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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年3月26日更新
4.8キロを11周するALL JAPAN EV-GP SERIES2024 第1戦「全日本もてぎEV55㎞レース大会」の決勝。
観衆はグリッド最前列に並ぶ2台のモデルSプラッドが発揮するであろう0-100m2.1秒の実力を目撃すべく、固唾をのんでスタートの瞬間を待った。
ところが、シグナルがオールクリアになる寸前、ポールポジションのKIMI選手が前に飛び出してしまう。つられて2番手グリッドにいた密山選手も車両を動かしてしまった。
両選手はすぐにフライングに気づいてすぐに車両を止めたが、改めてのスタートにはならず、そのままレース続行となった。
EVレースに新たな歴史を刻むかも知れない一戦は、こんな中途半端な感じで幕を開けた。
2位に15秒差
3位に21秒差
レース規定により、フライングを犯した両選手にはそれぞれ5秒加算のペナルティが科された。かなりのハンデである。今回、勝つ可能性が小さいと目されていたモデル3勢に大きなチャンスが巡ってきたと思われた。
だが、モデルSプラッドの強さは、ハンデと想像をはるかに超えるものだった。
結果から先にいうと、KIMI選手が一度もトップを譲らずポールトゥウインを決めている。
KIMI選手の優勝タイムは実質24分58秒346のところ5秒加算で25分03秒346。これは3位に入ったモデル3パフォーマンスの久保凛太郎選手に21秒もの差をつけるタイムだった。車重が重く、かつブレーキとサスペンションがノーマルだったため、コーナーでは多少もたついた感はあったが、ストレートでの速さはそれを補うに余りあった。恐るべき速さといえた。
続く2位も密山選手が駆るモデルSプラッド。やはりモデル3勢には余裕で勝っていた。ただ、KIMI選手からは約15秒遅れ。レース後、密山選手はそうなってしまったわけを次のように語っている。
「序盤は控えめに走り、KIMI選手のクルマのバッテリーがタレて減速しはじめるだろう後半に巻き返すつもりでいた。ところが、早い段階で逆に自分のクルマにバッテリー過熱とスピード制御が出てしまった。もしかしたら、下に大きく張り出させたフロントスポイラーが車両の下に熱気を滞留させたせいでバッテリー加熱を早めたのかもしれない。本来のポテンシャルが発揮できず非常に残念だ。しかし、それも含め、今回はいろいろと課題が見つかった。次回に乗るときは、それらの改良・改善により、もっといい勝負ができるようになっていると思う」
実はレースの4周目~5周目、密山選手のモデルSプラッドは久保選手のモデル3に一時的に2位の座を奪われている。これは現役プロである久保選手のコーナリングの巧さと密山選手の車両のスピード制御が相まって起こったことと思われるのだが、非力なモデル3でもモデルSプラッドを打ち負かす可能性があることを如実に示すシーンとなっていた。ストレートが短くコーナーの多いサーキットでのレースであれば、モデル3の優勝は十分にあり得るだろう。
最終的なレースリザルトは以下のとおりである。
特筆すべきは、シングルモーターのモデル3でEV-2クラス(市販車・モーター最大出力150kW以上250kW未満)に個人で参戦していたモンド・スミオ選手(#55 モンドコーヒー)が1ラップダウンながらも総合5位に入ったこと。聞けば、もてぎ走行は今回が初。事前練習はVRでの仮想ドライブのみだったという。今のDX時代にふさわしいクール&クレバーなドライバー。熱い走りが特徴のTAKAさん選手とはまた毛色の違う実力派アマチュアドライバーとして、今後のさらなる飛躍を期待したい。
優勝できたのは
TAKAさんのお陰!?
ぶっちぎりのポールトゥウインで勝ったKIMI選手は、今回が初優勝であった。
いつもはクールな表情が、表彰式では緩みっぱなしとなっていた。
勝者コメントも、大いに笑いを誘うものだった。
「決勝は70%ほどのアクセル開度で戦った。さすがに終盤にはバッテリーの加熱が出て幾分かスローダウンを余儀なくされたが、電力そのものはたくさん余っていたのでなんとかトップのまま走り切れた。ちなみに、全開大好きな僕がどうしてアクセルをあまり踏まない離れ業ができたかというと、今回ピットに入ってくれたTAKAさん選手がずっと『アクセルは70%で、アクセルは70%で』と耳元で呪文のようにささやき続けてくれたから。何度もEVレースで優勝している実力者がいうことだから、僕としては従うしかなかった(笑)。初優勝ができた要因は、僕とクルマの実力3割で、TAKAさん選手の貢献7割といった感じかな。TAKAさん選手はタイヤまで提供してくれているし……」
KIMI選手には、今後もほどよいアクセル開度に留意して7年連続で年間総合チャンピオン輩出を狙う王者TeamTAISANを脅かす存在となり、レースおよび年間チャンピオン争いを例年以上に盛り上げてくれることを心より期待したい。
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