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軽EV『FOMM ONE』の可能性(第13回オートモーティブワールドより)- ③インホイールモーターや交換式バッテリ ーなどを搭載!

2021年2月12日更新



実質航続距離を伸ばす
インホイールモーター

オートモーティブワールド会場での、FOMM社の広報担当者・佐藤俊氏へのインタビューはさらに続く。後半では、FOMM ONEの画期的な装備・性能についての解説と、今後の日本においての販売の展望を語ってもらった。

——FOMM ONEは街乗りEVということで最高速は80㎞/hと控えめですが、航続距離はNEDCという計測方法で166㎞と、バッテリー容量が小さいわりにけっこう長い数値を誇っています。ただ、日常的な使用での航続距離はこれよりは短くなると思うのですが、満充電で公道をドライブした場合、どれくらいの距離を走ることができるのでしょうか?

佐藤 スムーズな巡航運転を続けさえすれば、普通に160㎞以上は走ります。あるとき、社員が普通はやらない極めて効率的なドライビングを試みたところ180㎞を超えさえしました。

——計測値とあまり変わらないどころか、それ以上走る可能性まであるとはすごいですね。

佐藤 車体が軽いとか、いろいろな要因がありますが、一番の要因としてはフロントタイヤの内側に二つのインホイールモーターを搭載していることが挙げられます。何も介さずに直接タイヤを回すインホイールモーターには、アクセルワークとハンドリングへの反応がクイックにできる特性があるのはもちろん、回生ブレーキによる蓄電が無駄なく効率的に行えるという利点があります。だから、実質の航続距離が普通のモーターよりも伸びるんです。





——そうですか。しかし、インホイールモーターを採用している量産型EVは、今のところはほかに見当たりません。量産車に搭載するにはいくつもの壁があるのだと思いますが、どうして、FOMM ONEではそれが可能だったのでしょうか?

佐藤 ウチの社長である鶴巻はかつて一人乗りEVのコムスを開発した技術者だったんですが、あのコムスはインホイールモーターを採用していました。コムスはリアで、FOMM ONEはフロントにインホイールモーターを入れている違いはあるにせよ、そのときの経験とノウハウがあったからこそ開発と搭載に成功できたというわけです。

——なるほど!そういう流れになるわけですね。

佐藤 とにかく、さまざまなメリットをもたらすインホイールモーターの搭載はFOMM ONEの強みの一つ。これはお客さまに大いにアピールできるポイントだと思っています。まあ、モーターが二つである分、コストがかかるという悩みがあるにはあるんですけどね(苦笑)。

交換式バッテリーという
斬新な提案を具現化

——ところで、FOMM ONEは普通充電のみの対応で急速充電には対応していませんよね。

佐藤 FOMM ONEは街乗りEVなので、普通充電対応のみでも大きな支障はないとの判断があり、そうなっています。参考までにお話しすると、現在開発中のグレードが上のEVは急速充電にも対応する予定でいます。



——その一方で、FOMM ONEは交換式バッテリーという画期的な仕組みを採用しています。しかも、ドライバーのスマートフォンにバッテリーの残量などを報せるバッテリーマネジメントシステムまで備えている……。これはどういった意図なのでしょうか?

佐藤 たとえ街乗りEVとはいえ、街中を長時間走ることがあるだろうし、ときには遠くに行くことだってある。また、自宅で充電できない方がいらっしゃるかもしれません。それを考えると、充電時間の長さへの不満や電欠の不安を解消するための性能・仕組みはあって然るべきだろうということになり導入に至りました。まあ、良いとされる先進技術は、とにかくトライして実装してみようという技術者魂が発露した結果ということも言えるんですけれど……。ちなみに、この導入が実際に可能となったのは、タイヤの内側にモーターを入れたことで交換式バッテリーBOX設置のために必要なスペースをシート下に確保できたことが大きかった。普通のカタチでのモーター搭載だったら、こうはいきませんでした。



バッテリー交換の説明資料 ※FOMM社提供



——交換のための予備バッテリーは、ユーザーそれぞれが別途購入して使うことになるのでしょうか?

