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さいたま市で小型EV体験(後編)- EVのシェアリングサービス開始で、街のスマートシティ化はどんどん加速してゆく!

2021年4月28日更新



ここからは、軽自動車規格のEV『FOMM ONE(フォム・ワン)』を導入して行われている埼玉県さいたま市の『シェア型マルチモビリティ等の実証実験』について、試乗会会場でお会いした関係者の声を交えながら紹介していく。今後、具体化していく街のスマートシティ化について、きっと身近に感じることができるだろう。

渋滞緩和と回遊性向上を目指し
プロジェクトをスタート

現在、さいたま市の〈大宮駅・さいたま新都心周辺地区〉は、国土交通省のスマートシティプロジェクトの対象エリアとなっている。

ここで市は、多様なモビリティによる人の移動をITとネットワークによって手軽かつ便利に行えるようになる次世代型の街=スマートシティづくりに取り組んでいる。

その手始めとなるのが、今回の『シェア型マルチモビリティ等の実証実験』である。2025年までエリア内で試験的に小型EV、スクーター、電動アシスト自転車を使ったシェアリングサービスを行い、将来的に事業として定着させることを目指している(実験から得たデータをより高度なスマートシティ化に役立てていくことも考えている)。

大宮駅・さいたま新都心駅周辺地区将来イメージ

画像提供:さいたま市



市がこうした新しい試みに取り組む理由について、さいたま市都市局の岩崎克巳都市総務課長(当時)はこう述べている。

「大宮駅周辺・さいたま新都心地区は交通渋滞の解消やまちの回遊性の向上が課題でした。こうした課題を解決するための取り組みの一つとして今回のプロジェクトは始まりました」

渋滞を緩和するには自家用車による移動をなるべく少なくする方策が考えられる。だが、その方向に動いたとしても現状の公共交通機関だけでは回遊性の向上は望めない。であれば、これまでになかった新たな交通システムも必要であろう……。そのような考えがプロジェクトの前提となっている。



今回の実証実験は、さいたま市と、ENEOSホールディングス株式会社(以下、ENEOS)およびOpenStreet株式会社(以下、OpenStreet)が協定を組んで実施している。

プロジェクト全体の調整とシェアリングサービスのための場と機会の提供をさいたま市が担い、OpenStreetのシェアリングプラットフォームを活用し、そこへの小型EVの提供と充電機能をENEOSが行うという三位一体の体制である。

「今回の取り組みは、利用者が複数のモビリティから最適な手段を選んで移動することで、交通利便性の向上を目指すものですが、そのためにすでにシェアリングサービスとして実績のあるOpenStreetのシェアサイクルやシェアスクーターのサービスに、ENEOSが新規に開始した小型EVのFOMM ONEを使ったカーシェアを組み込んだ取り組みです。これは、交通渋滞の緩和や良好な回遊性の実現はもちろん、カーボンニュートラルの推進にも役立っていくと考えており、環境に配慮したスマートシティの実現を目指すさいたま市に適合したプロジェクトであると思っています」(岩崎課長)

この『シェア型マルチモビリティ等の実証実験』についてより深く知るために、OpenStreetとENEOSの担当者の話にも耳を傾けてみることにしよう。

シェアリングサービスから
やがてはMaaSの実現へ

OpenStreetは、スマートフォンのアプリを通して利用できるシェアリングサービスを全国各地で展開している会社だ。

一般の人たちは、この会社が提供するアプリ「HELLO CYCLING」を使えば電動アシスト自転車のシェア車両が利用でき、アプリ「HELLO SCOOTER」を使えばスクーターのシェア車両が利用できるようになっている。

そして今回、実証実験の実施にあたって「HELLO SCOOTER」にEVのシェアリングに対応する機能が付加され、一般の人たちはこれを使うことで〈大宮駅・さいたま新都心周辺地区〉に配備されたシェア車両FOMM ONEが利用できるようになっている。

「HELLO SCOOTER」アプリのアイコンと画面

画像提供:OpenStreet



同社の執行役員である工藤智彰CFOに話を聞いた。

——今回の実証実験における御社の取り組みを教えてください。

工藤 この実証実験は、交通の回遊性を向上させるために、さまざまなモビリティをシェアリングサービスで利用してもらおうというものです。当社のプラットフォームの特徴は、車体や車種を選ばずにシェアリングの仕組みにつなぎ込むことができるということなので、システムおよびサービスの面で十分に貢献できると思います。

——今回、そのプラットフォームにFOMM ONEという小型EVが組み込まれました。

工藤 エコで先進的な車両であるFOMM ONEがつなぎ込まれたことは、当社のプラットフォームにとっても価値のあることだと思っています。4輪としてはこれが初の試みですが、「脱炭素」は当社のミッションの一つなので、この実証実験に限らず全国いろいろなところで、FOMM ONEをはじめとした小型EVの普及に連携していきたいと思っています。

シェアリングサービス

——アプリやサービスの提供者として、この実証実験の利用を促進するような働きかけは何かしていますか?

