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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2022年11月11日更新
揺らぐモデル3の王座
2022年の全日本EVグランプリシリーズのレースがすべて終わった後、主催である日本電気自動車レース協会(JEVRA)事務局長の富沢久哉氏に来季の予想を聞いた。
すると「テスラ・モデル3の強さは盤石ではなくなるかもしれない」という言葉が返ってきた。
これまで薄々感じていたことと同じ内容であるが、富沢氏はある程度の確信を持って発言していた。そして、そう考える具体的な理由を三つ挙げてくれた。
① モデル3の原因不明の不調による失速が来季も起こり得る。
② 高性能のテスラ・モデルSプレイドが参戦する可能性がある。
③ 日本のメーカー系チームが爆速EVで参戦するといううわさがある。
以下は、それぞれの具体的な内容である。
整備面で課題あり
まず、①の「原因不明の不調が来季も起こる可能性」について。
レースはクルマの進化のための実験場というくらいだから、参戦する車両は一般で使用する場合と比べて痛むのが早い。わずか1~2年で不具合が出ることもある。事実、今季はモデル3の2台に不具合が出た。来季も同じような現象が起こる確率は決して低くない。
ならば、不具合が出た都度、修理すればいいわけだが、レポート②にも書いたように、バッテリーやモーターそしてプログラムといった主要部位がブラックボックス状態になっているため、チームのメカニックは簡単には手を出せない。
メーカー側に修理・整備を頼むとしても、日本においてテスラ車は、基本的には全国14カ所のサービスセンターでしか修理・整備が行えず(※)、スピーディな改善は難しい。しかも、サーキットを走る車両は保証の対象外となる可能性が大きく、その場合は修理費がかなり高額なものとなってしまう。
※他の自動車整備工場などで修理・整備を行った場合は、問題が発生した際の補償の適用範囲が変わる可能性がある。
ある意味、メカニック的には八方塞がりの状態。来季のモデル3は、マシンのポテンシャルやドライバーの力量、メカニックの技術力とは関係のない部分で、結構危ういのである。
1020馬力の脅威
続いて、②の「モデルSプレイドがレースに出場する可能性」についてだが、これは、最終戦のピットでインタビューしたKIMI選手からしっかり言質が取れている。
同選手はこう語っている。
「すでにモデルSプレイド購入のオーダーを入れたけれど、製造が遅れているらしく、まだ納車されていない。来季、手元に来れば、すぐにこのレースに参戦するつもりでいます」
ちなみに、モデルSプレイドの最高出力は1020馬力で、0-100㎞/h加速は2.1秒(ロールアウトを差し引いた値)と、モデル3を大きく上回る性能を誇る。
レースで問題となるバッテリーの熱ダレを防ぐシステムがどうなっているか気になるところだが、モデル3より悪いとは考えにくい。上をいくことはあっても下回ることはないだろう。
これが参戦してきたら、モデル3の王座が安泰でなくなるのは、ほぼ間違いないといえる。
レース仕様の国産EV!?
最後は、③に挙げた「日本のメーカー系チームが爆速EVで参戦する」といううわさについてである。しかし、詳細について、富沢氏は奥歯に物が挟まったような言い方しかしてくれなかった。「もしかしたら、秘匿義務があるのかもしれない」と我々は勘ぐるのだが、そうだとしたらむしろ真実味が増す。
「参戦するかもしれないメーカー系チームが、トヨタ系なのか日産系なのか三菱系なのかホンダ系なのか、はたまたスバル系なのかは、今のところなんともいえません」
「参戦時期もわからない。来季、全戦出るのかスポット参戦なのか……」
「ただ、参戦するときは『打倒テスラ車』を掲げてレースに臨むことは間違いないようです」
「だから、投入するマシンは相当高品質・高性能で高速な1台になることでしょう。もしかしたら、スペシャルなレーシングEVになる可能性も考えられます」
2012年の全日本EVグランプリシリーズでは、日産系のニスモが、レーシングマシン化したリーフを投入して、当時参戦していたテスラ・ロードスターを打ち負かしている。ああいったシーンが来季は見られるかもしれない。
これが本当のことなら、モデル3勢は、ノンプレッシャーの状態での常勝を諦める必要がある。勝てるとしたら、それこそギリギリの白熱のバトルを制してのことになるだろう……。
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