佐藤 もちろんそういうこともできますけれど、バッテリー単価がかなり高いので、あまり現実的とはいえません。われわれは、FOMM ONEを販売・整備するお店などにバッテリーステーションになっていただき、そこに太陽光発電などで満充電にした予備バッテリーを複数置いてもらい、ユーザーはサブスクリプションで随時交換できるような仕組みというか体制を構築していくつもりでいます。そして、この体制に、お客さまのスマートフォンにバッテリー残量のお知らせがくるバッテリーマネジメントシステムを連係させて、常にジャストタイミングで交換が行えるようにすることも目指しています。これら体制ならびにシステムはタイでも日本でもまだ実現していませんが、来年、日本で個人向け販売をはじめるあたりから徐々に拡充させていきたいと考えています。

バッテリーマネジメントシステム関連画像(1) ※FOMM社提供



バッテリーマネジメントシステム関連画像(2) ※FOMM社提供



補助金制度の活用で
購入価格は200万円を切る!?

——最後に、来年からはじまる日本での個人向け販売について伺います。まずは価格ですが、このFOMM ONEをいくらで販売される予定なんですか?

佐藤 まだはっきりとした数字は決まっていないのですが、生産工場のあるタイから車両を輸入する形を取るため、タイでの価格よりは少し高い250万円前後になる見込みです。ただし、日本にはEV購入への補助金制度があるので、それらを活用すればお客さまは200万円を切るお支払いで購入いただけるようになるかも知れません。

——もし、200万円以下で買える高性能なEVとなると、相当に人気が出そうな予感がします。何台くらい販売したいとお考えですか?

佐藤 社長は初年度は現実的には年間500台ぐらいで、以降はできれば年間5,000台から1万台規模で売っていきたいというすごく幅の広い目標を持っているんですけれど……明確な数字が決まるのは今後に構築していく販売網がどうなるかによってでしょうね。

——どんな販売網を築いていこうとしているのですか?

佐藤 大手メーカーさんが展開しているようなディーラー網の構築による販売は考えていません。基本的には、すでに地域密着で信頼できる活動をしているお店や自動車整備工場さんを集めたゆるやかなネットワークをつくり、そこから販売していくことを想定しています……。今回はせっかく取材していただいているので、あえて喩えで言わせていただきますと、ロータスクラブさんのネットワークでの販売も十分にあり得るんじゃないかと思います。

——ああ、なるほど、とてもわかりやすい喩えです。今、ロータス店のほとんどが「次世代自動車取扱認定店」になっていますから、整備面でも安心です。

佐藤 はい、ぜひ前向きにご検討いただきたいですね。ところで、安心の整備という言葉が出たので、追加でお話ししますと、実はFOMM ONEにはより確実な整備につなげてもらうためのプラスαの機能と仕組みがあります。具体的に言うと、車両にはIoT技術でドライバーがどんな操作をしたかはもちろん、バッテリーやモーターなどの部品がどんな状態になっているかが常時わかる機能が付いていて、われわれはそれで得たデータを今後お客さま、販売店、整備工場さんなどと共有し、日常的な点検や定期的な整備などに役立ててもらうことを考えているんです。通常、大手自動車メーカーはそうしたデータをブラックボックス化していますが、われわれはオープンなプラットフォームを構築してサービス連携していくつもりでいます。

——それはすばらしい。そうですか、FOMM ONEは画期的なEVであるだけでなく、実はデータをみんなで共有できるようにする良心的なコネクテッドカーでもあったんですね。こうなると、扱う販売店や整備工場が安心なのはもちろん、購入したお客さまも安心ですね。来年以降のFOMM ONEの日本での個人向け販売の展開が非常に楽しみです。今回はいろいろと貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

『第13回オートモーティブワールド』に軽EVのFOMM ONEが出展されるという情報を得て、実物見たさに会場へと向かったわれわれは、FOMM社の広報担当者・佐藤俊氏にインタビューする機会を得て、さらにFOMM ONEの可能性に魅せられた。

昨今のEVに関連した日本の国内マーケットの動向には、どこか幕末の鎖国にも似た島国特有の閉鎖性が透けて見える。それを突き抜けて新しいEVの時代を開くのは、黒船のような外圧かもしれない。タイからやってくる、軽EVのFOMM ONE。その小さな車体には、意外に大きなパワーが宿っているように感じられた。

軽EV『FOMM ONE』の可能性(第13回オートモーティブワールドより)

①すでにタイでは400台を販売、日本でも 法人向け販売開始!

②エアバッグはないがドライバーを守る工夫がいっぱい!

③インホイールモーターや交換式バッテリ ーなどを搭載!

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