日野浦剛のイラストレーション「一世を風靡したクルマたち」展（７）

ロータスタウンのクルマ好きが集う「タウン・ギャラリー」。これまで数々のクルマ情報誌や自動車メーカーのツールにクルマを描き続けてきた、イラストレーター日野浦剛さんが往年の名車を描いた「一世を風靡したクルマたち」展。今回は、日本が生み出した2台の個性的なスポーツカーです。



MAZDA COSMO SPORT
“夢のエンジン”といわれたロータリーエンジンを生み出したドイツのフェリックス・ヴァンケル博士とNSU社は、ただし量産のための技術開発には苦しみました。1961年2月、社長の松田恒次のリーダーシップのもと、東洋工業株式会社はNSU社およびヴァンケル博士と技術提携契約を結びます。社内から集められた47人の若手技術者たち（「ロータリー四十七士」）は寝食を忘れて開発に没頭し、「ローターの3つの頂点のアペックスシールがローターハウジング内面を異常摩耗させる」という課題を「高強度カーボン材にアルミをしみ込ませたシールを開発する」ことで克服、世界初の量産に耐えうるロータリーエンジンを現実のものにしました。
この“夢のエンジン”と、未来的なデザインを与えられたスポーツカーが『コスモスポーツ』です。そのパフォーマンスはまさにセンセーショナル！491cc×2の小排気量ながら、最高出力110PS、最高速度185km/h、0-400m加速16.3秒という驚異的なスペックをたたき出したのです。しかも、ロータリーエンジンの静粛性は、当時のレシプロエンジンの常識を破るものでした。コスモスポーツは、当時のスポーツカーとして類のない月間30台前後の販売を実現。1972年まで生産が続けられ、総販売台数は1176台でした。

 



TOYOTA2000GT
「幻の名車」という言葉がぴたりと似合う国産スポーツカー『トヨタ2000GT』。日本の自動車業界が飛躍を遂げた1960年代、クルマは人々の夢を膨らませる憧れのアイテムでした。そして、それに拍車をかけたのがモータースポーツの勃興です。いわゆる大衆車ではないスポーツカーへの関心が高まり、日産自動車のフェアレディや本田技研工業はSシリーズなどが登場していました。
そんな中、トヨタ自動車が1967年に発売したトヨタ2000GT。それまでスポーツカーを持っていなかったトヨタが、イメージリーダーとなるスポーツカーを開発しようと、日本を代表するオートバイメーカーとなっていたヤマハ発動機と提携して共同開発したモデルです。シャーシやスタイリング、その他4輪車の機能はトヨタが主に担当し、ヤマハは得意のエンジン技術でトヨタ製の量産エンジンを改良してDOHC化を行いました。
そして、「日本車史上最も美しい」と賞賛されるフォルムと、最高速度220km/h、ゼロヨン加速15.9秒という動力性能を持つ名車が誕生したのです。
トヨタ2000GTは、ヤマハへの生産委託で製造され、1967年から販売終了の1970年まで337台が生産されました。

「一世を風靡したクルマたち」展（１）
「一世を風靡したクルマたち」展（２）
「一世を風靡したクルマたち」展（３）
「一世を風靡したクルマたち」展（４）
「一世を風靡したクルマたち」展（５）
「一世を風靡したクルマたち」展（６）
「一世を風靡したクルマたち」展（７）

【作家紹介】

日野浦剛：1952年生まれ。1975年頃から、フリーのイラストレーターとなる。マガジンハウス、小学館、ソニーレコードなどでイラストを制作。また、多くのクルマ雑誌の誌面を飾ってきた。現在はイラスト制作の傍らデザイン学校で後進の指導にもあたっている。