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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.15 妻が原付バイクの自損事故で大ケガ。えっ、自賠責で治療費はでない!?〈前編〉

2019年3月26日更新

自賠責1_web

【今回のやっちゃったストーリー】

地方に在住している共働きのMさん夫婦(夫26歳・妻23歳)は、いつか子どもを数人もち、みんなでマイホームで暮らすことを夢見ている。
なので、いまは郊外にある家賃が極めて安い1DKのアパートの一室で質素な生活をつづけている。いろいろと大変なこともあるが、なんのその、それらはすべて夢と若さのチカラで乗り切っている。
例えば、地方の郊外特有の不便な交通事情だって苦にはならない。夫は普段の足として使っている中古の軽自動車で、毎日30㎞離れたところにある会社まで通っている。妻はやはり中古で買った原付バイクで、週に4日10㎞離れたスーパーマーケットにパートとして通っている。けっこう疲れはするものの、一晩眠ればケロリとなる。
ところがある雨の日のこと、こんな健気な夫婦に突然の不幸が襲った。
勤務先のスーパーマーケットに遅刻しそうになった妻が、あまり人やクルマが行き来しない農道をいつもよりスピードをあげて走っていたところ、大きな水溜まりができている箇所でタイヤをスリップさせ転倒してしまったのだ。その際、妻は近くのガードレールに打ち付けられて腰の骨を折るという大ケガを負った。そして、倒れた原付きバイクも路面を滑っていき、やはりガードレールに衝突し大破した。
病院に運ばれた妻は全治6ヵ月と診断され、1ヵ月以上の入院の必要性を宣告された。会社を早退して駆けつけた夫は、それを聞きつつも、とにかく命が無事だったことを不幸中の幸いとして喜び、苦痛にゆがむ妻の手を握りながら、「大丈夫、大丈夫」と、妻か自分のどちらにかけているのかわからないような励ましの声をだした。
が、その1時間後、妻の事故の報告と、妻の治療費とバイクの修理代の補償のことを聞くためにバイクショップに電話したところ、まったく大丈夫ではない事実が告げられることとなった。
「Mさん、今回はまことにお気の毒でした。奥さまの一刻でも早い回復をお祈りいたします。……それで、保険のことなんですが、残念ながら原付バイクには自賠責しかついていませんでした。なので、今回、バイクの修理費はもちろん、奥さまの治療費も補償されることはありません」
夫のMさんは、電話をかけている姿勢のまま固まった。そして、もっていたスマホをスルリと地面に落とし、ディスプライのガラスをヒビだらけにさせてしまった。嗚呼、無情。

自賠責の補償対象を
知らない人が多い

原付バイク(原動機付自転車)に自賠責しかつけていなかったMさん夫婦。いったい、保険をどうしておくべきだったのでしょうか?

じつは考えられる方法は二つあります。
ただ、そのことを話す前に、そもそも自賠責(自動車損害賠償責任保険)とはどんな保険なのか、そこから見ていくことにしましょう。なぜなら世の中には、Mさんのように自賠責の補償内容を誤解している人がたくさんいて、事故のあとで補償がないと知って、茫然自失となるケースが少なくないからです。そういう人たちはみんな、のど元過ぎると熱さ忘れるではないですが、原付バイクを購入した時点で受けた自賠責の補償内容の説明をすっかり忘れてしまっているのです。それで、人間というものは、はっきりわかっていない(憶えていない)事柄に関してはなんでも自分に都合よく考えがちですから、いつのまにか「自賠責に入っていれば、いろんな補償がされるから安心」という風に誤解するに至るのです。困ったことです。

ということで、いまいちど自賠責のおさらいです。

自分に関する補償はゼロ

自賠責は、すべてのクルマ、バイク(二輪自動車・原動機付自転車)が加入すべき保険です。加入しないまま運転すると、「50万円以下の罰金または1年以下の懲役」かつ「違反点数6点の免停処分」が課せられます。

なぜ、そんな風に強制になっているのかというと、もし、人身事故を起こしたドライバーやライダーが無保険で資産がない場合、被害者(ケガ・死亡)になんの補償もされない事態となる可能性が大きいからです。そうした理不尽な悲劇をなくすために、きびしく法律で縛りをかけているというわけです。つまり、自賠責は、被害者(ケガ・死亡)に対して必ずお詫びができるようにすることを目的とした保険ということです。

で、ここが重要なポイントになるのですが、自賠責の保険料はそう高くはないため、補償はその被害者(ケガ・死亡)に対するものだけに限定されます。それ以外の補償、すなわち相手の車両、自分の車両、自分のケガに対する補償は一切ありません。Mさんをはじめとする多くの人たちは、この点を忘却・誤解しがちとなるのです。気をつけましょう。

自賠責保険の保証内容web

なお、自賠責による被害者(ケガ・死亡)への補償はあるにせよ、最低限の補償しかでません。たとえば相手に後遺症が残ったり、死亡したりした場合は、すべては購いきれません。なので、自賠責は絶対に加入すべき保険ですが、自賠責だけで運転するというのも、けっこうリスキーなことといえるのです。

自賠責保険の保証対象we

つづく後編では、やっと本題です。原付バイク(原動機付自転車)に自賠責しかつけていなかったMさん夫婦はどうすべきだったか、それについてご紹介します。

妻が原付バイクの自損事故で大ケガ。えっ、自賠責で治療費はでない!?〈前編〉
妻が原付バイクの自損事故で大ケガ。えっ、自賠責で治療費はでない!?〈後編〉

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