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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.59 借りたキャンプ道具が焚き火で全焼。そんな「もしも」を保険でカバーできるの!?(前編)

2021年2月25日更新



【今回のやっちゃったストーリー】

「お父さん、キャンプ行こうよ」
Bさん(会社員・38歳)の小学校5年生の長男は、最近のキャンプブームに影響されてか、たびたびこう懇願してくる。そして、そんなときはきまって小学校3年生の長女も「キャンプ、キャンプ」と同調して騒ぎ立てる。
自然の中での家族でのキャンプはさぞかし楽しいだろうし、情操教育にも良いだろうから、連れていってやりたいのは山々だった。だが、妻も働いており、子どもたちもそれぞれ習い事などをしているので、みんなで一緒に休める連休がなかなか取れなかった。それに、キャンプに必要な装備を一式揃えるとなると20万円前後はかかるらしく、二人の子育てをしている身にはそれはそうカンタンにだせる金額ではなかった。なので、子どもたちには「うん、そのうちにな」とだけ言って、常に回答をうやむやにし続けていた。
そんなある日、Bさんは、会社の仲のいい同僚にこのキャンプおねだりの件を話し、彼の家の事情を尋ねてみた。「お前のところも子どもが二人だけど、キャンプ熱はどう?」と。
すると同僚はニヤリと笑ってこう答えてきた
「ああ、Bのところもそうなったかあ。じつはウチは去年、子どもたちのキャンプ熱に負けて、すでに体験済みなんだよ。道具は一式新品で買った。レンタルでもいいかなとも思ったんだけど、何回もやることを考えたら、そのほうが気持ちがいいし得だと思ってさ。それで実際のキャンプなんだが……最初のうちは、そりゃ楽しかったよ。家族みんなで自然の中で過ごす醍醐味っていうかさ、そういうのが心底満喫できたから。ところがだ、2回行ったらもうそれっきりになっちゃったんだよなあ。みんな満足したのか、飽きたのか、キャンプ行こうってまったく言わなくなっちまった(苦笑)……。なんならBよ、ウチのキャンプ道具、貸そうか? お前の子どもたちのキャンプ熱も一過性かも知れないからさ」
望外の嬉しい申し出だった。Bさんはその翌日の夜に、愛車で同僚の家にキャンプ道具一式を借り受けにいった。そして、家に帰ってから次の連休のみんなの予定を強引に空けさせ、キャンプに行くことを高らかに宣言した。妻は「急過ぎよ」とブツブツ言ったが、子どもたちは大喜びだった。
キャンプ当日は風はあったものの快晴。Bさん一家は昼過ぎに山裾の人気の少ないキャンプ場に着き、すぐにテントを組み立て始めた。慣れない作業ゆえにけっこう時間がかかり、気がつくと夕暮れが迫っていた。それで、じゃあ焚き火だ、バーベキューだとなり、テントそばで火を起こし、その横にバーベキューコンロを設置して持参した食材を焼きだした。
ところが、風はだんだん強くなり、焚き火の炎がテント側へと激しくなびくようになった。とても危ない状況。だが、みんな楽しいバーベキューに集中していて、そのことにまったく気が付かなかった。その結果、ほどなくテントは発火。あっという間にテントと諸々の装備が全焼することとなった。うわーっ!
焦げ臭い煙が漂うなか、Bさんも妻も茫然自失。子どもたちは大泣き。結局、Bさん一家はキャンプ場で宿泊することもなく愛車で深夜の帰宅と相成ったのであった……。
燃えてしまった同僚のキャンプ道具一式については、本人は「もうほとんど使っていない」と言ってはいたものの、何もせずに済まされるものではない。
一応、Bさん、家族全員に自転車保険が必要なこともあってクルマの任意保険に個人賠償責任補償特約を付けていた。「もしかしたら」とかすかな期待を抱いて、保険代理店に問い合わせてみた。だが、返答はとても残念なものだった。
「Bさん、他人から借りた物を壊したときに賠償金が補償されるのは受託品賠償責任補償特約です。最近、保険会社によっては個人賠償責任補償特約の対象範囲を広げてそこまで対処している場合もありますが、Bさんが加入されている任意保険はそうなっていません」
結局、Bさんは同僚に対してキャンプ道具一式相当の現金を渡し、弁償することにした。そして子どもたちは、あの日のトラウマか、「お父さん、キャンプ行こうよ」とは二度と言わなくなっていた。嗚呼、切なすぎる。

借り物の損壊を
カバーする保険とは?

