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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年5月23日更新
トヨタのEVシフトは
満を持しての決断だった!?
この本には、「EVはどういう仕組みで動くのか」といったような話はあまりでてこない。おもに、どのメーカーがきたるべきEV時代の覇権を握るかといった経済的な話で一冊が終始している。
そもそもが日経ビジネスのムック本なので、そこらへんについては暗黙の了解ということになるのかもしれないが、それでもあえていうなら、この本は『まるわかりEV』ではなく、『まるわかりEVビジネス』としたほうが正しいといえるだろう。
というわけで、『まるわかりEVビジネス』と視点を切り替えれば、最新の各国のEV事情、それに対応する各メーカーの動き、今後の展開がどうなるかなどの概要を知るために、この本はとても役に立つ。
とくにプロローグ「そして、トヨタが本気になった――世界で加速するEVの奔流」と、その後につづく「勢力図はこう変わる――自動車メーカー・電池・素材・半導体・地図・カーシェアリング・保険」という記事は、EVビジネスの世界をとてもわかりやすく解説してくれている。しかも、単に事実関係を整理しただけでなく、しっかりとした取材に基づいた秘話も盛り込むなどしているため、読み応えも十分だ。
たとえば、トヨタが2017年の12月にEVシフトを鮮明にし、パナソニックと提携した経緯についてはこう書かれている。
“なぜトヨタは変心したのか。一つの理由はトヨタが東京工業大学などと組み、開発を進めてきた「全固体電池」の実用化のメドが付きつつあることにある”
“トヨタは東京工業大学との共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作。―中略― この電池をEVに搭載した場合、わずか3分程度で充電できる可能性がある”
“「画期的な全固体電池の技術開発が進んでいるからこそ、トヨタはEVに力を入れるようになった」トヨタの技術系のある幹部はこう明かす。パナソニックとの提携も、この全固体電池の実用化を視野に入れたものだ”
“航続距離を最大限に延ばすには、走行時の空気抵抗を減らすのが最も効く。―中略― エンジン車の場合、エンジンなどの部品で生じる熱による損失が大半で、空気抵抗による損失の割合は全体の13.3%。これがEVだと59.3%に跳ね上がる”
“目標は現行リーフ(3040kiWhのバッテリーの場合)の40%増の400㎞。―中略― バッテリーの性能を40kiWhに引き上げても、400㎞の航続距離は空気抵抗を最小限に抑えられなければ実現できない高いものだ”
“2016年暮れに近づいたある日、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)内の風洞実験設備に突如、大きな歓声が響き渡った。―中略― 風洞実験の結果、高級車並みの静粛性と航続距離の延長に欠かせない空気抵抗の抑制で、社内で設定していた厳しい目標をクリアしたばかりだった”
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