ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.82(前編)もらい事故で後席乗員が大ケガ。ところがシートベルト不装着だったため治療費補償が減額に!

2023年6月19日更新

もしも_後部座席シートベルト_1-1

【今回のやっちゃったストーリー】

ある夜、Yさん(40歳・会社員)のスマホに、父が行きつけにしている小料理屋の女将から電話が入った。

「お父さま、だいぶ酔ってらっしゃいます。お迎えにきていただいたほうがよろしいかと……」

風呂上がりでビールを飲む寸前だったYさんは、すぐにジャージに着替えてクルマで小料理屋へと向かった。

店内の父は確かにベロベロで、一人で歩ける状態ではなかった。

もう70歳。ずいぶん酒に弱くなったもんだ……。そんなふうに思いつつ、Yさんは女将にお礼を言って勘定を済ませ、父をクルマの後部座席に押し込んだ。そして、強い口調で言った。

「父さん、家まで10分だからちゃんと起きててな。あと、シートベルトをしっかり締めてな」

すると父は、焦点の定まらない目を見開き、大声で反論してきた。

「何を言っとるか、ばかたれが。後ろの席の人間は、シートベルトなんかせんでええんだ。お前はそんなことも知らんのか!」

やれやれ、いつの時代の話をしてるのだか。Yさんは、相手をするのが面倒なので、シートベルトをしないままの父を乗せて家路を急いだ。が、それが大きな間違いだった。

青信号の交差点を通過しようとしたとき、右から信号を無視した乗用車がYさんのクルマにぶつかってきたのだ。シートベルトをしていたYさんは軽傷で済んだが、シートベルトをしていなかった父は大ケガを負ってしまった。

悲劇はそれだけで終わらなかった。

本来、こうしたもらい事故での過失割合は、違反した側が100%で被害を受けた側が0%になるのが普通。その例に基づけば、Yさんのクルマの修理代や父のケガの治療費などは、ぶつかってきた相手の自動車保険ですべて補償されるはずだった。ところが今回、父が負ったケガの原因の一つに「シートベルトをしていなかった」ことが挙げられたことから、父の治療費などの補償が5%ほど減額されることになったのである。

Yさんは後日、ある程度回復していた入院中の父にこの事実を告げた。

自分に過失があったと知らされた父は、ぽつりとこう言った。

「すまん。俺、もう酒はやめるわ」

いやいや、お父さん、問題は酒じゃなくてシートベルトですから!

同乗者の不装着も
ドライバーの責任

まずは、シートベルトに関する交通法規のお話から――。

2008年までは、シートベルトの装着義務があるのは運転席と助手席に乗る人だけでした。

しかし、2008年からは後部座席に乗る人も必ずシートベルトを装着しなければならなくなりました。

そのときに改正された道路交通法第71条の3には、こんな主旨のことが書かれています(原文はもっと難しい表現です)。

1.ドライバーは、シートベルトをしないで運転してはならない。

2.ドライバーは、シートベルトをしない者を乗せて運転してはならない。

これに違反すると「座席ベルト装着義務違反」になります。

ただし、違反の罰則対象はドライバーのみ。ドライバー自身が不装着のときはもちろん、助手席や後部座席に座る人のシートベルト不装着も、すべてドライバーの責任となります。

ドライバーは、自分が運転するクルマに同乗する人たちに必ずシートベルトを装着させなければならない義務があるのです。

罰則はなくても違反は違反

「座席ベルト装着義務違反」を犯して取り締まりを受けた場合、違反点数と反則金は次のようになります。

シートベルト不装着の違反点数・反則金

「座席ベルト装着義務違反」では反則金は設定されておらず、違反が「運転席」あるいは「助手席」の場合は一般道路でも高速道路でも違反点数は1点となり、「後部座席」の違反の場合は一般道路では違反点数はカウントされないが高速道路の場合は1点なる……というわけです。

「後部座席」の違反の場合、一般道路では違反点数が付かないので、「一般道での後部座席のシートベルト不装着は違反ではない」と考える人がいますが、それは誤解です。道路交通法に違反していることはまぎれもない事実です(取り締まりを受けた場合は、口頭での注意を受けるはずです)。

もらい事故で後席乗員が大ケガ。ところがシートベルト不装着だったため治療費補償が減額に!(前編)

もらい事故で後席乗員が大ケガ。ところがシートベルト不装着だったため治療費補償が減額に!(後編)

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • Vol.49 保険料を安くするためにレンタカーの特約をはずしたら「もしも」の事態で大出費!(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.49 保険料を安くするためにレン…

    【今回のやっちゃったストーリー】一人息子が就職して離れた街で暮らすようになったのを機に、Rさん(48歳・会社員)は、長年の夢だった“夫婦二人だけの穏やかな田舎…

    2020.04.23更新

  • Vol.9 アンダーパス走行中に愛車が水没。脱出方法は? 車両保険の適用は?〈前編〉

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.9 アンダーパス走行中に愛車が水…

    【今回のやっちゃったストーリー】猛烈な台風が直撃して、ものすごい風雨。そんななかIさん(37歳男性・会社員)は、とくに不安を感じることなく、いつもどおり愛車の…

    2016.08.30更新

  • Vol.48 非接触事故が自損事故扱いに。ああ、オールリスクタイプの車両保険に入っておけばよかった……(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.48 非接触事故が自損事故扱いに…

    【今回のやっちゃったストーリー】「海が見たいわ」街中のカフェで、長年憧れ続けてきた年上の女性から失恋相談を受けていたQくん(20歳・会社員)、そう求められて…

    2020.02.20更新

  • Vol.44 借りたクルマが駐車中に当て逃げされた。他車運転特約が使えないって、どういうこと?(後編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.44 借りたクルマが駐車中に当て…

    前編の事例では、友人から借りたクルマを駐車場に駐車している間に当て逃げされてしまったMさんは、自分の保険に自動セットされている他車運転特約を使って修理費用を賄お…

    2019.08.20更新

  • Vol.58 交通事故傷害保険は、例えば免許返納済みの高齢者にオススメ!(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.58 交通事故傷害保険は、例えば…

    【今回のやっちゃったストーリー】都市部に住んでいるAさんは、数ヵ月前に、愛車を売り、免許も返納した。まだ68歳。別に認知機能が衰えたわけではない。足腰もピン…

    2021.01.28更新

  • Vol.35 地震・噴火・津波による被害は補償されないの?(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.35 地震・噴火・津波による被害…

    【今回のやっちゃったストーリー】ある日、海辺の街に住むFさん(24歳・看護師・独身)は、買ったばかりの愛車を駆って勤務先の病院へと向かっていた。「やっぱり新…

    2018.10.23更新

< 前のページへ戻る