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【i-MiEVの10年 / 販売店社長の目線 前編】「10年間に累計300台以上のEVやPHEVを販売してきた」(新城浩司さん)

2019年12月5日更新



i-MiEV(アイ・ミーブ)というクルマが歩んだ10年を振り返るこのシリーズ。二人目に登場いただくのは、10年にわたって、沖縄県宮古島市でi-MiEV販売に積極的に取り組んできたロータス東和オート(株式会社東和)代表の新城浩司さん。まずは、なぜ世の中の評価が定まっていない電気自動車(EV)の販売に力を注いだのか、発売当初からどうやってi-MiEVの販売を伸ばしてきたのか、などについて伺った。

エコアイランド&i-MiEV!

——新城さんの会社は、i-MiEVをはじめとしたEVの販売・整備でつとに有名です。いつごろからEV販売に関心を持たれたのでしょうか?

新城 i-MiEVが発売になるちょっと前のことですね。2008年に地元の宮古島市が「エコアイランド宮古島宣言」を行い、島をあげてエコに積極的に取り組む意思と施策を鮮明にしました。それを受けて、私は「自動車販売・整備業として宮古島の環境に貢献できることってなんだろう」といろいろ考え出し、結果「CO₂を出さない電気自動車(EV)を販売するのが良いのでは」となったんです。



——地元の環境保全に貢献しようという意識がEVを取り扱う発端になったのですね。

新城 そうです。ただ、事はそうカンタンでもなかった。というのは、i-MiEVの前に試しに取り寄せてみた韓国製のe-ZONEというEVの性能が……正直なところ満足できるような内容じゃなくて、「いくら環境に良くても、こういうクルマを販売するとお客さまに迷惑がかかるだろう」ということになり、その取り組みも一旦は頓挫しそうになったんですよ。

——i-MiEVの前哨戦があったわけですね。

新城 それがなんとか持ち直したのは、そのタイミングで国産のEVであるi-MiEVが登場してくれたから。試乗してみると、とにかく走りがすばらしかった。「ああ、これだったら自信を持ってお客さまに勧められる」という確信を持ち、EV販売に取り組む決心をしました。

法人のお客さまの輪が広がった!

——初めてのEV販売、スタート時から順調だったのでしょうか?

新城 いや、極めて不調でした(苦笑)。2010年にi-MiEVの一般向けの販売が始まってすぐに3台ほど売れたんですけど、その後、ピタッと売れなくなってしまいました。じわじわと売れ出したのは、それから1年余り経ってからのことです。

——3台で販売が止まってしまった理由は何だったのですか?

新城 理由はとてもシンプル。補助金は出るにしても車両本体価格が450万円以上もしたからです。個人のお客さまにオススメすると「高すぎる」としか言われませんでした。富裕層の方も「いくら性能がいいからといって、軽自動車の規格で450万超えはないだろう」って一笑に付して終わりでした。

——では、それがどうして1年余り経ってから売れ出すことになったのでしょうか?

新城 会社や商店といった法人のお客さまが購入してくださるようになったんです。実は最初の3台も法人のお客さまに購入いただいていたんですが、そのお客さまからの紹介の輪が広がり出したんですね。

——ああ、紹介から広がったのですね。

新城 そうです。「エコアイランド宮古島宣言」があってからというもの、私たちの会社だけでなく、島内企業の経営者の方々が少しずつ環境への意識を高めていました。それを前提にして、私たちも当初から法人のお客さまに、「i-MiEVはCO₂排出ゼロなので、これを社用車として使うと環境のことをちゃんと考えている企業のイメージが醸成されて、商売にいい影響がもたらされますよ」とアピールし、かつエコをイメージしたラッピングサービスを付加して売り込んでいました。それでなんとか3台が売れたわけですが、その3台のお客さまが1年の間にそうしたメリットを実感し、周りの仕事関係の方々に「走りがいい上に、会社のイメージアップにもすごくいいよ」と自慢してくださるようになった。それで「じゃあ、ウチの会社にもEVを導入してみようか」となっていったわけです。マスの広告が打たれない中で、この口コミはかなり効きましたよね。

——なるほど。ちなみに、車体へのラッピングサービスは、i-MiEV登場の初期からメーカーでやってはいましたが、オリジナルデザインを施すことはできなかったと思うのですが、どのように実現したのですか?

