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クルマのことならなんでもガイド
2019年7月23日更新
今月の達人
品田商会・品田庄一
2020年代のクルマ社会において、台数的にも大きなボリュームとなっていくであろうEVをはじめとする電動車。この電動車の“命”と言われているのが、駆動用バッテリーです。皆さんは、その駆動用バッテリーの整備・点検のキーワードをご存知でしょうか?それは、「バッテリーマネジメント」です。今回は、駆動用バッテリーの現状を確認しつつ、「バッテリーマネジメント」についてもお話したいと思います。
進化著しい駆動用バッテリー
EVの心臓とも言える駆動用バッテリー。この進化は、近年目覚しいものがあります。
振り返ってみれば、駆動用バッテリーは航続距離を延ばすことを大命題としながら、鉛蓄電池 → (ニッケルカドミウム電池)→ ニッケル水素電池 → リチウムイオン電池と漸次進化を遂げてきました。
特に、21世紀直前に開発されたリチウムイオン電池はこれまでのどの電池よりも航続距離を長くできるということで、EVの登場を現実的なものにする上で大きな役割を果たしました。
ただ、当初は、このリチウムイオン電池を積んだEVでも航続距離は100㎞そこそこで、それがEVの欠点として指摘されたものです。
しかし、近年、研究開発が進められて性能が格段にアップし、例えば、日産の新しいリーフ e+は、1回の満充電状態でJC08モードで570km、実際の走行でも400㎞を超える航続距離を誇るまでになっています。
これは、EVだけでなく、HVを含めた日本メーカーの電動車開発の課程で、バッテリーメーカーも負けず劣らず頑張ってきたからだと思います。
その中でも、私がもっとも注目しているのは東芝のSCiBというバッテリーです。三菱自動車のEVアイ・ミーブに、かつてラインナップされていたMグレードにはこのSCiBの初期型が搭載されていました。また、スズキのエネチャージ車、S-エネチャージ車、マイルドハイブリッド車にも採用されています。
SCiBは、以前から長寿命が特長でしたが、現行タイプはなんと2万回(特定条件下で実測した数値)以上充放電を繰り返しても7割~8割の容量が維持できるほどの長寿命性を誇るまでになっています。
これは、1日1回の充電をルーティンとするカーライフを送るとすると、50年以上は問題なく走り続けられる計算となり、一般的なクルマの代替えサイクルである5~10年後なら、バッテリーはほとんど劣化していていない状態にあることを意味します。
しかも、短時間での充電が可能です。特定条件下で実測した数値では、6分間での急速充電を達成したと言います。これは、給油感覚でEVの急速充電が可能であることを表しています。
加えて、温度に対する対応も幅広くて、上は40度から下は-30度くらいまで電池の性能が落ちません。日本国内でいえば、特に寒冷地で冬に駆動用バッテリーの性能が落ちるという課題があったと思うのですが、そういった心配はしなくて良いというわけです。
実は、このSCiBを製造する東芝の工場は、私たち品田商会(ロータスシナダ)がある新潟県柏崎市にあります。私はその工場誘致に関わった一人であるということも手伝って、SCiB自慢を展開しましたが、ロータスクラブが提携するバッテリーメーカーであるGSユアサとパナソニックも、負けず劣らず優秀な駆動用バッテリーを開発し、どんどんクルマ社会に送り出しています。
これまでは、「EVなど電動車普及のネックは駆動用バッテリーの能力不足」と言われることがありましたが、それは過去の話になりつつあるのです。
電動車メンテナンスの肝は
バッテリーマネジメント
今回、駆動用バッテリーを取り上げたのは、EVをはじめとする電動車が普及して、それが“普通のクルマ”になったとき、この駆動用バッテリーがらみの部分がクルマのメンテナンスの重要課題になると考えられるからです。
「ガソリンから電気へ」というシフトは、私たちの仕事に如実に現れます。
ボリュームを増した電動車へのサービスメニューは、今までと同じ項目もあるでしょうが、違ったサービスメニューも必要になります。
例えば、これまでお客さまとの頻繁な接点であった「オイル点検」は、基本的にはなくなります。その代わりに重みを増すのが、駆動用バッテリーの状態をスキャンツールで確認する、「駆動用バッテリー点検」です(これは、少し私感が入った意見ではありますが)。
