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2022全日本EVグランプリシリーズ第1戦レポート①―予選トップの絶対王者が弱気を見せた理由とは……

2022年5月12日更新

2022全日本EVGP第1戦_1-1

JEVRA(日本電気自動車レース協会)主催の2022全日本EVグランプリシリーズ(All JAPAN EV-GP SERIES)がついに開幕。4月23日に行われた筑波サーキットでの第1戦は、予想だにしなかったEVレース史上まれに見る大激戦に。レポート①と②では、その興奮のレース模様を詳細にレポート。レポート③では、シリーズ参戦中のユニークなチームの挑戦をお伝えする。

フォーミュラマシンより
車重が重いモデル3に苦戦

「5連覇に向けて開幕戦で優勝したい。でも、緑のモデル3が脅威。簡単には勝てないかも」

予選でポールポジションを獲得した地頭所光選手は、いつになく弱気だった。その発言は、シリーズ4連覇中の絶対的王者らしからぬものに思えた。

2022全日本EVGP第1戦1_2

チャンピオンの脳裏には、昨シーズン、同じ筑波での60㎞という長丁場を戦った第6戦で、緑のテスラモデル3を駆るTAKAさん選手に追われ続けた末、電欠して負けたときの苦い記憶が蘇っていた。

しかも、そのTAKAさん選手がシーズンオフに徹底的に走り込んでデータを取り、腕を磨いていたとの情報も耳にしており、本来持つべき自信が大きく揺らいでもいた。

「モデル3を運転するのは半年ぶり。シーズンオフは今年から参戦するFIA-F4のフォーミュラマシンの走行練習ばかりやっていた。車重800㎏のフォーミュラマシンを運転し続けた後に、車重1.8tのモデル3を走らせてみたら、ドライブ感覚が大きくズレていることがはっきりとわかった」

「1周のタイムを競う予選はクルマの性能に任せてなんとか凌いだ。しかし、27周55㎞の決勝レースはそうはいかない。本来のドライブ感覚を取り戻しながら知略と技術を駆使して戦う必要がある。それができなければ、おそらく優勝はTAKAさんに持っていかれる」

ライバルの充実した進化と自身の停滞。それを感じ取っているチャンピオンは、どうしてもナイーブにならざるを得なかったのである――。

2022全日本EVGP第1戦1_3

いつもと同じ予選結果も
漂う激戦の予感

午前中に行われた予選では、モーター最大出力201kW以上のEV-1クラスに参戦する5台のテスラモデル3が、他クラスに参戦するモーター出力の小さい車両群を圧倒した。

ポールポジション獲得の地頭所光選手(TAISAN 東大BIR TESLA 3)の車両を筆頭に、上位5位までをすべてモデル3勢が占めた。

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新たなシーズンの開幕ながら、夕刻に行われる決勝のスターティンググリッドは、いつもとほとんど変わらぬ風景。こうなると、地頭所選手が先行逃げ切りで優勝を遂げる画が容易に想像できた。

「結局、地頭所選手のポールトゥーウィンかな」

だが、その予想は安易に過ぎた。レース関係者や上位選手たちに話を聞くと、外からはうかがえない地殻変動が起きており、そう簡単な結論には至らないことがわかった。

冒頭に挙げた、地頭所選手とライバルTAKAさん選手(適当LifeアトリエModel3)との実力の拮抗は、代表的な地殻変動のひとつといえる。

予選ではTAKAさん選手は3位と振るわなかったものの、聞けば事前に手を入れた足回りのセッティングが合わなかっただけ。決勝では、そこを修正して地頭所選手を脅かす走りを見せることは間違いないと思われた。

それだけではない。

モデル3勢の中には、“筑波マイスター”との異名を持つ小野津博之選手(もっとだるいテスラ)と、初参戦ながら近年めきめきと成長している女性ドライバーの翁長実希選手(トーヨーシステム TAISANアキラR)がいて、彼らも十分にチャンピオンを脅かす存在となっていた。

予選2位の小野津博之選手は、毎シーズン、筑波サーキットで行われるレースだけに参戦する御年60歳のベテランドライバー。筑波のコースの攻略法を知り尽くしているがゆえに“筑波マイスター”と呼ばれている。事実、2019シーズンの筑波での第6戦では誰よりも早くモデル3を投入し、当時モデルSを駆っていた地頭所選手をぶっちぎって優勝を果たしている。年に1~2回の参戦者とはいえ、睥睨すべからざる存在なのである。

2022全日本EVGP第1戦1_10

予選5位の翁長実希選手は、父が作った沖縄県内のサーキットで幼い頃からカートの腕を磨いてきた実力派女性レーサー。本土で活動するようになってからは、JAF F4のフォーミュラを戦うなど着々とキャリアを積み、昨年のKYOJO CUP最終戦では劇的な優勝を遂げている。今回は初のEVドライブ・EVレースながら、「バッテリーの熱マネジメントのことを考えて、前半は前のクルマを抜きたい闘争心を抑えながら走り、後半に一気に勝負をかける」との、実に玄人っぽい意気込みを語っている。思い返せば、昨シーズンの第7戦では、やはり実力派の今橋彩佳選手が女性ドライバーとして初優勝を飾っている。翁長選手が彼女に次ぐ快挙を成し遂げる可能性は決して少なくないのである。

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一見、刺激の少ないレースになると思いきや、その実、あちこちで熱いマグマがたぎっていた。決勝が興味深い展開になるのは必至といえた。

2022全日本EVグランプリシリーズ第1戦レポート

①予選トップの絶対王者が弱気を見せた理由とは……

②EVレース史に残る大激戦。1位と2位のタイム差は0.00秒!

③「いつかモデル3よりも速く」。武蔵精密工業チームの電動化時代の挑戦!

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