新城 実は、私は以前に東京でファッション関係の仕事をしていたので、そのキャリアを活かして自分でパソコンをいじってデカールのデザインをし、それを地元の看板屋さんに施工してもらうというカタチで進めていました。なので、当時のラッピングサービスは無料での提供でした。



——そうでしたか。そういう陰の努力もあって法人顧客のi-MiEV需要が高まり、EV販売が軌道に乗ったということですね。

新城 はい。私たちもEV販売のノウハウを蓄積することができたので、その後は順調でした。これまでに、ウチの会社では累計300台以上のEVやPHEVを販売しています。最近は、「仕事に使いやすい」という理由で、i-MiEVよりMINICAB-MiEV(ミニ・キャブミーブ)の方が売れています。過去の販売実績の割合は、i-MiEVが30%、MINICAB-MiEVが55%、その他のEVとPHEVが15%という比率になっています。



「環境」が個人のお客さまに効く時代

——法人のお客さまは増える一方で、個人のお客さまは増えないままだったのでしょうか?

新城 いいえ、後に車両本体価格が下がりましたし、廉価版のMタイプも出たりしたので、徐々にではありますが個人で購入されるお客さまも増えていきましたよ。i-MiEVだけの累計でいうなら、現在、法人と個人のお客さまの比率は6対4になっています。

——そういう個人の方々へは、価格面の訴求以外では、どのようなアプローチを?

新城 実際に乗っていただいてi-MiEV=EVの走りの良さを知っていただく、それに尽きますね。

——試乗とか代車とかでなるべく乗っていただく機会を増やし、それでファンづくり顧客づくりに繋げている、と。

新城 そうです。ただ、店頭に来ていただいて、20~30分の試乗をするというやり方ではありません。普段の使用環境をヒアリングで把握し、できる限り「満充電のバッテリーの残量がなくなる寸前まで自由に使ってください」と数日間乗っていただくようにしています。そうすると、i-MiEVの走りの快適さに対する納得感が全然違ってくるんですよ。皆さん「エンジン車より断然いいな」って必ずおっしゃるようになる。そうなったらもう、成約までの道のりはそう遠いものではなくなるんです。

——ちなみに、そういう個人のお客さまにも、法人のお客さまのように環境に関するアプローチをされていますか?

新城 もちろん!してます!実は、i-MiEVの購入を検討してウチにいらっしゃるお客さまは環境意識が高い方が多いです。だから、「EVによる環境への貢献」の一言は必ず入れるようにしています。それが購入の決め手になることだってけっこうあります。

——やはり、皆さん、エコアイランドに住んでいらっしゃるから環境意識が高いのでしょうね。

新城 確かに、それはあると思います。けれども、環境意識は宮古島だけのことではなくって、どこでも高まっていると思います。そのことに、EVをあまり販売していない会社やお店では気付いていないかもしれませんが、「ガソリン車で排ガスを出しているのに比べて、自分はエコをやっている」っていう意識は、ある意味でちょっとしたステータスなんです。そのステータスを、販売する側が「その通りです」と押して差し上げる……これはとても重要なことです。

【i-MiEVの10年 / 販売店社長の目線 前編】

「10年間に累計300台以上のEVやPHEVを販売してきた」(新城浩司さん)

「販売する側にi-MiEVを売っていこうという真剣度が足りなかった」(新城浩司さん)

新城浩司(しんじょうこうじ)
1980年、沖縄県宮古島市生まれ。美容学校卒業後、東京でファッション業界などの仕事に従事。2008年にUターンし、父・新城浩吉氏(現会長)が経営するロータス東和オートに入社。2009年のi-MiEV発売に触発されて三菱自動車などのEV・PHEV・PHVの販売・整備に注力。以降、大手自動車、電機メーカー、大学と共に共同研究や実証事業を重ね、斬新なアイデアを駆使しながら宮古島をEVアイランドにすべく奮闘を続けている。現在、代表取締役社長として自社を経営するに加え、全日本ロータス同友会本部経営研究室研究員 兼 同友指導講師(電気自動車関連) 兼 九州ブロック総合戦略企画室副室長も務めている。

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