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2022年4月21日更新
このテーマの最後となる今回は、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)とウェル・トゥ・ホイール(WtW)をめぐる自動車メーカーの対応について見ていくことにしよう。
欧米の自動車メーカーの対応
まずは欧州から。EUは2030年までにCO2の排出量を1990年と比較して55%削減し、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げている。この目標の達成に向けて、2021年7月、EUの欧州委員会は2035年に販売できる新車を走行時に温室効果ガスを排出しない車に限定する方針を発表した。これは、ハイブリッド車を含め、ガソリン車やディーゼル車などの新車販売が事実上禁止となることを意味する。また、LCAの観点から、FCVは水素を圧縮する高圧タンクの製造コストが高いことを踏まえ、EVをメインとした電動化を目指している。
さらにEUは「炭素国境調整措置」導入に向けても歩みを進めている。これは脱炭素の規制が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課す制度である。
欧州委員会の目標に対して自動車業界は反発している。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は2021年の会見で「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と述べている。
一方で、メーカーがガソリン車禁止への対応を進めているのも事実である。例えばドイツのフォルクスワーゲンは洋上風力発電に参入したほか、バッテリー製造時のCO2排出量を大幅に下げる構想を明らかにしている。
アメリカに視線を転ずると、バイデン大統領は2030年の新車販売に占めるEV、PHV、FCVの割合を50%に引き上げる方針を表明している。欧州とは異なりPHV、FCVも許容する脱炭素化を目指す構えであり、ゼネラルモーターズやフォードなどのメーカーや全米自動車労働者組合も支持している。なお、カリフォルニア州は2035年までにすべての新車をゼロエミッション車にする規制を打ち出しており、アメリカの自動車の電動化も加速することが見込まれる。
日本の自動車メーカーの対応は?
さて、日本の自動車メーカーはどのように対応しているのか。
トヨタ、ホンダ、日産などの各メーカーは、主要部品メーカーとLCAの観点からCO2排出量削減を目指す方針を共有し、製造工程の見直しを進めている。
トヨタ自動車は、国内外の全工場においてカーボンニュートラル実現を従来の2050年から2035年に前倒しする目標を掲げている。また、2021末に開いた説明会において、2030年のEVの世界販売台数目標を350万台へと大きく引き上げた。年間販売台数の3分の1にあたる規模であり、大胆な目標を示したことになる。さらに、2030年までにEV開発に4兆円を投じ、EVに注力する姿勢を明らかにしている。
ただ、日本から輸出する自動車や部品の脱炭素化を目指すにあたっては、日本の火力発電に大きく依存する電源構成の見直しも不可欠である。トヨタ自動車の豊田章男社長も、国のエネルギー政策にメスを入れない限り、自動車業界のビジネスモデルが崩壊しかねないと危機感をあらわにしている。
これからの自動車産業をどう見るか
最後にまとめとして、今後の自動車産業を見るにあたっての視点を考えてみる。
欧米各国がEVへのシフトを鮮明にしている中、日本自動車工業会は「日本の産業体系に見合った形でカーボンニュートラルを実現するべき」との提言を行っている。政府も2035年までに乗用車の新車100%電動化という目標を掲げているが、電動化にはHVとPHVも含まれている。つまり、完全EV化には懐疑的なスタンスを取っているのである。
これを脱炭素の「多様な選択肢」としてポジティブに評価する向きもあれば、日本の自動車産業の「ガラパゴス化」として悲観的な見方をする向きもある。いずれにせよ、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)とウェル・トゥ・ホイール(WtW)という2つの指標をによるCO2削減が不可避であるのは間違いない。
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ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(前編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(中編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(後編)
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