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次世代エコカー勉強会〈18時限目〉ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(中編)

2022年4月21日更新

次世代エコカー勉強会18時限目

自動車のエネルギー効率を測るにあたっては、ウェル・トゥ・ホイールという指標がある。今回はこの指標について見ていこう。

EVもCO2を排出している?

自動車のCO2排出をめぐっては、タンク・トゥ・ホイール(Tank to Wheel[TtW])とウェル・トゥ・ホイール(Well to Wheel[WtW])という2つの指標がよく取り上げられる。タンク・トゥ・ホイールは自動車の燃料タンクから実際に走行させるまでを指す。要するに、燃料タンクに燃料が入っている
状態から走行するときのCO2排出量に着目した指標である。

タンク・トゥ・ホイールの視点で見れば、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)は、走行時のCO2排出がゼロである(ゼロエミッション車と呼ばれる)。クリーンなイメージがあり、カーボンニュートラル実現に向けた最適解であるかのように語られている。だが、果たしてこの視点だけでCO2排出を評価してよいのだろうか。

そこで注目したいのがウェル・トゥ・ホイールである。ウェル・トゥ・ホイールは油田(Well)から実際に走行させるまでのこと。つまり、自動車の燃料を手に入れる段階から実際に走行させる段階までのCO2排出量を表す指標であり、自動車の環境負荷を考えるときのキーワードともなっている。

ウェル・トゥ・ホイールの指標で見れば、EVやFCVもCO2を排出していることになる。燃費効率の良いガソリン車やHV(ハイブリッド車)と比較して同等レベル、場合によっては排出量が多いとする見解もあるのだ。

3つの指標が評価する領域

EVが抱える問題点

ウェル・トゥ・ホイールの視点から、EVが抱える問題点を検証していくことにしよう。

まず、EVのCO2排出量は電源構成によって大きく違ってくる。例えば、電源としてクリーンエネルギー(再生可能エネルギー)が使われる割合の高い欧米各国では、ウェル・トゥ・ホイールで評価してもEVが環境に優しいクルマと言うことができる。しかし、日本や中国などのアジア諸国を中心に、世界的にはまだ化石燃料による発電が主流となっている現状がある。発電時に発生する膨大なCO2によって、EVがもたらす環境負荷は大きくなる。

もっとも、すでに中国ではクリーンエネルギーによる発電が増加している。2021年11月末時点で総発電設備容量の約26%を占めている。さらに、石油消費を2030年にピークアウトする目標を設定し、発電電力量に占める自然エネルギーの比率を2030年に40%以上にまで引き上げることを目指している。

これに対して日本では東日本大震災以降、電源構成における化石燃料への依存度が高くなった。2020年の火力発電の電力量は74.9%(そのうち石炭27.6%、LNG35.4%)。減少傾向にはあるが、まだ高い水準にあるといえよう。EVのウェル・トゥ・ホイールのCO2を減らす上では、現在20.8%の自然エネルギーによる電力量をどこまで増やせるかが課題となる。

日本の電源構造

製造時もCO2を排出

さらに、製造過程の課題にも目を向ける必要がある。特にCO2の多くはバッテリー(リチウムイオン電池)製造時に発生している。実は車体製造時のCO2排出量はICE(内燃機関)車の2倍に上るとの試算もある。

製造時に排出するCO2を相殺するには、EVを約7万7000km走行させる必要があるとも推定されている。乗り方や用途によっては、EVのほうがかえって環境負荷を高めることになりかねない。

また、バッテリーを分解したあと、廃棄するプロセスでのCO2排出も無視することはできない。リチウムイオンバッテリーの製造プロセス見直しやリサイクルなど、CO2排出低減に向けた動きもはじまっており、今後の進化に大きな期待が寄せられている。

次世代エコカー勉強会〈18時限目〉
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(前編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(中編)
ライフ・サイクル・アセスメントとウェル・トゥ・ホイール(後編)

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