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EVキーマンに聞く/日本EVクラブ代表 舘内端 ④「街の整備工場はEVサービスの発信基地になるべきです」

2018年12月20日更新

舘内さんTOP④web

次世代車取扱いを目に見えるように

― EV時代の到来する中で、ロータスクラブも、2016年から「次世代車取扱認定店制度」を進めています。これは全国で1600社を超えるロータス加盟企業(自動車整備業)が、HVはもちろんEVやPHEVなどの点検・整備を高いレベルで行っていくための組織的な試みで、今年度中には1000社以上が認定店となる予定です。

舘内 昔ながらに地域に密着した誠実な商売をされていて、かつ技術力の高さを誇る整備工場さんたちが、そうやって最新のEVのケアもできる体制をつくってくれるというのは非常に素晴らしいことです。これからEVやPHEVに乗り替える人にとっては、とても心強い体制ということができますね。

― ありがとうございます。ただ、課題もあります……「ロータス店で、HV、EV、PHEVもOK!」というメッセージが 、まだ多くのお客さまに伝わりきっていないようにも思えます。

舘内 なるほど。でも、その答はカンタン。ずばり、目に見えるエビデンスがあればいいんですよ。一般のお客さんには、「次世代車取扱認定店」と言ってもなかなか伝わりません。それより、「EVを扱っている」 という具体的な証拠をしっかり見せてあげるほうが大事です。それさえできれば、一瞬にして「あの店はEVが得意 なんだ」と、ちゃんと認識してもらえるようになりますから。
たとえば、さっき話したような電気カートのレースに、自分たちでカートをつくって出場し、いい戦績を残したりするというのもその一つになるでしょう。レース後にそのカートを店頭に飾って、表彰状を壁に貼ったりしておけば、「へえ、この店はEVのレースに出て、いい成績残してるんだ」となって、お客さんと会話もでき、EVに対する信頼関係も生まれて、EVやPHEVの点検・整備・販売にも弾みがつくはずです。これは、メーカーが世界的なレースに出場して、いい成績を挙 げることによって販売を伸ばしているのとまったく同じ理屈です。

― なるほど、確かにわかりやすいですね。

舘内 また、週末などに、地域のファミリーを対象とするEVイベントをお店で開催するというのも手ですよね。実は、日本EVクラブは、全国各地で『親子電気レーシングカート教室』というイベントをたびたび開催しています 。これは、参加した子どもたちに、子ども用の電気カート(Kids ERK)を組み立ててもらい、パソコンを使ってモ ーターの最高出力のプログラミングなども行い、さらには会場の敷地内の駐車場などでそれを走らせる、という 内容です。
言葉でいうと、たったそれだけのことなんですけど、実際の会場では感動の嵐が吹き荒れるんですよ。子どもたちは、自分で組み立てたカートで走ることで、一発でEVの魅力にはまり「楽しい!」って叫びます。その様子やドライ ビングを見たお母さんは、「ウチの子が自分で未来のクルマをつくって、それを運転してる」って感動して泣いち ゃいます。それから、お父さんは、「ああ羨ましい。オレもやってみたい」って目を輝かせて震えます。とにかく もう、叫びやら涙やらで大変なことになっちゃうんですよ(笑)。

KidsERK組み立てwebKidsERK走りweb

だから、そういう感動のイベントをね、ロータス店さんが自社の敷地で開催すればいいんじゃないか、と思うわけです。
「EVを扱っている」というエビデンスになるのはもちろん、未来のお客さんを取り込める効果だってあります。もし、「ウチでもやりたい」っていうロータス店さんがいらっしゃるなら、もちろんわれわれはKids ERKを貸し出したり、組み立てや試乗のお手伝いなど協力いたします。

EVで地産地消のビジネスを

― ところで、今後、EV化が進んでいくと、自動車整備工場は大きく業態転換を迫られるだろうといわれていま す。舘内さんは、次世代の自動車整備工場はどのように変化すべきとお考えですか?

