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EVキーマンに聞く/日本EVクラブ代表 舘内端 ②「中国から軽タイプのEVが入ってくる可能性はありますね」

2018年11月17日更新

舘内さんTOP②web

日本はEV先進国?
それともEV開発途上国!?

― 2009年に三菱自動車は世界で初めての量産型EVであるアイ・ミーブを発売しました。また、2010年に日産が出したリーフは累計販売台数が世界一多いEVとなっています。これらのことを受け、一部では、日本はEV先進国であるとの声がありますが、これについてはどうお考えでしょうか?

舘内 いやいや、日本がEV先進国だなんて大いなる間違いです。たしかにアイ・ミーブとリーフは世界に先駆けて本格的に発売されたEVであって、それなりの意義と実績はあります。でも、現時点で日本の主要な自動車メーカーが出しているピュアEVって基本的にその2車種だけ。先進国というには少なすぎですよ。
そもそも現在の日本のピュアEV普及率は1.0%ととても低いんですけど、その原因の一つとしては、選択肢が限られているからユーザーが手を出しにくいということが挙げられます。欧米や中国では、けっこうな種類のEVがでてきており、それにともなって普及率も高まっている。ノルウェーなんて3台に1台がピュアEVなんですよ。そういう国と比べたら、日本はEV先進国というより、むしろEV開発途上国といった方がいいんじゃないでしょうか。

― EV開発途上国ですか……。

舘内 たとえばヨーロッパでは、主要な自動車メーカーがこぞってEVを販売、もしくは販売間近の状態にしています。フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ダイムラー、BMW、ルノー、プジョー、VOLVOなどに加え、あの「EVはつくらず、エンジン車でいく」っていっていたジャガーまでもがI-PACEというEVを発表し、すでに予約を始めている。もう、EV化が怒濤の勢いで進んでいるんですよ。
数でいうなら、中国なんてもっとすごい。自国のEVメーカーを育てるという国策もあり、「これは?」と首を傾げるものまで含めれば数十ものEVメーカーが勃興し、現在は競合・淘汰へと進展しています。しかも、一部のメーカーのEVはクオリティもかなり上がってきており、その点においても端倪すべからざる状態になってきているといえます。

自動車大国ゆえのEV敬遠ムード

― 日本のEV普及率が低い原因としては、車種の少なさ以外では、どのようなことが考えられるでしょう?

舘内 一つは、三菱や日産以外の自動車メーカーが、エンジン車やハイブリッド車の存続に強くこだわり過ぎた結果ということがいえますね。
自動車大国である日本には、エンジンを搭載したクルマづくりのためのピラミッド型の産業構造ががっちりとできあがっています。これは国にとっても自動車メーカーにとっても非常に重要なものとなっていて、自動車業界にどんな変化が起ころうとも、まずはしっかりと守っていくことが最優先される傾向があります。それ故、業界側に、つい最近まで“エンジン車をなきものとする”EVを敬遠するムードが色濃く漂っていました。
それを受けて多くのメディアやジャーナリストも、「EVは航続距離が短くて、充電インフラが整っていないから使い物にならない」といったようなネガティブな論調の報道をするようになりました。
もうね、こうなると、ユーザーはおいそれとEVに手がだせないわけですよ。
日本でこれまでEVの普及率がなかなか伸びなかったのは、だから、こうしたことが相当に大きく影響しているだろうなと僕は思っているんです。
ただ、いまはEVの航続距離も、充電インフラの数も文句がつけようのないレベルに近づいてきている。そして、世界のライバルメーカーたちがどんどんとEV化を進めている。こうした動かしようのない事実を突きつけられて、ようやく日本の各メーカーもネガティブなことをいっている場合じゃないと気づいたみたいで、つぎつぎと前向きにEVの開発と販売に取り組みはじめている。あのエンジン車に固執していたマツダさえもが、2020年にEV(ピュアEVではなくてレンジエクステンダーEV)を発売すると発表しましたからね。
まあ、とてもいい傾向だとは思うんですけど、さて、どうなんでしょう。正直、ちょっと遅すぎる感は否めません。欧米そして中国の各メーカーとかと比べると3~5年は遅れている。ちゃんと追いつけるかどうかは、今後の各メーカーの奮闘努力に期待するしかありません。

廉価な軽EVが求められている

― 現状、EVは価格が比較的高めです。このことも普及率の低さに影響していませんか?

舘内 それもかなり影響していますね。なにしろ現在の日本のマーケットは代替需要が主なうえに、ちょっと値が張る登録車があまり売れない状態になっている。売れているのは、廉価な軽自動車ばかりです。そんな状況で、ガソリンエンジンの登録車より高いEVに食指が動かないのは、ある意味、当然といえるでしょう。
だから、車種を増やしていく中で、手ごろな価格の軽自動車タイプのEVラインナップも揃えていくべきなんですよ。そうすれば、EV普及率は大きく上がっていくに違いありません。
じゃあ、問題は、どのメーカーがそういった軽タイプのEVを出すかですが……。僕は、とりあえず先駆者である三菱&日産か、中国市場向けにEVをつくりはじめているホンダの可能性が高いと踏んでいるんですけど、もう一つ、中国メーカーで力のあるところが独自に軽タイプの廉価なEVをつくり、それを日本に輸出してくるということもあり得ると思います。
繰り返しになりますが、中国の一部のメーカーがつくるEVは侮れないレベルにまできています。もしそれが軽タイプとなって日本に入ってきたら、現段階で廉価な軽自動車を求めている人たちにすんなりと受け入れる可能性は十分にあり得ます。だから、この点においても、日本のメーカーはうかうかしてられないんです。

アイ・ミーブ

アイ・ミーブを超えた、“イマ”にフィットした軽EVを求めるユーザーは多いだろう



EV普及には“アメ”と“ムチ”が必要

― つい先日(2018年9月25日)、東京都がEV購入者に対し20万円の補助金を出すことを検討しているとの報道がありました。普及率を高める後押しになるかも知れないこうした行政側の施策に対しては、どのようなお考えをお持ちですか?

舘内 行政側も時代の流れを見て、それなりにいい施策を打ちはじめているとは思います。でもね、“アメ”すなわちEVへの補助金だけでは弱い。“ムチ”すなわちエンジン車、ディーゼル車への規制も同時にふるわなきゃ、望むべく効果は期待できないでしょうね。
たとえば中国なんて、EV購入者への補助金というアメもあるけれど、一方でエンジン車、ディーゼル車などの購入者はナンバーが取得しずらいというムチもふるっている。しかも、メーカー側には、EV、PHEV、FCEV(燃料電池車)の一定台数の販売を義務付けるNEV規制も発動することにしている。EV普及率を本気で高めようと考えるなら、やっぱりそれくらいハッキリしたことをやらなきゃダメですよ。それができていないのは、国をはじめとする行政サイドが、まだエンジン車、ディーゼル車、そしてハイブリッド車へのこだわりを引きずっている証拠です。そんなんじゃあ、いつまで経っても日本はEV先進国にはなれません。ぜひとも、より実のある施策の実施を期待したいところですね。

①「大好きなレースをつづけるために日本EVクラブをつくりました」

②「中国から軽タイプのEVが入ってくる可能性はありますね」

(EVキーマンに聞く/日本EVクラブ代表 舘内端 ③~④は12月に公開の予定です)

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