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Book Review③ ZEV規制前にお勉強『トコトンやさしい電気自動車の本』(後編)

2017年4月28日更新

TOP写真_電気自動車の本_web

トコトンむずかしいが
第1章はわかりやすい

さて、ようやく書評である。
この『トコトンやさしい電気自動車の本』は、いわゆるロングセラー本である。2009年に初版がでて、2016年には最新情報を加筆して形で第2版がだされている。タイトル含め、一見、すごくわかりやすくて人気がある一冊という風情を醸しだしている。
ところが、読み進めるうちに、その見立てが大きくちがうことがわかってくる。トコトンやさしいなんて偽りで、トコトンむずかしい本となっているのだ。
たとえばこの一文、わかるだろうか?

〈モーターが止まっている状態で電源をオンすると電圧Vを巻線の抵抗Raで割った大きな電流Iaが流れます。トルクは電流Iaに比例するので始動トルクは大きく、電車や電気自動車に向いています〉

語調はやさしいけど、記述が専門的に過ぎる。
この本の7割方は、こんな調子の記述で占められている。エンジニアのヒトとかには、やさしいのかもしれないが、工学系に疎い人間にとっては、ほとんどがちんぷんかんぷんだ。せっかくZEV規制の前に電気自動車の基礎を学ぼうと思ったところが、出足を挫かれた感しきりとなってしまう。これは著者が悪いのではなく、本を編んだ編集部の責任なのだが、まあ、どうにも持て余し気味となる一冊なのである。

ただ、まったく役に立たないかというと、じつはそうでもない。なかにはちゃんと理解できて、「へえ」と思わせる記述がところどころにある。しかも、それらは科学的にしっかりした裏付けがあるため、どんな本の情報よりも一読の価値が高かったりもする。とくに第1章「電気自動車の性能はここまで進化した」にはそうした記述は多い。強引ないい方になるかもしれないが、工学系に疎い読者は、この最初の章を読むだけで、いい勉強になるかもしれない。

EVが主流になるワケが
科学的に見えてくる

第1章「電気自動車の性能はここまで進化した」では、冒頭で電気自動車がいかに環境にいいクルマかが説明されていて、以下、電気自動車の歴史、電気自動車の基本的な仕組みといった具合に比較的ライトな話がコンパクトに展開されている。
それは、たとえばどんな感じなのか? とくにわかりやすく、役に立つと思われる記述の一部を併記されているグラフとともに紹介しよう。
〈ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを使った自動車やこれらを電動モーターと組み合わせたハイブリッド車(HV)では、燃料のほとんどが原油由来なので採掘から給油所までのWell-to-Tankのエネルギー効率がほぼ同一で、走行パターンさえ決めればCO2排出量がすぐに比較できます。
▼しかし、長期戦略を考えるときは、太陽光や風力、波力などの再生可能エネルギーを前提に論じて良いと思います。
▼エコカーを、いくつかの前提条件で総合的に比較した検討事例を、図2に示します。再生可能エネルギーの時代のエコカーの主役は、電気自動車であると言えるでしょう〉

CO2排出量の比較_web

※『トコトンやさしい電気自動車の本』のP13に掲載されているグラフを参考にして作成



この記述は、ある意味、前編で紹介したZEV規制によって電気自動車がエコカーの主流になりつつあるワケの一端を科学的に証明してくれているものとなっている。とくに筆者が既存のデータを元に作成したというグラフは深い納得を誘う。こういうところはさすが専門家という印象だ。うん、いい勉強になる。読んでおいて見ておいて損はない。

なお、筆者は最後第7章で電気自動車の将来像を独自に展望していて、そのなかで、電気自動車の満充電での航続距離の短いデメリットをどうすれば解消できるかを書いている。専門家らしい訥々とした文体でちょっと読みづらいところもあるが、内容自体は刺激的だ。
〈製品の属性を因数分解すれば「構造」と「機能」に分かれます。過去100年間、私たちはエンジンとトランスミッションによって「構造」と「機能」が制約されたクルマに慣れ親しんできました。
▼モーターだけで動く順電気自動車(EV)はエンジンを搭載したクルマと違いレイアウトと機能の設計自由度が飛躍的に高くなります。従来の延長線上にない、エンジン車に慣れた人から見たら変わったクルマが作れます。
▼EVの欠点は航続距離が短いことです。電池の開発は時間がかかります。仮に電池が進歩しても走行損失が小さいことは良いことです。EVは車体設計の自由度が高いので走行損失を半減できるでしょう〉

ほんとうにこの方向で進んでいけば、電気自動車はまちがいなくこれからのモータリゼーションの主役となることだろう。うん、うん、ほんとうに、いい勉強になる!

ちょっと本格的に電気自動車を勉強したいと思われる方は、大半がかなりむずかしい記述で埋まっていることを覚悟のうえで、読書にトライしてみてほしい。

 

 

 

 

書籍_電気自動車の本_web

『トコトンやさしい電気自動車の本 第2版』
・2016年8月25日発行
・著者:廣田幸嗣
・発行:日刊工業新聞社
・価格:1,500円+税

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