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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2022年12月8日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
都内に住むTさん(61歳)は、定年後、同じ会社で契約社員として働いている。貯金はそこそこある。だが、先の長いセカンドライフのことを考えれば切り詰めた生活をせねばならず、十数年乗り続けた愛車は定年と同時に手放した。普段の移動は免許を持たない妻と同じく公共交通機関を使い、月に1回程度のゴルフ行はレンタカーを利用している。
ところが最近、近所にあった24時間営業の大手レンタカー店が閉店してしまった。そのためTさんが早朝からゴルフに行くときは、2駅先の街にある24時間営業のレンタカー店までタクシーで行き、そこでクルマを借りざるを得なくなった。かなり面倒であるし、タクシー代もバカにならない。
あるとき、一緒にゴルフのラウンドをする元同僚にこのことを愚痴ったところ、彼はこんな助言をしてきた。
「確かに最近、都内の24時間営業のレンタカー店は減ってきている。だけど、代わりにカーシェアのステーションはかなり増えている。君も近所の駐車場にカーシェアのクルマが置かれているのを見たことがあるだろう。クルマを持っていない人は、最近、あれを利用しているよ。会員になれば、24時間いつでもクルマを借りられるし、料金だってレンタカーより安い。この際カーシェアに切り替えれば?」
Tさんも近所にカーシェアステーションがあることは知っていたが、年齢を重ねるとともに新しいことをはじめるのが億劫になっていて、なかなか利用に踏み切れなかった。しかし、もう背に腹は代えられない状況。Tさんは、助言を得た翌日に思い切ってホームページから会員申し込みを行い、スマホに専用アプリをダウンロードした。
ホームページには、レンタカーと同様の保険が付いていることが明記されていたので、結構安心できた。気になる料金は、長時間&長距離利用となると安いレンタカーとあまり変わらない額だったので「なあんだ」と思ったが、ガソリンを満タンにして返す必要がないとのことで、トータルではまあまあお得だと思った。Tさんの場合、さらにレンタカー店まで行くタクシー代も節約できるのだ。
ということで、次のゴルフ行のとき、Tさんはついに近所の駐車場にあるカーシェアステーションで、予約していたクルマを借り出した。ドアを解錠するときにアプリの操作にちょっとだけ手間取ったが、なんとか無事に乗り込めた。
乗り込んだクルマは年式は少し前のものだったが、料金の割に満足いく1台と思われた。ただ、ハンドルが妙にねちゃねちゃしていて、ちょっと気持ち悪かった。前に借りた人がちゃんと掃除をしていなかったようだ。仕方がないので、Tさんは備え付けの除菌シートでハンドルをごしごし拭いてからスタートした。
「レンタカーみたいに従業員が丁寧に掃除してくれるわけじゃない。安いから仕方ないのかな……」
80㎞離れたゴルフ場には、休息を挟んで約2時間で着いた。走行中は特に支障を感じなかった。Tさんは「これからはカーシェアかな」と思うまでになった。一緒にラウンドした元同僚も「な、安くて便利だろ? これで頭の固い君も時代の流れに乗ったことになるな」とからかいながら喜んでくれた。
帰路も順調だった。ゴルフ場から自宅近くのカーシェアステーションまで無事にたどり着き、Tさんは楽しい1日を終えた。
ところが、3日後、カーシェアの管理会社からこんな連絡がきた。
「返却時にルームライトの消し忘れがあり、バッテリーが上がっていました。そのペナルティ料金をお支払いください」
駐車後、次に乗る人のことを考えて車内の清掃を念入りに行ったのだが、そのときつけたルームライトを消し忘れたまま帰ってしまったのだ。
何てことだ!
ペナルティ料金は結構高かった。レンタカー料金との差額は軽く吹っ飛んでしまった。後日、Tさんはこう独りごちた。
「レンタカー店のクルマなら、こんなことは決して起こらなかったはず。結局、カーシェアって無人のサービスだから、利用者にいろんなしわ寄せがくるんだな」
その後、Tさんがゴルフに行くときは、2駅先の街にあるレンタカー店を利用するようになったのであった。
急進するカーシェア利用
所有から共有へ――。
最近、マイカーを持たない人たちが徐々に増えています。それに伴い、少なからぬ人たちがレンタカーおよびカーシェアリングサービス(カーシェア)を利用するようになっています。
特にカーシェア利用の伸びは急で、この勢いは、今後も続くと見られています。
カーシェアの大きな伸びを支えているのは、都市部におけるカーシェア事業会社の活発な動きです。
例えば、東京都内で主要5社(タイムズカー、カレコ、オリックスカーシェア、カリテコ、ホンダエブリゴー)が設置しているカーシェアステーション数は、2022年9月現在で約7,600拠点にも上っています(「カーシェアリング比較360°」調べ)。
逆に都市部での世帯当たりの自動車所有率は減少傾向にあり、全国平均が1.037台で「1世帯に約1台」であるのに対して、東京都は0.422台で都道府県中最下位、大阪府は0.633台で下から2番目になっています(2021年、一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)。
まさに、都市部ではマイカーを持たず、クルマは必要なときにカーシェアして利用するというライフスタイルが定着しつつあるのです。
カーシェアのトラブル増加
ただ、カーシェアもいいことばかりではありません。利用の拡大とともに、カーシェアをめぐるトラブルが増えています。
国民生活に関する情報の提供や調査研究を行っている国民生活センターは、2021年3月、「レンタカー、カーシェアのトラブルに注意」と題したニュースリリースを発表しました。
これは、従来からあるレンタカーに加え、新しく登場したカーシェアが拡大していることを踏まえ、そのサービスを利用することによるトラブルの未然防止・拡大防止のために、注意喚起を行ったものです。
カーシェアのトラブルの中には、利用者のちょっとした手違いやうっかりから思ってもいなかったペナルティ料金が発生した……というものもあるようです。今回のストーリーでTさんがやってしまった「ルームライトの消し忘れ」はその典型です。
カーシェアにおけるトラブルと、それに関連したペナルティについて後編でレポートします。
カーシェアの車両返却時にうっかりミス。高額なペナルティ料金にビックリ!(前編)
カーシェアの車両返却時にうっかりミス。高額なペナルティ料金にビックリ!(後編)
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