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JEVRAに聞いた「EVレースの楽しみ方」(中編)ウサギかカメか。市販EVは限界競争の中で進化してゆく!

2020年5月25日更新

画像提供:JEVRA(以下同様)



JEVRA(日本電気自動車レース協会:Japan Electric Vehicle Race Association)の事務局長を務めている富沢久哉氏。氏は、いつどういう理由で本格的なEVレースをはじめることを思い立ち、それをどんな流れで実現させたのだろうか?

三菱i-MiEVの登場に触発されて……

もともとレーサーだったという富沢氏は「レース好きな人間には、新しいパワートレインのクルマが出てくると、すぐにそれで競争したくなる習性のようなものがあるんですよ」と冗談めかして語るが、直接の契機は2009年に訪れている。

その年、三菱自動車から世界初の量産型EVであるi-MiEVが発売(法人対象)され、翌年には日産からリーフが発売されることが明らかになっていた。この事実を知った富沢氏は「そう遠くない将来、電気で回るモーターで動くEVの時代がやってくるに違いない」と確信し、「だったら、今のうちから本格的なレースを始めて、EV化の一翼を担うべきだ」と考え、すぐにその方向で動きだした。

そして、翌2010年3月にレース界の重鎮である館信秀氏(トムス代表)を理事長に迎えてJEVRA(日本電気自動車レース協会:Japan Electric Vehicle Race Association)を設立。その4ヵ月後の7月に協会主催の全日本電気自動車グランプリシリーズの第1戦を開催するに至ったのだった――。

驚異的ともいえるほどにスピーディな展開だ。普通、いくら強い思いを持ったからといって、これほど短期間でシリーズ制のレースをオーガナイズすることはできないだろう。

だが、富沢氏は例外だった。氏はレーサーを辞めた25歳のときに日本レーシングセンターの社員になり、以降約20年にわたって現在のスーパーフォーミュラ、スーパー耐久、スーパーGT、さらには岡山でのF1などのビッグレースの数々をプロモート&オーガナイズしてきたキャリアを持つ人。そんな氏にとっては、シリーズ制とはいえ規模の小さなレースのオーガナイズは短期間であってもそう難しいものではなかったのである。

難航しがちな資金集めも、幸い複数の企業や団体からの協賛が得られてクリアできた。特にブリヂストンや横浜ゴムをはじめとするタイヤメーカーからの協賛が得られたことは大きかった。

「初のシリーズ制EVレースで、しかも短期の立ち上げだというのに、われわれJEVRA役員のキャリアの信頼性とEVの将来性の両方が評価され、積極的に資金を提供いただけた。ありがたかったですね。正直いうと、当時からレースの上位入賞者に賞金が出せないほどにギリギリの運営ではあるのですが、お陰でなんとか続けられ、11年目を迎えることができました」



もちろん、何もかもが順調だったわけではない。当初、レースそのものにおいてはドタバタ劇もたくさんあった。

一番大きかったのは充電問題。今もほぼそうなのだが、レースを行う各サーキットに、EVに充電するための設備がまったく整っていなかった。ピット内にあるのは100Vの電源のみで、参戦車両は時間をかけてチマチマと充電せざるを得なかった。そのため予選の後の決勝では十分に充電ができないまま出走する車両が多くなり、電欠でストップするシーンが続出した。

「いわばガソリンをほとんど入れていないエンジン車でレースをやるような状態。アタマを抱えました(苦笑)。でも、2年目の途中から、協賛の充電器メーカーさんの協力を得て移動式の急速充電器も揃えたりしたので、予選と決勝の間で十分な充電が可能になった。充電不足による電欠は起こらなくなり、まっとうなカタチでレースができるようになっています」



レースでヒートアップする冷却競争

さて、ここからは全日本電気自動車グランプリシリーズをはじめとするEVレースの楽しみ方に関する話なのだが……。その前にJEVRAが設立当初から掲げている活動目標について解説しておきたい。EVレースの楽しみ方に、それは深く関与するからだ。

JEVRAは、レース活動を通じて「地球環境問題に対する意識改革の推進」と「EVの進化・普及促進」を目指している。

一つ目の「地球環境問題に対する意識改革の推進」については言わずもがな。JEVRAは、走行中にCO₂の排出がないEVレースの人気の高まりと普及によって、気候変動を食い止める効果がでることを期待している。最初の頃は大義名分の側面はあったが、自然災害が頻発するようになった今ではかなり切実な目標となっている。

一方の「EVの進化・普及促進」という目標は、ちょっと難しい。よく言われる「限界走行するレースは、よりよい市販車を開発するための実験場」という言葉を踏まえたものであることはわかるにしても、具体的に、EVのどういった進化を指しているのかがよくわからない。誰でもすぐに思いつく航続距離を伸ばすためのバッテリーの進化は、レースではなくても追求できるテーマとなり得るわけだし……。

富沢氏の助けを借りるとしよう。

氏は、(前編の終わりでも少し触れているが)今のところのレースにおいて最も顕著に現れているEVの課題は「バッテリー、モーター、インバーターといった駆動系の熱をいかに効果的に冷却するか」であり、その進化が必要不可欠なのだと語る。

「実は市販EVは、バッテリー、モーター、インバーターといった駆動系が一定以上の熱を持つと、それら機器(主にバッテリー)を劣化させないために、駆動をスローダウンさせる制御が効くようになっています」

「街中や高速道路で普通に走る程度であれば、そうした制御がかかることはありません。しかし、アクセル全開で走行するレースの場では、例えば1周3㎞ぐらいのコースを5周ほども走っただけでその制御がかかってしまう。いわば『50年前のエンジン車レースにおけるオーバーヒートと同じような現象』が起きてスローダウンし、ずるずると順位を落としてしまうんです」

「もちろん各メーカーは、レース用のEVではないにしても、なるべくそうしたことが起こらないよう、それぞれ独自に冷却する方法を導入しています。でも、まだまだなのが実情。安心かつ快適なドライビングのために、よりよい進化が望まれます」

富沢氏によると、今のところ、この課題をもっともうまく解決している印象があるのは日産のリーフe+なのだという。リーフは2010年に初代が発売されて以降、多くのユーザーに使われる中で代を重ねてきた。そして、全日本電気自動車グランプリシリーズにも毎回のごとく出場し、数々の辛酸を舐めたりもした。おそらくは、そうした経験をも踏み台として、冷却効果の進化を果たしたに違いない。

「バッテリー容量とモーター出力の大きいテスラモデルSとかが圧倒的なスピードで先行したとしても、ときどきリーフe+が逆転勝ちするのはその何よりの証拠。ドライバーのアタマを使ったドライビングの効果も多分にありますが、たぶん相当に冷却を上手にやっているんじゃないかと私は見ています」

ちなみに、富沢氏は、過去のレースを振り返って「初期から中期ごろまでよく参戦していたi-MiEVは、初めから冷却が比較的うまくいっていたEVでした」と語っている。

「i-MiEVは、バッテリー容量もモーター出力も小さいEVだったので、さほどスピードは出ず、上位に食い込むことは少なかった。だけど、いつもスローダウンせずに完走していたし、ときにレースの後半では、周回遅れながらもあのテスラ車をストレートでオーバーテイクするシーンまで見せてくれた。これこそは冷却効果の賜。いやあ、あのカメがウサギを追い抜くような下克上の走り、観ていてなんとも爽快でしたね(笑)」

世界に先駆けてはじまった全日本電気自動車グランプリシリーズ!

ウサギかカメか。市販EVは限界競争の中で進化してゆく!

パワーだけでは語れない奥深いレースの魅力を感じとってほしい!

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