舘内 PHEVなど、エンジンも搭載したクルマがあるうちは現状の延長線上かもしれませんが、マーケットがピュア EV主体になると、総体的に整備の仕事量が減っていくと考えられます。
ただ、そのときも相変わらずクルマは存在し、安全性を担保する点検や足まわりの整備などは必要でしょうから、 自動車整備工場へのニーズは存在すると思います。全国のロータス店の皆さんには、そのニーズを受け止めていただくためにも、ぜひがんばって生き残っていただかなくてはなりません。
問題は、生き残り策です。ありきたりないい方になりますが、やっぱり「時代に適合した、プラスαのビジネスを展開する」ことが重要だと思います。
たとえば、もし中国から廉価な軽タイプのEVが入ってくるとしたら、その販売と整備を担うというのも有効な選択肢だと思います。日本の整備工場の優秀な技術があれば、中国側にとっては心強い要素となり、ウィンウィンのビジネスが展開できる可能性があります。これは、あくまでアイデアの一つですけどね…… 。
それとは別に、いま日本EVクラブがクラウドファンディングしながら開発を考えているE3(エレクトリック3ホイラー )という三輪EVなども、やりようによっては新たなビジネス展開になるんではないかと思います。

E3_図web

プロトタイプE3P(15年2月ナンバー取得)web

E3P(試走)web

― 三輪EVですか?

舘内 三輪とはいっても、前が二輪で後ろが一輪のリバース三輪EVです。ある程度の技術があればカンタンに組み立てられる設計にしてあるので、キット形式の商品にして販売することを考えているんです。
これ、小さいですがしっかり走るし、扱いやすく、三輪なので安定していて、利便性もかなり高いです。
モーター出力は125cc相当で、時速80キロ出て、航続距離は50~60キロに及びます。充電も4時間で、空から満充電にできます。しかも、側車付軽二輪(サイドカー)の扱いにしているから、1人乗りから5人乗りぐらいまで仕様を自由に変えられたりするし、リアカーをひかせたりもできる。リヤカーに太陽光パネルを搭載すれば長距離がこなせる簡易キャンピングカーにもなります。もちろん、価格は普通のEVと比べるとかなりリーズナブル。とにかく、誰でもかなり気軽かつ自由に乗れるEVです。
たとえば山間部なら、地元のおじいちゃんやおばあちゃんの日常の足としてニーズがあるかも知れません。観光地なら、観光客にレンタルするビジネスを展開するのもよいでしょうし、都市部なら、これでカーシェア事業を始めてもおもしろいでしょう。

E3_郵便_2web

― 地域の特色を活かしたビジネスを自動車整備業として考えるならば、E3のような手軽なEVの可能性に着目すべきであるということですね。

舘内 そう、EVは機構がシンプルだから整備する部品は減るわけですが、逆にこれまでのメーカーのクルマを中心とした固定のビジネスだけではなくて、「地産地消」のスタイルで、地域ごとに独自のビジネスを自由に展開できる可能性が大きくなるんですよ。実際にE3を組み立てて、使ってもらえば、もっと具体的なアイデアが浮かぶと思います。
自動車整備業は、クルマを製造しているわけではなく、クルマの点検・整備・販売を行っているので、もともとサービス業の色合いが濃いといえます。これからのEV化、自動運転化、コネクテッド化の時代においては、メーカーさえもが業態転換してサービス業を目指すといっていますが、その点では自動車整備業が先駆けているところがたくさんあるといえます。
全国のロータス店さんには、そうした強みを活かしてEVサービスの発信基地になり、ぜひこの100年に一度の変革期を意気軒昂に乗り切っていってもらいたいですね。

― 今回は新しいビジネスのアイデアを含め、幅広いお話の中でさまざまな気付きをいただきました。ありがとうございました。(文:みらいのくるま取材班)

①「大好きなレースをつづけるために日本EVクラブをつくりました」

②「中国から軽タイプのEVが入ってくる可能性はありますね」

③「もうすぐF1はフォーミュラーEに取って代わられるでしょう」

④「街の整備工場はEVサービスの発信基地になるべきです」

舘内さんプロフィールweb

舘内端(たて・うちただし)
1947年群馬県生まれ。日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務後、レーシングカーの設計に携わるとともに、テクノロジーと文化の両面からクルマを論じることができる自動車評論家として活躍。94年には市民団体の日本EVクラブを設立(2015年に一般社団法人化)し、以降、さまざまなイベントをとおしてEVをはじめとしたエコカーの普及を図っている。『ついにやってきた!電気自動車時代』(学研新書)など著書多数。EV時代を迎えて、TV出演、新聞インタビューなど多忙な日々を送っている。

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