、この自賠責加入ステッカーは、2011年の4月から満期年を青、橙、紫、黄緑、赤、黄、緑の順に7色で色分けして示すようになっています。つまり、数字に加えて、色でも満期年がわかるように、新たな工夫が施されたわけです。
Bくんは、毎日通学に原付バイクを使っていたにもかかわらず、ナンバープレートに貼られたステッカーの存在すら目に入っていなかったようです。
その結果、最悪ともいえる事態になってしまいました。Bくんの悲劇を他人事とせず、自賠責の重要性を再認識していただきたいと思います。「うっかり自賠責切れ」…大したことでないようでいて、じつに大事だと声を大にして申し上げます。
原付バイクの「うっかり自賠責切れ」にご用心!(前編)
原付バイクの「うっかり自賠責切れ」にご用心!(後編)
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