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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.65 クルマを手放すとき、自動車保険は中断扱いにしたほうがいい場合がある!(前編)

2021年9月3日更新

自動車保険_中断証明1

【今回の気づいてよかったストーリー】

農業を営むHさん(77歳)は、ある日、運転免許の自主返納を決断した。
これまで長年にわたり、農作業用の軽トラと私用のセダンの2台を運転してきた。だが、この頃は農作業を息子夫婦にすべて任せているので、軽トラを運転することがなくなっていた。また、1年前に最愛の妻を亡くしてからは買い物やドライブに出掛ける機会もめっきり少なくなっていた。それに加え、以前から夜間の運転中に目が効かず、素早い反応ができなくなっていることも自覚していた。そんなこんなで「もうクルマは卒業だな」と考えたのである。

返納を決意した日、Hさんは半世紀近く通い続けてきた整備工場を訪ねた。
Hさん「近く、免許を返納しようと考えておるんですわ」
担当者「あー、遂にですか。いやあ、それはそれは……。長年クルマに乗ってこられたことを考えると、少し寂しい気がしますね。でも、Hさんご自身の安全のことを考えれば賢明なご判断でしょう。どうもお疲れさまでした」
Hさん「うん、うん。それでな、今日は20年以上乗ってたセダンの廃車と自動車保険の解約をお願いしようと思ってやってきたんじゃよ。お願いできるかの?」
担当者「はい、それはもう、すべてお任せください」
Hさん「そうか、じゃあ、クルマと書類とハンコを持ってきたから、今日すぐにでもやってもらえるかの? こういうのは思い立ったが吉日じゃから」
担当者「そ、それはまた急なことですね……。でも、わかりました。じゃあ、手続きしましょうかね」

急な展開に驚きながらも、てきぱきと手続きに取り掛かった担当者。廃車の基本的な手続きが終わり、続いて保険の解約手続きを進めようとしたが、なぜか途中で手がパタッと止まった。そして、ゆっくりHさんの顔を見上げてこう言った。

担当者「Hさん、ご自宅に3人のお孫さんがいらっしゃったと思いますが、確か一番上のお孫さんは、そろそろクルマを運転される年頃じゃないですか?」
Hさん「ああ、一番上のは来年春に高校を卒業して、隣町の農協に勤めることになっておる。だから、たぶん通勤のために親がクルマを買い与えることになるんじゃろうな。なあに、心配しなさんな、ちゃんとお宅で買わせるようにさせるから。わはは」
担当者「いや、それはそれで大変ありがたいんですけど、私が言いたいのは、そういうことじゃなくてですね、Hさんの20等級の自動車保険を、解約じゃなくて中断証明書を取って中断扱いにし、来年、お孫さんがクルマを買ったときの自動車保険としてそのまま引き継げばどうですか、ってことなんです。そうすれば、お孫さんはかなり保険料が割り引かれた形で自動車保険が契約できますから」
Hさん「何、そんなことができるんか!? また、ずいぶんと気の利いた話じゃの。うーん、だったら解約は止めて中断がいいな。来年、復活させて孫への就職祝いにするわい」
担当者「ええ、きっとすごくうれしい就職祝いになりますよ。いやあ、とにかく気づいてよかった。もし解約してたら、お孫さんは6等級の高い保険料の自動車保険に入らなくちゃいけなくなるところでしたからね……」

そう、何事も思い立ったが吉日ではあるけれど、自動車保険の解約については、じっくり後先のことを検討してからのほうがよいこともあるのだ。

等級を維持したままで
契約を一定期間中断できる

あまり知られていないのですが、自動車保険には「中断制度」というものがあります。どういう制度なのか、概要をまとめると、以下のようになります。

◎なんらかの事情で所有(契約)していたクルマを手放し、運転をストップすることになった。

◎そのとき、その時点で契約していた自動車保険を解約するのではなく、保険会社が定めた一定期間(多くの場合、最大10年間)について中断扱いにすることができる。※中断証明書の発行を申請し、それを保管する。

◎再びクルマに乗ろうとするときに中断証明書を提示すれば、改めて中断時の等級で自動車保険に契約できる。

つまり、一時的にクルマを手放して運転から遠ざかるからといって、中断前の保険の実績を無に帰するのではなく、次にクルマに乗って運転を再開するときに復活させて自動車保険契約を行うというものです。

もとは海外駐在員への対応などがメイン

この中断制度は、もともと海外駐在員などをモデルケースに生み出されました。

かつて、長期間にわたって海外赴任する会社員はクルマを手放すことが多く、自動車保険も必然的に解約しなければなりませんでした。そして、彼らが海外から帰国して再び国内でクルマに乗る場合、改めて自動車保険を契約し直すと、それは最初の等級(=6等級)からの契約となってしまうのでした。

グローバル化時代の到来でそういったケースが増えるに従い、海外駐在員たちから「仕事で仕方なく日本を留守にするのに、これまで積み上げてきた等級が元に戻るというのは非常に理不尽。救済措置が欲しい」などの声が出るようになりました。

各保険会社は、こうした声を真摯に受け止め、等級を維持できる自動車保険の中断制度(=中断証明書の発行による等級のキープ、および再契約への引き継ぎ)の導入を決めたのです。

現在、この制度は企業の海外駐在員および留学生などに限らず、国内に在住する一般の契約者の利用も増えています。

たとえば、「マイカーが生活の足として欠かせない地域に住んでいた人が、一時的にマイカー維持にかなりのコストがかかり公共交通が発達した東京などに転勤するために愛車を手放し、その後数年でまた元の地域に戻って来て再びマイカーを取得する」というような場合も、この中断制度を使う場合が多いといえます。

クルマを手放すとき、自動車保険は中断扱いにしたほうがいい場合がある!(前編)

クルマを手放すとき、自動車保険は中断扱いにしたほうがいい場合がある!(後編)

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