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JEVRAに聞いた「EVレースの楽しみ方」(前編)世界に先駆けてはじまった全日本電気自動車グランプリシリーズ!

2020年5月25日更新

画像提供:JEVRA(以下同様)



あまり広くは知られていないが、日本では全日本電気自動車グランプリシリーズという本格的なEVレースが開催されている。これは、いったいどんなレースなのか? 今回われわれは主催者であるJEVRA(日本電気自動車レース協会:Japan Electric Vehicle Race Association)に直接その概要や魅力について聞いてみることにした。出てきたのは想像以上に興味深い話ばかり。読めばきっとEVレースを身近に感じるに違いない!

フォーミュラEより一足早くスタート

本格的なEVレースといえば、2014年から始まったフォーミュラEが有名だ。

しかし、年間シリーズで行われるEVレースという意味では、これは世界初のものではない。

世界初は日本発。2010年に始まった全日本電気自動車グランプリシリーズ(通称:全日本EVグランプリ)こそが、世界で初めて行われたシリーズ制EVレースという栄誉をまとっている。

事実、フォーミュラE開催前の2012年、後にその運営に携わるイギリスの企業の役員が来日し、既に開催されていた全日本電気自動車グランプリシリーズの運営の実態をつぶさに調査していったというエピソードも残っている。

片や電動フォーミュラカーが市街地コースを走り、片や市販EVを主体とした車両がサーキットを走るという違いはあるが、全日本電気自動車グランプリシリーズは知る人ぞ知るEVレースの魁で、知る人レベルでいえば世界中にその名と価値が轟いているのである。

全7戦、8クラスのEVが覇を競う

この“歴史ある”全日本電気自動車グランプリシリーズ。開催11回目となる今年2020年は、主に東日本の各サーキットを舞台にして全7戦が行われる。

◎2020全日本電気自動車グランプリシリーズのレーススケジュール
第1戦 5月30日(日) 公式予選・決勝50㎞レース 袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)

第2戦 6月21日(日) 公式予選・決勝50㎞レース 筑波サーキット(茨城県)
第3戦 7月5日(日) 公式予選・決勝50㎞レース スポーツランドSUGO(宮城県)
第4戦 8月9日(日) 公式予選・決勝55㎞レース 筑波サーキット(茨城県)
第5戦 9月12日(土) 公式予選・決勝55㎞レース 袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)
第6戦 10月4日(日) 公式予選・決勝60㎞レース 筑波サーキット(茨城県)
第7戦 11月14日(土) 公式予選・決勝50㎞レース 富士スピードウェイ(静岡県)

※上記のレース開催については、新型コロナウイルス感染防止の観点から無観客開催や開催延期・期日変更などの措置が取られる場合があります。詳しくはJEVRA公式ホームページでの告知をご確認ください。

参戦する車両は市販EVが主だが、「電気で回るモーターだけで走るクルマのレース」というシンプルな規定のもと、コンバートEVやレーシング仕様のプロトタイプEV、さらには燃料電池車(FCV)やレンジエクステンダー車といったクルマも参戦する(エンジンで駆動可能なPHVやPHEVは参戦不可)。

これら車両はモーター出力や発電形態などを基準に8クラスに分類され、レースごとにクラス別と総合での順位が争われ、そのポイントの累積で年間チャンピオンが決められる。

◎2020全日本電気自動車グランプリシリーズの参戦車両のクラス分け
EV-1(市販車クラス:モーター最大出力201kW以上)
EV-2(市販車クラス:モーター最大出力151kW以上201kW未満)
EV-3(市販車クラス:モーター最大出力101kW以上151kW未満))
EV-4(市販車クラス:モーター最大出力101kW未満)
EV-C(コンバートクラス:エンジンをモーターに換装した車両)
EV-P(プロトタイプ・クラス:開発車両/レース専用車両)
EV-F(市販車クラス:FCV=燃料電池車クラス)
EV-R(市販車クラス:レンジエクステンダー/発電をエンジンで行う車両)

以下の写真は、過去に参戦してきた各クラスの車両の一例。かなりバラエティに富んだタイプの“モーターで走るクルマ”が出走するのがよくわかる。もちろん、それぞれを駆るチームとドライバーも多彩で、チームとしてはレーシングチーム、部品メーカーチーム、整備学校チーム、自動車ジャーナリストチーム、レースならびにEV愛好家チームなどが、ドライバーとしては現役プロレーサー、元プロレーサー、プロ志望の学生、自動車ジャーナリスト、レース愛好家、EV愛好家などが顔を揃える。

















混走のなかで生まれる下克上ドラマ

全日本電気自動車グランプリシリーズの各レースは、例年、これら8クラスの車両の混走で行われている。初シリーズの2010年から現在に至るまで、漸次増えてはいるものの、全出場車両が20台未満に留まっているためだ。

こうなると、クラスごとの競争はあるにせよ、レース自体はEV-1の大容量バッテリーを積みモーター出力が大きい市販EV、たとえばテスラ・モデルSがぶっちぎりに先頭を走り、そのままゴールするシーンばかりになるのが当然の成り行きと思われるのだが、実際はそうとも限らない。ときにバッテリー容量が少なくモーター出力がより小さいEV-2クラスの市販EV、たとえばリースe+が逆転勝利を掴むことがあったりもする。

これに関して、全日本電気自動車グランプリシリーズを主催しているJEVRA(日本電気自動車レース協会:Japan Electric Vehicle Race Association)の富沢久哉氏は、こんな風に解説してくれた。

「EVのレースはドライバーが単純にクルマのパワーに頼って走るだけでは勝てません。バッテリー、モーター、インバーターといった駆動系の熱マネジメントを的確に行える知的なドライビングも不可欠で、その働かせ方次第では逆転勝利つまり下克上のドラマの主人公になれることだって十分にある。ある意味、それがわれわれのレースの奥深い面白味となっています」

現在、JEVRAの役員には、理事長として日本フォーミュラスリー協会会長の水野雅男氏、理事としてトムス会長の館信秀氏と、モンスター田嶋の愛称で知られるレーサーで実業家の田嶋伸博氏というレース界のそうそうたるメンバーが名を連ねている。今回話を聞いた富沢氏もその理事の一人なのだが、氏は協会とレースの運営を仕切る事務局長も務めている。実は、この富沢氏こそがJEVRA設立と全日本電気自動車グランプリシリーズの開催を発起した張本人なのであった。

世界に先駆けてはじまった全日本電気自動車グランプリシリーズ!

ウサギかカメか。市販EVは限界競争の中で進化してゆく!

パワーだけでは語れない奥深いレースの魅力を感じとってほしい!

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