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達人に訊く(79)電動化時代に相応しいサービスを提供。これからのロータス店にぜひご期待ください。

2022年2月10日更新

今月の達人
協同/協同バス・鈴木貴大[第5回]

達人に訊く_協同バス_top

「電気バスは持続可能じゃないと意味がない」

「EVの普及は商用EVから本格化する」

「ロータス店は電動化時代に相応しい自動車整備工場に進化している」……。

バスの電動化について、ロータスクラブのメンバーで協同バスの社長である鈴木貴大さんにお話うかがってきたこのシリーズ。最終回となる第5回目は、日本国内における電動化時代の見通しについて持論を存分に語っていただいた。

電気バスの事業は
持続可能であることが重要

——これまでのお話から、送迎バスとコミュニティバス運用事業において電気バスの導入が成功していることがよくわかりました。今後は、これをステップとして、電気バスをどんどん増やしていくのですか?

鈴木 増やすつもりではいます。ですが、どんどん増やすというわけにはいかないですね。

——それはなぜですか?

鈴木 リーズナブルとはいえ、1台2,000万円する車両を一気に増やし、今ある天然ガスで走るCNGバスと総入れ替えするというのは、やはり経営的に無理があります。それに、電気料金の体系も大きな障壁になっているんです。

——電気料金の体系、ですか?

鈴木 大雑把に言うと、電気の基本料金は過去1年間のピークの値から計算されます。30分ごとの計測で1日の中で一番高い値が選定され、1ヵ月の毎日を比べてその中で一番高い日の値が選定され、そして過去12ヵ月の中で一番高い月の値が選定される……という具合です。そして、その一番高い値から基本料金が決められてしまうんです。そして、電気をそんなに使っていない時間があっても、使っていない日があっても、ピークが高ければ高く設定された基本料金を払い続けなければいけません。電気バスをどんどん増やせば、バス対応の大容量の急速充電器を増やす必要があり、それによってピークの電力使用量は相当大きなものになるでしょう。これが、電気バスの台数を安易に増やせない大きな課題なんです。

——電気バスがいいとわかっていても、転換期のジレンマがあるわけですね。

鈴木 そういうことです。いくら環境によくて市民にも従業員にも好評な電気バスとはいえ、健全な経営状態でなければ、持続することはできません。電気バスを事業に使う者は、その辺りをしっかり押さえなければいけないと思っています。

——はい。

鈴木 ただ世の中的には、電動化は顕著になっていくはずです。久喜市では、コミュニティバスとして電気バス1台の導入に成功したことを受けて、早速、学校給食の配送トラック2台を電気で走る車両に替えたんです。おそらく、こうした波及効果が、これからも起こっていくはず。先鞭をつけた者としては非常に喜ばしく思っています。

長距離を走るバスやトラックは
FCVがいいというけれど……

鈴木社長_5

——ところで、観光バスはどうでしょうか?今後、会社が所有する観光バスを電気バスにする予定はありますか?

鈴木 今のところ予定はないです。なぜなら、現在の電気バスは、まだ観光バスに必要な航続距離が確保できていないからです。また、下部に大量のバッテリーを積むので、乗客の大きな荷物をたくさん入れられるスペースがつくれないという構造的なデメリットもあります。全固体電池などを搭載することによって電気バスの航続距離が伸び、荷室スペースも確保できるようになれば話は別ですが、現段階では観光バスはディーゼルエンジンのバスのままでいくつもりです。

——長距離を走るトラックやバスを電動化するには、水素で走るFCV (Fuel Cell Vehicle:燃料電池自動車)が適しているという説があります。観光バス用にFCVを導入する可能性はありますか?

鈴木 それも、今のところはあり得ないですね。何しろ、導入コストが非常に高いですから。ディーゼルエンジンバスは1台が2,000万円くらい。電気バスは補助金の利用でそれに近い費用で導入できました。しかし、FCVバスは1台6,000万円から1億円もする。しかも代替サイクルがたったの6年。これは水素を充填しておくボンベが脆弱化するからだそうですが、ディーゼルエンジンバスの代替サイクルが10~15年であることを考えるとあまりに短すぎる。こうしたもろもろのことを踏まえると、とてもではないが事業には使えないと見ています。

——そうですか。FCVもまだまだ改善していかないと実用に向かないということですね。

業務用EVは中国製が席巻する!?

——ここから一般的なEVについてのお考えをお聞きします。今、世界のメーカーからさまざまなEVが登場していますが、今後、日本におけるEVの普及は、どのように進んでいくと見ていますか?

