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『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』レポート(後編)ちゃんとした大人たちのノブレスオブリージュこそEV普及のカギである

2019年12月10日更新



『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』で行われた講演の多くは、各団体・企業が現在取り組んでいる電動車普及のための最新の施策などを紹介していたのだが、その中には電動車の社会貢献について言及するものも少なくなかった。

その一つがCHAdeMO協議会会長の姉川尚史氏の講演。氏は、今後の充電器の拡充施策を紹介しながら、「世の中の大人たちは地球温暖化を食い止めるためにEVに乗り替える意識とアクションを起こすべき」との論を展開していた。

以下はその姉川氏の講演から抜粋し捕捉なども加えて再編集した概略である。

子どものことを思うなら
環境にいいEVに乗り替えよう

「現状、日本には世界ナンバーワンとなる約7,000機の充電器が設置されているが、まだ十分とはいえない。われわれCHAdeMO協議会は、設置数をもっと増やすための動きを強化している。そして、この動きには既に充電器がある場所で設置台数を増やすという作業も含まれている」

「実は、世の中には充電器の設置場所が少ないという指摘のほかに、1箇所における充電器の数が少ないという不満の声もかなりある。つまり、使用者の多い高速道路のサービスエリアなどでは充電器の台数が少ないがために充電渋滞が起こりがちで、電動車オーナーの皆さんがそれを大いに不満に思っているということだ。われわれはそれを解消すべく、1年後に主要なサービスエリアに8台くらいの充電器が並ぶようにしたいと考え、実際に行動し始めている」

「とにかく、EVを普及させていくためには充電インフラの拡充は急務。少々の赤字を出してでもそれにしっかり取り組んでゆく所存だ」



「ところで、私がどうしてEVの普及が必要と考えるのかというと、やはりEVが地球環境にいい影響を及ぼすからだ」

「現在、大人たちの多くは、『これくらいの地球温暖化と気候変動ぐらいならなんとか生きていけそうなので、CO₂をたくさんだすエンジン車を乗り続けていても問題ないだろう』と思っている節がある。でも、自分の子どもや孫たちが大人として生きていく時代に起こるであろうひどい温暖化と気候変動のことを考えると、それはあまりに自分勝手で罪深い認識と言わざるを得ない」

「私は、会場にいるノブレスオブリージュ(社会的高貴さの証である社会的義務の遂行)の精神をお持ちであろうEVイノベーターの皆さんとともにスクラムを組んで、この状況を変えていきたい。おそらく変革のためにはこれからの5年が勝負。ぜひ後押しをお願いしたい」

付け加えると、姉川氏は「もし、自分の子どもが火事になった家に取り残されたら、お父さんやお母さんは火の中に飛び込んで救い出そうとする。今は、それくらい真剣に燃えさかる地球に取り残されるかも知れない子どもたちのことを考えて、行動を変える時である」という言い方もして世間の大人たちの意識変革(EVへの乗り替え)の必要性を訴えていた。それは極端な喩えではあったものの、聞く者にとってとてもわかりやすく、ストンと腑に落ちる内容となっていた。

いま、ノルウェーの少女グレタ・トゥンベリさんが発した、環境を壊し続けている大人たちへの強烈な批判の言動が注目を浴びているが、姉川氏の危機感はそこに重なるものだ。時は既に、そこまで来てしまっていると考えなければならない。

「もしも」の災害時に備え
電動車の派遣体制を整える

次は三菱自動車の百瀬信夫氏の講演の中で語られた電動車の社会貢献性について――。

このカンファレンスが開かれた日の6日前となる9月9日に、史上最強クラスの台風15号が千葉県を襲い長期にわたる大規模停電を発生させた。これを受けて国内の自動車メーカー各社は、給電装置として活用してもらうためにEVをはじめとした電動車や給電器を現地に派遣しており、三菱自動車もアウトランダーPHEVを派遣している。

講演中、その派遣の詳細については触れられなかったが、これまで三菱自動車が行ってきた災害時の電動車派遣による支援の実績と、今後もそれを確実に行えるようにするための『DENDO コミュニティサポートプログラム』についての概要が紹介された。



「三菱自動車は、2011年の東日本大震災のときに被災地にi-MiEVを提供したのをはじめとし、熊本地震(2016年)、九州北部豪雨(2017年)、西日本豪雨(2018年)、北海道胆振東部地震(2018年)のときにも被災地にアウトランダーPHEVなどの電動車を貸与し、足の確保や給電面での支援を行ってきた」

「こうした救援実績をもとにして、三菱自動車は『DENDO コミュニティサポートプログラム』をスタートさせ、地方自治体と災害時の協力協定を締結する動きを進めている」

「これまでの経験上、災害が起きた後から自治体側といろいろ取り決めを行うとなると初動が遅れてしまい、タイムリーな救援につながらないことがあり得るとわかっている。
だから、われわれは、それを防ぐために事前に各自治体と協力協定を結んでおき、災害が起きて要請があったらすぐに、事業所やディーラーから電動車の試乗車などを無償で貸しだせるようにしようとしているのである」



いち早く電動車を販売した三菱自動車は、いち早く電動車の災害時における給電支援の実績を残し、いま、それを電動車の普遍的な価値の一つとして定着させようと努めている。これもまた、ノブレスオブリージュの具現化といえるだろう。

● ● ●


今回のレポートは以上であるが、最後に姉川氏と百瀬氏の講演を聴いて思ったことを付しておきたい。

それは、EVをはじめとする電動車を普及させていくためには、走りの良さやランニングコストの安さといった現世的なメリットや、今後進むインフラの充実によって電欠の心配がなくなるといった状況の改善をアピールするだけでは不十分だということだ。
改めて「地球環境にいいクルマ」であることを訴えなければならないし、「災害時に役立つクルマ」であるという社会貢献面でのメリットもアピールし、多くの大人たちの胸の内にノブレスオブリージュを覚醒させなければならない。

そもそもエンジン車から電動車への移行を含む「100年に一度の変革」は、もっとも深い根っこのところでは、「環境保全と人類の生存」という切実な問題を背景として起きている現象なのだから。

だから、読者の皆さんが、こうしたことに「もっともだ」とうなずくならば、代替え時期に至っていないとしても、EVをはじめとする電動車への乗換えを真剣に考えてみることをお勧めする。また、場合によっては、(ガソリン車だと多少肩身は狭いが)来年のEVOCカンファレンスに参加しても良いかも知れない(事務局は、そうした参加も歓迎するとのこと)。
この記事を読むよりももっと、「ちゃんとした大人なら、自分のことだけでなく、社会や地球のことも考えたクルマ選びをすべき」という気持ちになるのは……たぶん、ほぼ間違いない。(文:みらいのくるま取材班)

『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』レポート

(前編)多彩なゲストスピーカーが登壇したEVイノベイターたちの集い

(中編)EVオーナーたちの熱気にゲストスピーカーからこぼれ話も飛び出す!

(後編)ちゃんとした大人たちのノブレスオブリージュこそEV普及のカギである

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