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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.5 車道で自転車に接触しちゃった。やっぱりクルマ側の過失が大きいの?

2016年9月30日更新

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今回のやっちゃったストーリー

Eさん(50歳男性・会社員)は運転歴30年。
これまで壁をこする小さな自損事故を起こすことはあったし、駐車違反やちょっとしたスピード違反でキップを切られることもあった。だけど、人やクルマと接触するような事故を起こしたことはなく、重大な違反を犯したことも一度としてなかった。そのため、「自分はセーフティドライバー」という誇りに近い意識をもつまでになっていた。

しかし、ある日、その誇りに近い意識はガラガラと音を立てて崩れ落ちることとなった。

事故は、休日に近所のDIYショップまで家庭用菜園の土を買いにでかける途中で起きた。車道の左側の端を走っていたロードタイプの自転車が駐車中のクルマを避けようとし、曲がる合図もせず、急にEさんのクルマの走行ラインにまで大きくふくらんできた。Eさんは、「わ、あぶない」と急ブレーキをかけたが、まにあわず、自転車の後輪とクルマのバンパーがわずかながらも接触する事態となってしまった。

自転車は転倒するかと思いきや、なんとか持ちこたえた。幸い自転車を漕いでいた人にケガはない様子だった。

Eさん、クルマを降りて自転車のほうに駆け寄った。そしたら、自転車の精悍な若者が顔を引きつらせながらこういってきた。「おい、どうすんだよ。後輪がひん曲がっちゃったじゃないか。これ50万円する自転車なんだよ。おっさん、ちゃんと弁償しろよな」

それを聞いてEさん、瞬時に血圧があがった。でも、「人や自転車との事故では、たとえ相手が交通違反していたとしてもクルマが悪いことになるはず……。この若者のいうとおり保険で弁償しなきゃいけないんだろうな」と思い至り、反論できず、シュンとなった。同時にこれまでのセーフティドライバーとしてのキャリアが一瞬にして白紙になったことに、いうにいわれぬ寂しさを覚えた。

とりあえずEさんは警察と保険会社に連絡。薄くなった頭髪をしきりに掻き毟り、悶々としながら、事故処理が終わるのを待ったのだった。

もう自転車は交通弱者ではない?

あらら、災難でした。お互いにケガがなかったことだけは、不幸中の幸いといったところでしょうか。

ただ、それはそれとして、Eさん、これまで相手がいる交通事故を起こしたことがなかったためか、交通事故の過失割合に関しての知識が昔のまんまのようです。それがとても気になりました。

現場で心のなかで独りごちた「人や自転車との事故では、たとえ相手が交通違反していたとしてもクルマが悪いことになるはず……。この若者のいうとおり保険で弁償しなきゃいけないんだろうな」というセリフ、これ、大分違いますから。

たしかに十数年前までは、自転車は交通弱者と見なされるところがありました。だから、たとえ相手が交通違反をした事故であってもクルマのほうの過失が大きくなるというのが常識でした。でも、その常識は時とともにずいぶんと変わってきているんです。

いまは、自転車を交通弱者と見なす考え方はうすれています。クルマと同等に交通上の責任をもつ乗り物(軽車両)と見なされ、事故時には、そのときの通行状況によって適切かつ厳格に過失割合が課せられるようになっているのです

だから、このEさんのケースでは、交通違反を犯している(曲がる合図もせず、急にEさんのクルマの走行ラインにまで大きくふくらんできた)のは自転車側なので、おそらく自転車のほうの過失も大きく問われるでしょう。

このケースでは、Eさん側30%前後、自転車の青年側70%前後の過失割合になるであろうと推測できます。つまり、Eさんが自転車の修理代のほとんどを出すということは起こり得ないということです。

事故状況と過失割合のコピー

Eさん、セーフティドライバーのキャリアが白紙になってしまったのはまことに残念でした。でも、いまごろは保険会社からの説明を受け、きっとほんのちょっとだけホッとしているにちがいありません。

過失割合は判例タイムズ(判例集)を元に決められる

ところで、自転車を交通弱者として見なさなくなったのは、どうしてだかご存じでしょうか?

この質問をすると多くの人が「2015年に道交法が変わって、自転車がクルマ並みに扱われるようになったから」と答えるのですが、そうではありません。

はっきりとしたターニングポイントはないのですが、だんだん自転車はクルマと同等に扱われるようになりました。変化の一因として、自転車が起こす重大な交通事故が目立つようになってきたということが挙げられます。2015年の道交法の改正は大きなエポックですが、それ以前に世の中の状況がかわり、それに対応するように法改正が行われたというところではないでしょうか。

そもそも保険会社は、毎年出される事故の裁判の判例集「判例タイムズ」をもとにして過失割合を決めていきます。つまり、過失割合とは、常に不動のものではなくて、世間の一般常識を汲みながら変動していくものとなっているのです。

まあ、でも、われわれ一般ドライバーは、過失割合の変化をそんなに気にする必要はないでしょう。まずは、もしものときのために保険の手当てをしておくことです。そうすれば、もろもろの判断は保険会社や弁護士に任せることができます。それよりも何よりも、突然起こる道路上の変化に常に気を配り、事故を起こさないことのほうがなにより大事。これこそは不動のコモンセンスです。

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