「街と車」　～　「NAVI」表紙写真ストーリー　 Vol.0

　写真・初沢克利

「パリ１区、サントノーレ界隈」

この写真を見て「NAVI」という車雑誌を思い出した人が何人いるのか気になっている。「NAVI」は1984年に創刊され2010年に休刊した伝説の車雑誌である。車好きの人なら一度は手に取ったことがあるのではないだろうか。
写真家、初沢克利氏は「NAVI」の表紙を10年以上撮り続けた。
「ひとりの写真家が10年以上、雑誌の表紙を撮り続けたのはめずらしいことです」
後に初沢氏はそう語っている。
「NAVI」は「ライフスタイル」と「車」、それまでの車雑誌とは全く違うコンセプトで創刊された。二玄社には「CG（カーグラフィック）」という車雑誌があり差別化する必要があったのだ。
「CG」で写真家として活躍していた初沢氏は写真スタジオに「NAVI」の創刊スタッフたちが新雑誌立ち上げの相談に来た時から関わっている。
初沢氏は70年代にパリで写真家として広告界で活躍し、パリのカフェ「Le Select」を舞台にした写真集『MONTPARNASSE』を発表している。カフェに集う人々の喜怒が表現されたポートレートはどれも素晴らしい。
「日本車のデザインはパリの人たちの強さに負けてしまう。外国車のデザインはそれに負けない美しさがある」
「NAVI」の表紙写真はパリで撮られている。車雑誌の表紙写真は雑誌のなかでとりあげられている車の写真が掲載されるが、「NAVI」は全く違う車が表紙を飾っていた。
「街」と「車」、それがテーマだった。
今回の写真は「パリ１区、サントノーレ界隈」で撮影されたもので、1994年6月号の表紙になっている。

月ごとに「NAVI」の表紙で使われた写真を中心に紹介していきたい。
文章を書くのは著書に漫画評論『少女マンガに片思い』などがある元文芸誌副編集長の渡辺久浩である。写真の話、「車」と「街」のショート・ストーリーなど初沢氏の写真とのコラボレーションになる。
紹介した写真は購入することができるので、購入希望の方は「写真購入案内」を参考にしてもらいたい。
（文・渡辺久浩）