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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年4月28日更新
「インホイールモーターのEVは、どんな走りをするんだろう?」
「指先でのアクセル操作って、難しんじゃないだろうのか?」
われわれは、2021年の初めに開かれたオートモーティブワールドの会場で、軽自動車規格のEVであるFOMM ONE(フォム・ワン)の魅力を知った。しかし、実際に運転することことはできなかったため、いろいろと気になることも多く、それが解決できないもどかしさを覚えていた。
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軽EV『FOMM ONE』の可能性(第13回オートモーティブワールドより)
①すでにタイでは400台を販売、日本でも 法人向け販売開始!
②エアバッグはないがドライバーを守る工夫がいっぱい!
③インホイールモーターや交換式バッテリ ーなどを搭載!
そんな中、春風吹く3月の下旬、FOMM ONEの生産・販売を行っているFOMM社からこんなうれしいニュースが届く。
「新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言で延期になっていた、さいたま市の『シェア型マルチモビリティ等の実証実験』がスタートすることになり、その事始めとして、FOMM ONEをメインとした一般向けの試乗会が3月26日・27日にさいたま新都心バスターミナルで催されます」
開催まであと数日。われわれは急いで取材申し込みを行い、27日に押っ取り刀で現場へと赴いたのであった――。
このレポートの前編ではFOMM ONEに実際に乗った感想を綴り、後編ではさいたま市の「シェア型マルチモビリティ等の実証実験」について紹介する。
簡素ながらもちゃんとした内装
コンパクトなのに4人乗り仕様
試乗会の会場であるさいたま新都心バスターミナルには、FOMM ONEが10台待機していた。
同じ車種のEVがずらりと並ぶシーンはなかなかのもので、新都心の近未来的な相貌と相まって、これからの電動化時代を象徴するシーンに見えた。
われわれは、一般の人たちの試乗の合間を縫い、取材の一環として試乗をさせてもらった(比較的余裕がある時間帯であったので、取材ということもあり、一般の方々よりも周回を重ねることが許された)。ただし、コースは試乗会で設定されたバスターミナルの外周をぐるりと回る周辺道路である。
乗り込む前に、陽光まぶしい屋外で改めて外観をチェックした。
エッジの効いたデザインがカッコよかった。樹脂製ボディに施された発色のいいカラーリングがキュートだった。コンパクトなわりに存在感はバツグンで、どんな軽自動車にも似ていないオリジナリティを感じた。
内装はどうか。
正直なところ、250万円前後という車両本体価格からすると「簡素過ぎる」というのが第一印象だった。だが、全体的な設いは「ちゃんとした感」に満ち、主に街中走行をするクルマとしては「これで必要十分だろうと」の感想をもった。
小さいながら4人乗り仕様になっている点は特長と映った。後部座席のスペースは背の高い大人が乗り込むとかなり窮屈ではあるのだが、例えばメインターゲットの一つになるであろう、若いファミリー層が子どもを乗せるには十分な広さといえる。
レバー1枚で最高50㎞/h
2枚なら最高80㎞/h出る
さて、実走である。
キーを回してスイッチオン。すると、小さな液晶メーターパネルに「go」のサインが浮かび上がった。なんてことはない演出だが、新しいEVが発するサインということで未来へと誘われているような気分になり、けっこうワクワクできた。
走りのモードを選ぶシフトレバーはない。フロントパネルに「D」「N」「R」の三つの小さなボタンが配置されていて、そのうちの「D」を指で押せば前へ走りだす仕組みとなっていた。
その「D」を押して、いざ発進となるわけだが……とまどったのはFOMM ONEの特徴の一つであるハンドルの内側にある左右2枚のアクセルレバーを指でどう操作すればいいかだった。
運転指導員として同乗してくれたFOMM社の社員の方に聞くと、「ハンドルの内側に付いているレバーを指で手前に軽く引くと走り出します。左右どちらかのレバー1枚だけを引けば最高時速50キロまで加速し、左右2枚を同時に引けば最高時速80キロまで加速します」とのことだった。
その言葉に従い、まず足をブレーキから離し、とりあえず右側のレバーだけを軽く手前に引いてみた。ブレーキを離した瞬間にクリープ現象のようなゆるゆるとした動き出しがあり、そこにレバー操作を加えるとスッとEVらしい気持ちのいい前進がはじまった。
「おお、動いた!」
指によるアクセル操作でクルマを走らせるという初体験に感動し、思わず声が出てしまった。
インホイールモーターでバネ下重に
それゆえ安心感のある走りができる!?