鈴木 今年、三菱自動車が新しい軽EVを発売するなど、EVの選択肢は広がっていくでしょう。また、若い世代を中心にSDGsに共感する人たちも増えてきているので、ある程度の普及の加速は見込めると思います。

——確かに、マーケットもユーザーも変わってきています。

K-EV concept X Style

鈴木 しかし、全体的に見るとEVはまだまだ価格が高いし、充電インフラも不十分な状況があります。しかも日本は、欧州や中国に比べて、エンジン車に対する行政の規制が緩い。そういったことを含めると、日本国内における乗用EVの普及は、本格化するまでにはまだ時間がかかりそうです。

——そうですか。

鈴木 そんななかで、EVのカーシェア事業などは可能性があるかもしれません。「マイカーとしてEVを持つのは億劫だけど、カーシェアだったら気軽に乗れるからいいよね」という人が増え、結果として街に多くの乗用EVが走るようになる……。そういう絵図がぼんやりですけど見えています。

——なるほど。では、業務用EVの普及はどうでしょう。

鈴木 これは相当なスピードで普及が本格化していくでしょう。前にも言いましたが、世はカーボンニュートラルの時代。自治体はもちろん民間企業も事業の脱炭素化に向けて積極的に動きはじめている。我々が行ったコミュニティバスのEV化などはもちろんこと、街中を走る配送トラックなどもEV化していくのは必至だと思います。事実、宅配の企業などは大量にEVを導入しようとしていますからね。

——となると、いち早くバスやトラックをEV化している中国メーカーのアドバンテージは大きいといえますね。この秋、三菱自動車はミニキャプ・ミーブの再販売を行うとのことですが……。

鈴木 すでにミニキャブ・ミーブは郵便局などに採用されていて、街中を走って活躍しています。表立って言われていませんが、利用者側の評価はそれなりに高いものがあります。だから、時代の潮流に乗って再販売するというのも頷けます。けれども、業務用EVのニーズはもっと多様です。総体的に見ると、やっぱり日本のメーカーの商用バスやトラックのEV化はずいぶん遅れています。このままだと、我々がBYD製の電気バスを導入したように、気がつけば街中は中国製EVばかりということになりかねません。私はBYD製バスの大ファンですけど、日本のメーカーにも危機感を持ってしっかり頑張ってもらいたいと思っています。

ミニキャブ・ミーブ

「いいカーライフの提供」
今後のキーになる

——最後の質問になります。今後、クルマの電動化が進むと、自動車整備工場もそれへの対応が不可欠です。電動化時代にお客さまに満足いただける自動車整備工場、すなわちロータス店の在り方についてどのように考えていらっしゃいますか?

鈴木 現在、全国のロータス店は90%以上が「次世代自動車取扱認定店』になっていて、あらゆる電動車の整備ができる態勢を整えています。まずは、これを質・量ともさらに充実させて、お客さまに大きな安心と満足を届けられるようにすることが重要だろうと思っています。

——はい。

鈴木 ですが、それで十分というわけでもありません。抽象的な表現になりますが、私は、これからのロータス店は「プロの技術でクルマを整備・点検する」だけでなく、それにプラスして「いいカーライフを提供する」ことがキーになると考えています。EVが普及したときのカーライフはどうなるべきなのか、その辺を先取りして考え、お客さまに新しい提案を行っていけるようにしたいものです。そういう未体験のことにも果敢にチャレンジすることが、今、求められているのではないかと思います。全国1,600店以上のロータス店がそうなった暁には、「電動化時代、どんとこい」になりますよ。

——これからのロータス店の進化に「乞うご期待」、ということですね。

鈴木 そうです。知ってますか? BYDの社名は「Build Your Dream(あなたの夢を築き上げよう)」の略だということを。我々ロータス店も、彼らに負けないよう、お客さまと一緒になって夢を築き上げていきたいですね。

[第1回]環境時代に対応するため、まずは天然ガスで走るCNGバスを導入しました。

[第2回]BYD社製電気バスを導入したのは、品質の高さに“大感動”したからです。

[第3回]電気で走る脱炭素のコミュニティバスは地域の方々から大きな支持を得ています。

[第4回]運転手と整備士にもやさしい電気バス。会社を明るい未来に導く頼れる相棒です。

[第5回]電動化時代に相応しいサービスを提供。これからのロータス店にぜひご期待ください。

お店紹介
協同グループ:埼玉県において自動車運送事業および自動車販売・整備事業を行う企業グループ。グループは、バス事業株式会社協同バス、整備事業の株式会社協同、貨物運送事業の大同貨物自動車株式会社から構成される。1978(昭和53)年4月15日の設立。「みなさまを笑顔にする」ことをサービスの基本として、埼玉県地域の交通インフラの一翼を担う。CNGバスに始まり、中国製電気バスの日本国内への受け入れなど、エコロジカルな交通社会の実現を積極的に図ってきた。株式会社協同は、一般向け乗用車の販売・整備を行うほか、CNGバス・電気バスなど大型車両の改造・整備も行っている。

達人に訊く_協同バス_店舗達人に訊く_協同バス_工場

《株式会社協同》
住所:埼玉県行田市佐間1-27-49
電話:048-554-2254(代)
HP(協同グループ):http://www.kyodo-g.co.jp

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