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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2022年5月12日更新
世界的部品メーカーが
コンバートEVで参戦中
EV-1クラスのテスラモデル3ばかりが脚光を浴びる全日本EVグランプリシリーズ(All JAPAN EV-GP SERIES)だが、現在地における速さ・強さという視点を外せば、その他のクラスの参戦車両もかなり興味深い存在となっている。
昨シーズン途中からEV-Cクラス(市販エンジン車をEVに改造した車両のクラス)に参戦しているMuSASHi D-REV シビックEVRもそんな車両のひとつ。手づくり感がいっぱいで速くはないが、その実、大きなポテンシャルを秘めていそうなオーラを漂わせている。
調べてみると、これを走らせていたのは、世界中の自動車メーカーにデファレンシャルギアやトランスミッションギアなどを納めている武蔵精密工業の研究開発部を主体とした社員たちがメンバーとなっている「D-REV@武蔵精密工業」というチーム。聞けば、「会社の若手が自主的に集まった部活動みたいなチーム」とのことだが、会社の承認と後押しをしっかり受けた上で参戦を続けていた。
実は武蔵精密工業は、2022年から「GO FAR BEYOND! 枠を壊し冒険へ出かけよう!」のビジョンを掲げ、今後のカーボンニュートラル社会の実現に役立つ製品開発に本格的に乗り出すことを決めている。例えば、今まではエンジン車のためのギアなどの部品を中心に作り続けてきたが、これからは環境にいいEVの走りをより効率的かつ快適にするためのスペシャルな部品を作ることも重要な使命のひとつとし、その実現に向けて積極的な取り組みをはじめているのだ。
EVレース参戦は、言うなればその取り組みの一環。部活動ながらも、チームは真剣にMuSASHi D-REV シビックEVRを走らせていたのである。オーラが漂うわけだ。
トランスミッションで
EVの駆動力のアップを
チーム「D-REV@武蔵精密工業」は、これからMuSASHi D-REV シビックEVRをどんなクルマに仕上げるつもりなのか。そして、何を達成しようとしているのか。
その辺りについて、チームの監督的立場にいる加藤宣保氏(研究開発部グループマネージャー)に聞いてみた。
——MuSASHi D-REV シビックEVRは、ホンダのシビックをEVにコンバートした1台。現状、どういったEVになっているんですか?
加藤 まだまだ初期型ですが、バッテリーとモーターは、2代目日産リーフのリユースを積んでいます。それから、インバータは効率よくパワーがでて航続距離も伸びるSCOTT社製のものを搭載しています。このインバータは自分たちでモーター性能を調整できるのも利点となっています。
——リユースバッテリーが積んである後席部分には、エアダクトが龍のようにうねっている。なんだか迫力満点ですね。
加藤 これは、バッテリーの熱ダレを防ぐための空冷装置。もともとリーフのバッテリーは空冷式で、それをレース用に強化したら、こんな大仰な形になったんです(笑)。
—全部、自分たちでコンバートしたのですか?
加藤 いえ、コンバートEVづくりに関しては我々はまだまだ素人なので、コンバート専門業者であるOZモーターズさんの力をたくさん借りました。今のところ我々がやっているのは、足回りの調整や、バッテリーとモーター等のデータの解析ですね。
——この車両にはミッションが付いていますけど、これは生きているんですか?
加藤 はい、生きています。4速と5速だけだけど、レースでちゃんと使っているんですよ。
——EVにもミッションは必要なんでしょうか?
加藤 EVをより速く、より長く走らせるには、ミッション操作の介入はかなり重要になってきます。ミッションを使って、モーターにとって適切なポイントで走行することができれば、必要なトルクを下げられます。つまり、バッテリーの出力や、モーターのトルクが少なくなっても、同等の走りができるようになるんです。
——では、いずれこのシビックに、武蔵精密工業さん特性のミッションが付く可能性もあるわけですね。
加藤 将来的にはあります。そのそもこのレースへの参戦は、EV用デファレンシャルギアとトランスミッションギアの開発を目的のひとつにしていますから……。いずれできあがるミッションは、ギアボックスとなる可能性もあるんですけどね。
——そうですか。御社にとっては、このレースはまさに走る実験室ということなんですね。
加藤 ええ、そういうことになります。
キャパシタ搭載で
さらなる強化を目論む
——ちなみに、ギア類以外の部品も何か付けるんですか?
加藤 バッテリーの電力の安定的出力を可能にするキャパシタ(≒コンデンサ)を付ける予定です。実は弊社の系列会社では、現在、高性能な自社製のEV用キャパシタの開発を進めており、完成の暁にはシビックに搭載するつもりです。これがあれば、出力を抑えたバッテリーであっても、戦闘力アップが望めます。
(画像:武蔵エナジーソリューションズ提供)
(画像:武蔵エナジーソリューションズ提供)
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