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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

もらい事故で特殊な色のボディが傷つけられた。全塗装を求めたが……。(前編)

2022年10月27日更新

物損事故の車両塗装_1

【今回の「なんでそうなるの!?」ストーリー】

「全塗装じゃなきゃ、絶対にイヤだ!」

Sさん(35歳・会社員)は、事故を起こした相手方の保険会社から「ボディ塗装の補償は部分塗装として算定する」との連絡を受け、断固たる拒絶の意思を示した。

さかのぼること10日前。Sさんはコンビニの駐車場に愛車を駐めていた。その横に、荒っぽい運転のクルマがかなりのスピードでバックしてきたと思う間もなく、ガツンとぶつけられた。Sさんはどうすることもできず、愛車の右リアサイドはベコベコな状態となった。

過失割合はSさんが0割で相手が10割。修理にかかる費用はすべて相手方の保険会社から支払われることになった。それはそれでよかったのだが、今回、その保険会社からボディの板金塗装に関しての補償は部分塗装の分しか出せないとの連絡がきて、まったく納得がいかなかった。

「俺のクルマは国産車だけど、特別仕様車でボディカラーは特殊なパープル。部分塗装で直すと、きっと色むらが出て格好悪くなる。そんなのは許せない。絶対にボディのすべてを塗り替える全塗装で対処してもらいたい」

その後も、約1ヵ月、同様の主張を何度も保険会社にぶつけ続けた。しかし、保険会社は「今の板金塗装の技術であれば、難しい色の部分塗装でも色むらは出ないし、防錆効果なども保てる」として、頑として譲らなかった。

「もう、法廷で争うしかないな」

Sさんは、自分の自動車保険に付帯している弁護士特約を使って弁護士に依頼し、裁判に持ちこんだ。なんとしてでも相手方から全塗装の補償を出させるようにしたかった。だから、裁判所から示された和解案も承諾しなかった。

訴えから約8ヵ月後、待ちに待った判決が出た。それは、Sさんの希望に沿ったものではなかった。

「部分塗装が妥当である」

裁判所は、保険会社と同様の判断をしたのである。裁判に負けて全塗装が却下されたSさんは心底がっかりした。

「まったくもって、やられ損だよ」

結局、Sさんは8ヵ月間放置したままだった車両を自動車整備工場に入れ、もろもろの修理と部分塗装を施してもらうことにし、その分の補償を受けることにした。後は、「向上した」という部分塗装の技術に期待するしかない……。

が、話はここで終わらなかった。入庫した日の夜、工場からこんな電話が入ったのだ。
「Sさん、ボディのリアにさびが広範囲に出ています。これを落とすのは結構大変です。この分の修理代、どうしましょう?」

ぶつかった状態のまま長期間放置したために出たさびだった。Sさんは、急いで相手方の保険会社にさびを落とす費用は出るかどうかを確認した。すると「事故による損傷ではないので、それは補償できない」との回答が……。

Sさんは、半ば涙目になって「もう、踏んだり蹴ったりだ!」と天に向かって嘆くしかなかったのである。

塗装技術は進化し
向上している

いわれなき「もらい事故」に遭ったSさんには、心から同情します。

ただ、「部分塗装だと色むらが出る」と強く思い込み、全塗装の補償にこだわって無駄な時間と労力を費やしたことについては、反省すべきかもしれません。それによって、さびの発生による余分な出費まで招いてしまいました……。

自動車の修理・整備の技術が進化を続けているのに、一方でユーザーの認識が「昭和の頃のまま」であるということが時折あります。「部分塗装だと色むらが出る」という思い込みもその一つと言えるでしょう。

そうしたギャップから、今回のストーリーのように、物損の修理を部分塗装で行うか全塗装で行うかということでもめる案件はかなり存在するようです。

現在の日本の自動車整備工場の板金塗装技術は全般的にかなり進化し、向上しています。塗装においては、一般的なクルマであれば、ボディカラーが特殊なものであっても、厳密な調色と絶妙なボカシ塗装によって、周りの色との差が出ない部分塗装ができるようになってきています。もちろん防錆などの機能はしっかり保たれます。

Sさんが事故直後に、愛車を自動車整備工場に持ち込み、塗装担当のメカニックと細かいところまで相談していたら、展開は違っていたかもしれません。もしもの事態になって、「どうしよう?」と困ったときこそプロの出番です。日頃から、“かかりつけ医”のような自動車整備工場に愛車の整備を任せておけば、こうした事態になっても安心……というわけです。

もらい事故で特殊な色のボディが傷つけられた。全塗装を求めたが……。(前編)

もらい事故で特殊な色のボディが傷つけられた。全塗装を求めたが……。(後編)

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