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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2022年12月8日更新
もらい事故でボディが傷つけられたなどの事態となった場合、その補償について、相手方の契約する保険会社と交渉するパターンが一般的です。そして、前編のストーリーのように、被害者側が補償の内容に納得できなければ、裁判を起こすことになります。
ほとんどの判決が
「部分塗装が妥当」
もらい事故で愛車のボディが傷つけられ、保険による補償が部分塗装分なのか全塗装分なのかでもめて裁判になると、双方の陳述や証拠調べまでに一般的に6ヵ月以上を要し、そこで裁判所から和解勧告がありますが、和解できない場合にはその後に裁判所から判決が下されます。
つまり、部分塗装が相当なのか全塗装が相当なのか、ということを決めるのにそれだけの時間と手間がかかるということです。
さて、その判決ですが、結論から言えば、もらい事故によって損傷したクルマの修理として塗装を行う場合の損害賠償については、ほとんどが「部分塗装の費用の請求が妥当」という判決になっています。
その判決の背景となっている考えは以下のようなものです。
①塗装はその機能として「クルマの防錆効果と美観の保持」を担うが、(損傷したクルマの修理として)部分塗装でもその機能を回復することができる。
②今日では塗装技術が向上し、部分塗装でも再塗装したことがわかりにくく、クルマの美観を損ねるものではない。
③破損部分の修理のために全塗装を行った場合、全塗装は車体全部を再塗装するために費用が高額となり、その費用が「破損部分の修理代」として妥当と考えられない。
④全塗装を行った場合、被害車両が交通事故前より良い状態になり被害者が過剰に利得する可能性がある。
もらい事故によって損傷したクルマの修理として塗装を行う場合の損害賠償についての裁判での、判断の要点は「元の性能に戻す」ということです。よって、部分塗装によって「元の性能(=元の防錆効果と美観の保持)」に戻るのであればそれが妥当であり、その他の部分の塗装金額がかかる全塗装は妥当ではないということになるのです。
たまにある
「全塗装が妥当」
とはいえ、すべてのケースが「部分塗装が妥当」となるわけではありません。極めてレアですが、全塗装を認める判決が出ることもあります。
インターネット上に、そうした判決例がいくつか紹介されているので、その一部を以下に引用しておきます。
●全塗装を認めた判決例(※『交通事故トラブル解決ガイド』より引用)
「ベンツの中でも特に高級車とされるメルセデスベンツ500SLのオープンカーにつき、特殊塗装のため、部分塗装では色合わせが困難であり、事故車であることが時とともに一目瞭然となり、車両価値がそれだけ低下するとして、全塗装の必要性を認めました」(神戸地裁判決・平成13年3月21日)
「バッテリー液により汚損された事案につき、汚損された範囲が明確にできず、広範囲な部位にわたって飛散したため、車体の保護等のため全塗装が選択されたことに合理性があるとして、全塗装費用を損害として認めました」(東京地裁判決・平成元年7月11日)
「外観の損傷が著しく、全塗装しても部分塗装しても金額が変わらないことから、全塗装が認められました」(京都地裁判決・平成5年10月27日)
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