ただし、その走行感は予想とはずいぶん違っていた。
試乗前は「FOMM ONEは前輪駆動で軽量。きっとフワッとした軽い走りをするんだろう」と想像していた。ところが実際はまったくそうではなく、二つの前輪が路面にしっかりと食いついて車体をぐいっと引っ張っていくような、そんな力強い走行感があったのだ。
重いといえば重い。だが、それは「安心感をともなう頼もしい走り」であり、好印象を抱かせた。
これは後から聞いた話だが、その独自の走行感は、前輪に組み込まれたインホイールモーターによるダイレクトな前輪駆動に加えて、車輪にモーターが入ってる分、バネ下が重くなっていることが少なからず影響しているのだという。
一般的に、クルマのバネ下は長距離走行や高速走行における乗り心地を重視するのであれば、なるべく軽くした方がいいと言われている。しかし、FOMM ONEのような街乗り中心のクルマの場合はその限りではなく、バネ下重の前輪による力強い走りは車格以上の安心感を生み出しているように感じられた。
意外に早くマスターできる
手元アクセルと足元ブレーキの操作
初めて乗ったFOMM ONEは、リニアな走行感で応えてくれた。アクセルレバーを2枚同時に引けば、力強い足取りのままストレスなくスピードがスーッと上がっていく爽快さがあった。最高速度は80㎞/hの設定ながらも、街乗りであれば十分と思われた。
問題は、事前に予測していたとおり、手元にあるアクセルと足元のブレーキの操作バランスをどう取るかだった。とくにコーナーを曲がる際に、とまどいが生じた。
普通、コーナーでは進入前にブレーキを踏んで減速し、そこから少しアクセルを踏みながら曲がっていく。ところが、ブレーキとアクセルが足元と手元に離れているため、こうした一連の動作がうまく連係させられないのだ。
さらに言えば、このFOMM ONE、日産ノートのアクセルペダルほどではないにしても、インホイールモーターの回生ブレーキがかなり効くため、それも混乱に拍車をかけた。指をアクセルから離すと途端に減速し出し、止まる寸前にまでなる。コーナー手前でブレーキを踏み過ぎると、曲がる途中でストップしてしまうことも起こり得たのである。
1周目の途中、長年にわたってクルマを運転してきた自信は風前の灯火となりつつあった。
だが、自信をなくすのはちょっと早すぎたようだ。
操作に関する混乱は1周目だけでほぼ消え去ったからだ。2周目からだんだんと操作のコツが掴めてきて、難なくコーナーを曲がれるようになり、「ああ、指でのアクセル操作、けっこう楽ちんかも」と余裕の感想を漏らすまでとなっていた。
操作手順は珍しいとはいえ、ごくごくシンプルだ。一度手順を頭とカラダに覚えさせれば、日頃運転する時間が少ない人でも運転はそう難しくないだろう。
ちなみに、試乗前、指を手前に引くスタイルのアクセルワークは時間とともに手の疲れを呼ぶのではないかとの懸念があったが、これも杞憂だった。
左右ともにアクセルレバーを引くのに大した力はいらず、かつ深く引く必要もないので、まったくといっていいほど疲れなかった。ある意味、ゲームのコントローラーを操作しているかのような、そういうライトで楽しい操作感さえ感じられた。
結局、これまでにない操作で、今までにない走りをするFOMM ONEは、想像以上に安心で楽ちんな一台だった。別の言い方をすれば、思っていた以上に面白味のある一台だった。
この記事を読んで興味をもたれた方は、ぜひ、さいたま市にある8ヵ所のシェリングサービスステーション(場所は後編で紹介するアプリをダウンロードすればわかる)まで足を運び、そこに実装されているFOMM ONEに乗ってみてほしい。きっと、クルマの世界観がグッと広がることだろう!(文:みらいのくるま取材班)
さいたま市で小型EV体験
(前編)前輪のインホイールモーターが「街中での頼もしい走り」をもたらしてくれる!
(後編)EVのシェアリングサービス開始で、街のスマートシティ化はどんどん加速してゆく!
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