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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.43 あおられて自損事故。自分だけが悪いだなんて、そんなのアリ?(前編)

2019年8月6日更新



【今回のやっちゃった(やられちゃった)ストーリー】

平成生まれのN君(19歳・会社員)は、平成最後の3月に免許を取り、令和となった5月に通勤用として5年落ちの中古の軽自動車を買った。本当は新時代の始まりにふさわしく、いろんな装備がついたピカピカの新車が欲しかったのだが、購入資金の援助をしてくれる昭和生まれの両親が「最初のうちはぶつけたり擦ったりしがちだから、安い中古車で十分だ。運転に慣れて、稼げるようになってから新車を買えばいい」との方針を示し、それに渋々従ったのだった。
とはいえ、N君、やっぱり親がいうように運転が覚束なかった。購入後1ヵ月の間に車庫入れでバンパーを擦ること数回。雨の日の交差点では、あわや追突事故という事態にさえ直面していた。こうしたことからN君は、新車を思いどおりに走らせるまでの運転テクニックがないことを自覚したわけだが、日々ハンドルを握りながら「3年以内に運転がうまくなって、お金も稼げるようになって、それでピカピカの新車を買って、隣に彼女を乗せて、すっごい楽しいドライブをするぞ!」と、親譲りの昭和感覚な夢を膨らませていた。
だが、そんな現実と理想の間を行き来していたある日、ちょっと信じられない事故が起きてしまう――。
残業が終わった後の会社からの帰り道、夜の空いている県道を法定速度の40キロを守って走っていたところ、数分前から後ろを走っていたセダンが急接近してきたり、パッシングしたりのあおり行為を始めた。N君、初心者マークを付けているせいか、これまでもよく似た嫌がらせを数回受けていて、「またか」とイヤーな感じにとらわれた。これまでは、ガマンして無視していればだいたい追い越していくかコースを変えるなどしてくれるので、今度もそうやってやり過ごすことにした。ところが、今回は、相手が粘着質だったせいかどうかはわからないが、無視を続けていてもあおり行為はやまなかった。パッシングはしまいにはずうっとハイビームとなり、そこにクラクションまで加わってきた。
しつこいあおり運転に次第に恐怖を感じはじめたN君は、考えあぐねて、できるだけ左側に寄って走り、ハザードランプをつけながらスピードをダウンさせることにした。それは「どうか追い越して先にいってくれ!」という切実な願いを込めた行為だった。すると、あおっていたクルマは願いどおりにスピードを上げるとN君のクルマの横に並び、そのまま追い越していくかのような挙動を見せた。「ホッ」。
ところが、ところが、ノーズが少し前に出たところで、今度はなんと衝突ギリギリの幅寄せをしてくるではないか。「えええ!」。その暴挙に慌てふためいたN君は、思わず急ブレーキをかけ、同時に相手のクルマをよけるようにハンドルを大きく左に切った。
しかし、これがまずかった。既にギリギリ左側を走っていたN君のクルマは、当然のなりゆきとしてガードレールにぶつかって壊しながら停止するハメとなってしまった。あおっていたクルマは、その悲劇をあざ笑うかのように「パパーン!」とクラクションを高らかに鳴らしながらはるか彼方へと走り去っていった。
N君、警官が駆けつけたとき、あおられた故の事故であることをしっかりと話した。警官は「なるほど、そうだったんですね」とは言ってくれたものの、なんとなくつれない感じ。そして、現場検証を終えた後にこんな見解をポツリと述べた。
「ドライブレコーダー、付けていないんですよねえ。あと、目撃者もいないんですよねえ。となるとNさん、あなたの不注意運転による自損事故とみなすしかないですねえ……」
結局、この事故はN君の過失100%の自損事故扱いとなり、ガードレールの修理代もクルマの修理代もすべてN君が加入している任意保険の対物保険と車両保険で支払うこととなった。すなわち、これから3年もの間、等級が下がった状態になって、これまで以上に高い保険料(19歳の保険料はもともと高い!)を支払うことになり、ピカピカの新車に彼女を乗せて楽しくドライブするという夢も遠のくこと必至となったのである。ああ、なんとも切ない令和の冷酷事始め。

危険ドライバーには
あおり運転の罪悪感がない!?