金銭の貸し借りについてはナーバスになる人が多いかも知れませんが、物の貸し借りは意外に気軽にやり取りしている場合があります。例えば、次のようなことについて、「そういえばあった」と思い当たる方も多いのでは……。

●友人の子どもの運動会にビデオカメラを借りた(逆に、自分が貸した)
●友人にフォーマルドレスとネックレスを借りた(逆に、自分が貸した)
●初めてスキーに行く友人にスキー用具を借りた(逆に、自分が貸した)
●子どもが友だちにキックボードを借りた(逆に、自分の子どもが貸した)
●近所の子ども同士でゲーム機の貸し借りをしていた

借り物を、丁寧に使ってキズなどつけずに返却したなら何事もないわけですが、Bさんのように「使い物にならなくしてしまった」とか「壊してしまった」という場合、申し訳ない気持ちになりますし、親しい関係であっても弁償する必要があるでしょう。

この「もしも」を対象にした保険が、「受託品賠償責任補償保険」です。受託品賠償責任補償保険は火災保険、自動車保険、傷害保険の特約(受託品賠償責任補償特約、受託物賠償責任補償特約)で加入することができ、保険料は一般的に年間数百円程度です。しかも、次のようにレンタル業者から借りた物もその補償対象になります。

●音楽レンタルショップで借りたDVDを割ってしまった
●レンタルショップで借りた模擬店セットを壊してしまった

Bさんのように子育て中で、レンタル品を使う可能性のある人にとっては加入を検討するに値する特約であると言えるでしょう。

個人賠償責任補償特約は
日常の事故をカバー

それに対して、Bさんがクルマの任意保険に付けていた「個人賠償責任補償特約」は、カンタンに言うと「日常生活において起こした、うっかり事故の賠償責任に幅広く対応してくれる特約」です。具体的には、次のようなうっかり事故をカバーしています。

●自転車を運転中に人と接触してケガをさせた
●飼い犬が散歩中に人にかみつきケガをさせた
●買い物中に商品を落として割ってしまった
●洗濯機の排水溝が詰まって水漏れして階下のお宅に被害を与えた
●ベランダからあやまってモノを落として通行人にケガをさせた……etc.

本サイトでの関連記事
個人賠償責任補償特約は、たった月200円ほどで日常の事故の賠償を幅広くカバー!(前編)
個人賠償責任補償特約は、たった月200円ほどで日常の事故の賠償を幅広くカバー!(後編)

Bさんがかすかな期待を抱いたように、個人賠償責任補償特約は「買い物中に商品を落として割ってしまった」など、物を壊した際の賠償金を補償してくれるので、「借り物の損壊もOKか?」と思いがちです。

しかも、Bさんの任意保険を扱っている保険代理店の担当者が言っていたように、最近、保険会社によっては個人賠償責任補償特約の対象範囲を広げて受託品賠償責任補償特約の対象までカバーする動きがあり、両者の関係が判然としないところがあります。

そこで、後編では個人賠償責任補償特約と受託品賠償責任補償特約にまつわる最近の動きを要約するとともに、借り物の損壊などに備えるベターな選択をご紹介します。

借りたキャンプ道具が焚き火で全焼。そんな「もしも」を保険でカバーできるの!?(前編)

借りたキャンプ道具が焚き火で全焼。そんな「もしも」を保険でカバーできるの!?(後編)

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