ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2017年6月15日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
休日のドライブを終えて、夕暮れの高速道路を使って家路を急いでいたNくん(26歳・フリーター)。
出口が間近となったので、走行車線に入ってスピードを緩めはじめた。と、横の追い越し車線を大型トラックが猛スピードで駆け抜けていった。その瞬間、パシッとフロントガラスになにかが当たった。
「えっ、なになに?」
Nくんは、とりあえず出口をでた。そして、しばらくいったところでクルマを停止させクルマをチェックした。もう薄暗がりだったが、スマホのLEDライトで照らしてみたところ、フロントガラスの運転席側に小さなヒビがあるのがわかった。
「わ、なんだよ」
おそらく、大型トラックが弾いた飛び石が原因と思われた。Nくん、憤懣やるかたなかったが、もうどうしようもなく、トラックへの悪態をつきながら帰宅することになった。
翌朝、ディーラーに愛車をもちこんだ。すると、「リペアできなくもないですが、小さなヒビでもなにかの拍子で大きく広がる可能性があるので、フロントガラスをそっくり新しいものに交換したほうがいいと思いますよ」といわれた。そして「費用は10万円ほどですかね」という見積もりが口頭で示された。
Nくんは10万円という額に愕然としたが、自動車保険でなんとかなるはずと思い、その場で契約しているネット保険の窓口に電話した。そしたら、「はい、車両保険で修理代はでます。ただし、免責5万円で契約されているので、10万円のうちの5万円はご自身の負担となります」といわれた。そして、「保険を使われたあとは、等級が下がり、割引率も変わりますので、その点、ご承知おきください」との説明も加えられた。
保険を使ったほうがトクなのか、使わないほうがトクなのか。日頃から金銭的にさほど余裕のないNくんはハムレットのように苦悩したのだった。
フロントガラスを交換すると
10万円程度はかかる
Nくんが受けたような高速道路上での飛び石によるフロントガラスの被害、けっこう多いみたいです。
ところが、この事故、加害者は不在扱いとなるのが普通です。「きっと、あのトラックが弾いたんだ」と思い当たったとしても、たしかな証拠がない限り、相手を特定して責任を負わせることができないからです(証拠をとること自体、ほとんど不可能とされています)。自分は悪くないのにフロントガラスにヒビが入り、それを自分の責任で修理しなければならない、そんな泣きっ面に蜂状態に陥るのが一般的です。残念ながら。
小さなヒビであれば、そのリペア費用は1箇所1~2万円程度で済むようです。しかし、そのヒビがその後の走行ショックや天候の変化などで拡大してしまう恐れがあるため、万全の安全対策ということを考えれば、新しいフロントガラスに交換したほうがいいともいわれています。そして、その費用は、車種によって異なりますが、5~10万円程度となっており、それなりに痛い出費につながります。
保険料が安くなる免責。
しかし、イザというときには自腹が発生
幸い、こうした事故でも車両保険の補償はでます。
ただ、保険に免責をつけていたら、その金額分だけは自己負担となるので、注意が必要です。
多くの人は、契約時に保険料が安くなるという理由で免責をつけます(一番多いのが5万円の免責です)。
ですが、その後、ほとんどの人はその内容をすっかり忘れてしまい、事故を起こして保険を使うとなったときにはじめて、「えっ、自己負担が発生するの?」と驚くことになります。
そう、車両保険に5万円の免責をつけていたとしたら、修理代が5万円以下の場合は保険の補償はでず、全額自己負担となります。そして、修理代が10万円だとすると、5万円は保険で補償されるものの、残りの5万円については自己負担となります。Nくんのケースは、まさに後者ということです。
問題はこれだけではありません。Nくんがネットの保険会社からいわれたように、この事故で保険を使ったとすると、翌年の保険の等級が下がって保険料がアップするとともに、割引率がダウンすることになります。アップ、ダウンと頭がこんがらがりますが、つまりは、総合的にずいぶんと保険料が高くなってしまうのです。しかも、それが3年つづきます。
こうなると、フロントガラスの交換のための10万円を、どういう風にして支払うべきか、深く悩むことになります。目先のお金の算段と、この先3年間のお金の算段とが、ごちゃごちゃと頭を駆け巡り、なかなかいい答が見つかりません。持ち金が少ないらしいNくんが、「生か死か、それが問題だ」と悩んだハムレットのような心境になったのも、よくわかります。
購入や整備をするお店で
保険も契約するのが一番安心
もし、Nくんが修理を依頼したディーラーで保険を契約していたら、ちゃんと計算して、どっちがトクになるか、適切なアドバイスをくれたことでしょう。しかし、Nくんの場合は、それが別々。それぞれに相談したところで、納得できる回答は得られなかったにちがいありません。たぶんNくん、考えあぐねて、結局はソンになる道を選んだような気がするのですが……。だとしたら残念至極です。
これは、あるロータス店での話ですが、クルマを買ったときに保険も同時に契約されたお客さまがNくんと同じ事故に遭われたときに、こんな提案をしたことがあるそうです。
「フロントガラスの交換代、いろいろと計算すると、お客さまの場合は保険を使わないほうが絶対におトク。自費で修理することをオススメします。いま、あまりお金がないということでしたら、どうでしょう、とりあえず安く済むリペアだけしておいて、お金ができた段階でフロントガラスを交換するというのは。ウチのリペア、それなりにもちますよ」
クルマを買ったところ、整備・車検をするところで、保険も契約しておく。やっぱりこれが一番安心です。
関連キーワード
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
【今回のやっちゃったストーリー】地方に在住している共働きのMさん夫婦(夫26歳・妻23歳)は、いつか子どもを数人もち、みんなでマイホームで暮らすことを夢見てい…
2017.03.27更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
車両保険は車両だけの保険じゃないさて、ここからはTさんの勘違い事例についての解説です。Tさんは、キャンピングカー仕様に改造する前のワゴン車に、購入価格の30…
2020.06.23更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
マイカーリースに関連して、ここでは「リースカー向け自動車保険」の内容について解説します。通常、マイカーリースの基本契約には自動的に自賠責保険が付いていますが、…
2021.06.24更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
【今回のやっちゃったストーリー】ある金曜日の夕刻、Oさん(40歳・主婦)はクルマで10㎞ほど先にあるショッピングモールに向かった。その日は、全館セールの最終日…
2017.06.15更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
豪雪となったときはどんなタイヤでも立ち往生!?豪雪による交通トラブルを避けるにはどうすればいいのか、Iさんのケースを元にして考察してみましょう。まずタイヤ…
2019.01.29更新
クルマのトラブル「もしも」マニュアル
前編に掲載したKさんの事例を、もう一度振り返っておきましょう。Kさんは、独立心を養わせるためにパラサイト・シングルの息子(30歳)を別居させました。同時に、息…
2021.11.25更新