この駆動用バッテリー点検を含む、次世代の自動車整備工場の大きなテーマが、『バッテリーマネジメント』です。
お客さまが電動車を安全・安心・快適に、そして永く乗れるように、それぞれのクルマごとのバッテリーの状態を把握し、それを踏まえて最適なアドバイスをする……これがバッテリーマネジメントの概要です。
具体的な例としてはSOC(State of Charge)の設定などがあります。
SOCは、そのバッテリーの充電率のことです。駆動用バッテリーは、容量の0%から100%までのすべてを使うことはありません。例えば、下限を10%、上限を90%などというように設定します(この場合、SOCは80%となります)。下限の設定は完全放電による劣化の防止、上限の設定は急速充電器による過充電保護のためです。
※ただし、上記にご紹介した東芝のSCiBはSOC 0~100%で使用可能と発表しています。
この下限と上限の設定は、当該バッテリーの特性を踏まえて行うべきですし、お客さまの使用スタイルを加味する必要もあるかもしれません。
次世代車への対応をしっかり行った自動車整備工場であれば、専用のスキャンツールを使って、お客さまの愛車の駆動用バッテリーの容量の上限と下限を適正に設定することができます。
そして、バッテリーマネジメントをしっかりやる・やらないでバッテリーの容量は変わり、寿命にも影響します。
もし、バッテリーマネジメントを不要と考えて駆動用バッテリーに過酷な使用を続けると、容量が縮み、寿命も短くなってしまうでしょう。ひいては、代替時などにおける引き取り価格を低下させることにつながります(電動車、特にEVの引き取り価格は駆動用バッテリーの状態に左右されるところがあります)。
「これまでのガソリン車でも、点検のときにバッテリーの調子を見てもらっていた」というとらえ方をされた方がいらっしゃるかもしれませんが、私のお話ししたバッテリーマネジメントとそれは別物です。
駆動用バッテリーは、電動車の“命”です。よって、医療で言うところの“かかりつけ医”のように、定期的に診断し、記録し、より良い状態を保つように、お客さまと自動車整備工場(サービススタッフ)が一緒になって駆動用バッテリーの世話をする必要があるのです。
今、わが社でも現場のサービススタッフたちは、そんな次代の自動車点検・整備をイメージして“バッテリーのプロ”となるべく切磋琢磨しています。もちろん、全国のロータス店でもそうした動きは盛んです。
この私の記事を読んでくださっている皆さんも電動車を愛車としたならば、入庫時に「バッテリーの点検をしましたが、状態は○○です。前回は△△でしたから……」というように、バッテリーマネジメントの報告をちゃんとしてくれる自動車整備工場を選んでお付き合いいただくことが大事です。
「電動車メンテナンスの肝はバッテリーマネジメント」……このキーワードを、ぜひお忘れなく!
実は、日本には電動車普及のための下地がしっかりとできているんです!
なんと、世界初のEVレスキュー車『助っ人EV』を共同開発しちゃいました!
太陽光発電でEVの充電をするガソリンスタンドがあるのを知っていますか?
いまロータス店がぞくぞくと『次世代自動車取扱認定店』になっています!
『次世代自動車取扱認定店』には“環境に取り組むココロ”がしっかりあります!
「バッテリーマネジメント」という言葉をご存知ですか?
これからの10年は新しいEV・PHV・PHEVがぞくぞくと登場します!
お店紹介
品田商会:1950年、品田庄治郎氏が創業。当初は自転車・バイクの販売修理業としてスタート。その後、自動車(国産・輸入車)の修理と販売を手がけ、その技術の高さが評判を呼んで大きく成長。地元では、早くからEVをはじめとする次世代自動車に対応できる会社として認知される(LOTAS次世代自動車取扱認定店)。2代目の社長である品田庄一氏は“環境オタク”を自認。クリーンでエコなお店づくりに取り組んでいる。
住所:新潟県柏崎市松波4-1-63
電話:0257-23-2227(代)
HP:https://www.shinada-web.com
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