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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2022年4月21日更新
自動車産業は世界的にEV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)へのシフトが進んでいる。しかし、EV化=クルマの脱炭素化などと単純に言い切れないという論もここにきて認識されだしている。この問題を考える上で重要なライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイールという考え方について学んでみよう。
ライフ・サイクル・アセスメントってなんのこと?
ライフ・サイクル・アセスメント(Life Cycle Assessment)とは、商品やサービスの原料調達から生産、流通、消費、そして廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体(ゆりかごから墓場まで)の環境負荷を、定量的に評価する手法のこと。「LCA」とも呼ばれている。
企業が製品を生産し、流通する過程では環境への負荷が生じる。代表的なものとして挙げられるのが、CO2(二酸化炭素)の排出だろう。CO2は、生産時や輸送時に限らず、消費するときや廃棄処理をするときにも排出される。
A社とB社が同じ製品を販売する事例で考えてみよう。生産時だけで見ると、A社の製品のほうがCO2を多く排出するが、ライフサイクル全体を通して見るとB社の製品のほうが排出量が多いことがある。つまり、環境負荷を正確に把握する上では、ライフサイクル全体に目を向ける必要があるのだ。
ライフ・サイクル・アセスメントの歴史は、アメリカのコカ・コーラ社による飲料容器に関する環境影響評価の研究から始まったとされている。同社は1969年に、リターナブルびんと使い捨てボトルの比較を行った。
その後、ライフ・サイクル・アセスメントへの関心が高まるにつれて研究が進み、評価の手法も確立されてきた。ISO(国際標準化機構)は、1997年に環境マネジメントの国際規格である「ISO14001シリーズ」を発行している。
走行時以外のCO2排出量に目を向ける
自動車が環境に与える影響については、走行時のCO2排出量に限定して語られがちだが、それは環境負荷の一部にすぎない。自動車のライフサイクル全体を見ると、鉄鉱石を採掘して輸送するところから、車輌製造時、エネルギー製造、走行時、そして廃棄するまでの一連の流れを通じてCO2を排出している。そういったすべての段階のCO2排出量を見て評価することが重要だ。
特に、ガソリン車とEV(電気自動車)では走行時以外に製造工程や発電方法などによってCO2排出量に違いが生じる。ライフ・サイクル・アセスメントの評価を正確に行った上で、より環境負荷が少ない方向にシフトしていくことが期待されている。
欧州連合(EU)では、すでに欧州議会がLCA規制の法制化を検討しており、LCAの評価基準が確立されつつある。EVなどに使われるバッテリーに関しては、2024年7月からLCA全体でCO2排出量を申告することを自動車メーカーに義務づけている。
自動車業界の対応に注目
今後、LCA規制が世界的に波及するのは間違いないだろう。
日本では2020年10月に2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を目指すと宣言した。これを受けて経済産業省が中心となり「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定された。
当然ながら自動車業界にもカーボンニュートラル実現に向けた改革が求められている。自動車業界はこれまでも燃費性能向上などを通じてCO2削減に取り組んできたが、ライフ・サイクル・アセスメントの観点からも環境負荷の低減を進めることが要請されているのだ。
昨今は、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Government)を判断材料にして投資するESG投資の動きも加速している。気候変動問題への対応は企業が生き残るための手段であると同時に、成長へのチャンスと捉える見方も強まってきた。これからは自動車業界によるライフ・サイクル・アセスメントへの対応にますます注目が集まりそうだ。
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ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(前編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(中編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(後編)
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