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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2022年10月12日更新
参加者の広がりがあっただけではない。今年の「SDGs ERK on ICE」は、競技としての深みも増していた。
今回、エキスパートクラスとマスタークラスには、さまざまなレースでトップクラスの成績を残している選手たちが複数名参加していた。彼らの走りのレベルは非常に高く、レースは例年以上に見応えがあるものとなっていた。
例えば、エキスパートクラス(カートコースでの走行経験者または公式カートレースの出場経験者対象)には、2022キッズカート全国大会のカデットクラスで1位に輝いた小学5年生の高橋佳音選手(10歳)、2022全日本EVグランプリシリーズに参戦していて9月時点でランキング1位の松波太郎選手(37歳)が出場していた。
両者は共に初の電気カート搭乗であり、初の氷上走行だったが、「さすが」とうならせるほどのマシンさばきを見せてくれた。やはり本物は違う。
彼らは電気カートによる氷上レースに、どんな感想を持ったのか。レース後に話を聞いてみた。
初めての電気カートで
加速のよさにビックリ!
まずは、お母さんと一緒に名古屋から来ていた高橋佳音選手へのインタビュー。
彼女は、1歳のときにレースカーが主人公のアニメ映画『カーズ』を観て、レースの魅力に目覚めたとのこと。その興味は長じても続き、3年前、ついに自分でもカートのハンドルを握るようになった。以降、今に至るまで、数々のレースで勝利を収めている。
今回のレースでは、同組で先行スタートしたおじさん選手たちの大人げないブロック(?)に阻まれ最終的に4位に沈んだ。だが、密集の中の走行を物ともせずトップを狙い続ける、果敢かつ精緻な走りは素晴らしく、観客の心をわしづかみにした。
——初めての氷上での電気カートのレース、どうでしたか?
高橋 楽しかったけど、思ってた以上に難しかったです。
——どういう点が難しかったのですか?
高橋 電気カートはトルクがあってすぐ加速するし、氷はよく滑る。いつものエンジンカートのレースとは違うコントロールをしなければいけないのが、すごく大変でした。
——ぜんぜん苦労しているようには見えなかったですが、やっぱり普段乗っているエンジンカートとは勝手が違うんですね。
高橋 はい。今のところはやっぱりエンジンカートのほうが運転しやすいです。でも、今回、電気カートの一瞬でトップスピードまでいってくれる加速のよさには驚いたし、面白いなって感じました。ちゃんと練習をすれば、たぶんもっとうまく走れて楽しめるようになると思います。
——今は、二酸化炭素の排出を抑えなければいけない時代。将来的に、クルマはエンジン車から電動車へと変わっていくと思います。おそらくレースの世界も同様でしょう。そのことについてはどう考えていますか?
高橋 うーん、楽しみかな。好きなエンジン車がなくなるのは寂しいけど、そういう(環境にいい)新しいクルマがいっぱい走るようになるのはとてもいいことだと思います。
——若いだけに頭が柔軟ですね(笑)。では、将来の夢は?
高橋 そのときにどんなクルマに乗っているかはわかりませんが、プロのレースドライバーになりたいです。
氷上レースを楽しめば
運転技量がアップする
続いて、単身でふらりと会場にやってきていた神奈川県在住の松波太郎選手へのインタビュー。
彼は、エンジン車の耐久レースをはじめとするさまざまなレースを戦ってきたキャリアの持ち主。今年のはじめからJEVRA主催の全日本EVグランプリシリーズにテスラ・モデル3で参戦しており、9月現在でシリーズランキング1位のポジションに立っている。
今回の「SDGs ERK on ICE」には「なんだか面白そう」と思って気軽に参加したという。レースは、気負いなく走って他を圧倒。なんなく同組の1位となった。
——「なんだか面白そう」と思って参加したレース。実際に走ってみた感想を聞かせてください。
松波 想像以上に面白かったです。マシンがスパイクタイヤを履いているので、思ったよりグリップした。コントロールがしやすく、気持ちよく走れましたね。
——ほかの出場者は結構テールを滑らせながらコーナリングしていました。でも、松波さんはマシンコントロールが的確で、普通にアウトからインに入る形でコーナリングしていましたね。
松波 いや、あれでも結構滑らせてたんですよ(笑)。ただ、あまり滑らせるとコントロールしにくくなるので、ほどよく滑らせた、という感じですかね。ちなみに、誰でも簡単かつ安全にテールを滑らせながらコーナリングできるというのは、氷上電気カートの大きな魅力のひとつだなと思いました。アスファルト上のエンジンカートだと、よほど技量がないと、ああはなりませんから。
——この斬新なレース、将来性はありそうですか?
松波 大いにあると思います。例えば、普段レンタルカートのレースをやっている人とか、僕らみたいなレーシングドライバーにとっては、相当ありがたい場になりますから。
——レーサーにとってありがたいとは?
松波 レーシングドライバーは、上達練習のために山奥の雪道など、低ミューの道(滑りやすい路面)に走りに行ったりするんですが、氷上なら近場でレースを楽しみながらそれができてしまう。こんないいことはないでしょう。年に1回といわず、シーズン制にして定期的に開催してほしいくらいです。
——普通のドライバーにとってはどうですか?
松波 もちろん普通のドライバーも一度走るとハマるはず。とにかく楽しい。そして、楽しんでいるうちに運転が上達している。そのことが知れ渡れば、どんどん人がやってくるんじゃないでしょうか。
——なるほど。では、最後にお聞きします。モデル3でのレースとこの電気カートのレース、松波さんにとってはどっちが面白いですか?
松波 困った質問ですね(苦笑)。同じ電動車とはいえ、まったく条件が違うので比べようがないです。ただ、モデル3はクルマの制御がバリバリに効いて、わりと何もしなくても走ってくれるところがあるけど、こっちのカートはすごくアナログで、しかも氷上なので、速く走れるかどうかはドライ
バーの腕次第というところが多分にあります。なので、運転する面白さという点ではこちらに軍配が上がるかもしれません。さっきお話ししたことと同じになりますが、楽しくドライビングの上達を目指す人たちには、この「SDGs ERK on ICE」は最適といえるんですよね。
さまざまなレースを戦い、EVレースの戦いを知るレーサーにとっても、この「SDGs ERK on ICE」は希少価値の体験といえるようだ。
なお、エキスパートクラスは4名対抗戦の周回レースが6戦行われ、各レース1位の選手が優勝者として表彰された。以下は、その表彰者の面々である。みんな、本当に運転が上手だった。
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