工藤 もちろん情報発信などしていきます。例えば、この地域の周辺には当社のアプリでシェアサイクルを使っている方もいっぱいいらっしゃって……利用者数はだいたい数万人ほどです。その方々に、「小型EVやスクーターにも乗れるようになりましたよ」というご案内を出していきます。

——御社として、この実証実験の先にある狙いなどお聞かせください。

工藤 この実証実験自体が、より便利でスムーズな移動を可能とするMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実現を見据えていると思います。私たちは、アプリによるEV、スクーター、電動アシスト自転車のシェアリングサービスを運営しつつ、将来的にMaaSを実現するのためのお手伝いができればいいと思っています。

実証実験から
新たなユースケースが見えてくる

ENEOSは、ガソリン供給を行う主な事業としてきた企業である。

そのENEOSが、今回、ガソリンを使わないEVを提供するという立場でシェアリングサービスの実証実験に参画した。その狙いは、いったい何なのか?



同社の未来事業推進部の六代玲子マネージャーと澤田拓朗氏に話を聞いた。

——今回、この実証実験にEVのカーシェアで参加された意図を教えてください。

澤田 私たちは新規事業立ち上げの部署なので、クルマの電動化に代表されるモビリティの変化、そしてカーシェアリングなどユーザーニーズの変化に対応するために何をすべきかを考えています。その中で、小型EVのカーシェアリングを実験的に行い、そこからデータやユーザーの声を得ようという意図でこの実証実験に参画しました。



——車両として軽EVのFOMM ONEを選んだ理由を教えてください。

澤田 元々省スペースな場所を使ってカーシェアリングをしたいという考えがあったので、小型EVを対象車種として検討しました。そこで、FOMM ONEを選んだ理由は主に二つあって、一つは航続距離が魅力的だったこと。FOMM ONEは満充電で160㎞も走るので街乗りだけでなく、もう少し広い用途で使うこともできます。もう一つは、小さいながらも4人乗りであるということ。後ろにシートがあることで、いろいろなユースケースが考えられます。例えば、幼稚園や保育園のお子さんの送迎に使うという場合、FOMM ONEなら後部座席にチャイルドシートやジュニアシートを付けて乗せることができます。そういう多様なユースケースを検証できるという点が良いと思いました。

——走りや操作性についての評価はどうだったんでしょうか?

澤田 インホイールモーターを採用したEVで、操作性についても良いと感じています。実は、この実証実験に車両を投入する前、複数の法人の方々に乗ってもらったのですが、寄せられた声は「これならいける」といったポジティブなものばかりでした。



——この実証実験にどんな期待を持っていらっしゃいますか?

六代 今回は私たちにとって初めての取り組みですから、さいたま市にお住みの方はもちろん、出張などで来市される方など、なるべく多くの皆さまに小型EVのシェアリングサービスを利用していただき、感想や評価などをお聞きしたいと思っています。また、どんなユースケースがあるのかということも確認していきたいと思っています。まずは、それがこの実証実験に期待するところでして、そこから得た成果を元により魅力的な展望を描ければうれしい限りです。


● ● ●


ほんの数年前までは、EV普及もシェアリングサービスの展開も、さらにはスマートシティの実現も、遠い将来に起こることのように思われていたが、気付けば身近なことになりつつある。

今回の試乗会は、参加促進のアプローチを、ある程度抑制した中で行われた。そのため行列にはならなかったが、会場であるさいたま新都心バスターミナルには試乗希望者が一定の間合いで到着し、FOMM ONEの試乗を楽しんでいた。それはEVと、MaaSに近いシェアリングサービスが日常になった風景だった。

さいたま市が主導するこの実証実験は「実験」というよりは、実装の準備として継続的に行われる。興味のある方は、スマートフォンに「HELLO SCOOTER」のアプリをダウンロードしたうえで、シェアリングサービスを利用し、FOMM ONEに乗りにいってみてほしい。そうすれば、そうした事実がはっきりと確認できるはずだ。いい古された表現だが、未来はもうそこまできている!(文:みらいのくるま取材班)

さいたま市で小型EV体験
(前編)前輪のインホイールモーターが「街中での頼もしい走り」をもたらしてくれる!
(後編)EVのシェアリングサービス開始で、街のスマートシティ化はどんどん加速してゆく!

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