あおり運転が社会悪としてマスメディアで報道され、またSNSなどでも話題になっていますが、それでもあおり運転による事故がたびたび発生しています。
なぜ、あおり運転はなくならないのでしょうか。その一つの理由として挙げられいるのが、あおり運転をしてしまうドライバー(以下、危険ドライバーと称す)は、その行為について罪悪感を感じていないということです。危険ドライバーは往々にして「自分は運転がうまい」と思い込んでおり、初心者ドライバーなどが前を走っていて、思うように走行できないと、「なんでこんなにトロトロしているんだ」「なんで早くどかないんだ」とイライラとし、「悪いのはアイツだ。自分は悪くない」と自己を正当化し、あおり運転に及ぶのです。

また、危険ドライバーは、「自分は運転がうまいから、車間を詰めたり、幅寄せしても事故にすることはない」という、妙な思い込みというか、過信をしています。つまり、使い方次第でクルマは凶器になるとはまったく思っておらず、逆にクルマに乗っていることで「自分は守られている」と感じているようなのです。



N君をあおったドライバーも、おそらく前述のような特性を持った危険ドライバーだったのでしょう。あおり運転によって自損事故を起こし、100%の過失責任を負わされてしまったN君には同情しきり。そして、あおった危険ドライバーには怒りを禁じ得ません。

警察はヘリも投入して
取り締まりを強化

あおり運転の横行に対して、警察はあおり運転の取り締まりと危険ドライバーの摘発を強化しています。
これは、2018年1月に警察庁が全国の警察に出した、「いわゆる『あおり運転』等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処について」という通達に基づくものです。

あおり運転の多くが道路交通法違反(車間距離保持義務違反、進路変更禁止違反、急ブレーキ禁止違反など)を犯しており、度が過ぎれば危険運転致死傷罪(妨害目的運転)や暴行罪に該当する場合もあるわけで、警察は「これを許さない」というアクションを鮮明にしたわけです。
また、“危険性帯有者”と認められる危険ドライバーには、点数制度によらず運転免許の停止処分を下すとしています(つまり、違反点数が免許停止レベルに達しなくても、免許停止にするということです)。

《あおり運転に関係する罰則》 ※警察庁などのホームページを基に記載

●前車との車間距離を必要以上に詰める行為への罰則
車間距離不保持(道路交通法第26条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(高速自動車国道等)
5万円以下の罰金(その他の道路)

●急な割り込みや幅寄せなどをする行為への罰則
進路変更禁止違反(道路交通法第26条の2)
5万円以下の罰金
急ブレーキ禁止違反(道路交通法第24条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
安全運転義務違反(道路交通法第70条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金

●左側から追い越しをする行為への罰則
追越し違反(道路交通法第28条)
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金

●パッシング、警音器を鳴らす行為への罰則
減光等義務違反(道路交通法第52条)
5万円以下の罰金
警音器使用制限違反(道路交通法第54条)
5万円以下の罰金

●「危険性帯有者」への罰則
「自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」には、危険性帯有者として、点数制度による処分に至らない場合であっても運転免許の停止処分が行われる。

その結果、あおり運転の検挙数(主となる車間距離保持義務違反の検挙数)は、2016年の7,625件、2017年の7,133件に対して、2018年は前年比1.8倍の13,025件へと激増しました。
もともと車間距離保持義務違反での摘発の9割は高速道路上でのものですが、警察はここにヘリコプターを投入し、高速道路交通警察隊のパトカーや白バイと連携した取り締まりを展開しているということです。

こうした警察の動きは、多数派である健全なドライバーにとっては歓迎すべきもの。しかし、N君のように、一般道においてもあおり行為の被害は少ないわけではなく、警察の摘発は氷山の一角という可能性もあります。

現実として危険ドライバーはさまざまに存在し、身勝手なあおり運転を行っています。よって、交通社会を生きる健全なドライバーは、危険ドライバーの存在を前提として自らを守る術を持たなくてはなりません。

それを免許取立ての初心者ドライバーであるN君に求めるのは酷かもしれませんが……いやいや、初心者ドライバーだからこそむしろしっかり備えておくべきと言えるでしょう。

あおられて自損事故。自分だけが悪いだなんて、そんなのアリ?(前編)

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