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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年10月9日更新
独米中がCASE実現に邁進中
まずは、この本に書かれていることの受け売りから――。
2016年のパリモーターショーで、ドイツの自動車メーカー・ダイムラーがCASEという戦略を発表した。
CASEとは、Connected=つながる化、Autonomous=自動運転化、Shere&service=シェア化&サービス化、Electric=電動化のそれぞれの頭文字を組み合わせた造語で、これからのダイムラーが目指すクルマづくりの方向性を示すものとなっていた。
周囲からは、「あのベンツのダイムラーが、そこまで先鋭的になるとは!」と驚きをもって受けとめられた。だが、実はCASEは、この時点ですでにダイムラーだけのものではなかった。CASE発表前から、ドイツ、アメリカ、中国の各自動車メーカーならびにIT関連企業などが、概ねこの方向に動きはじめていた。しかも、猛烈な勢いで。
ドイツではダイムラーはじめ、VW、BMW、ボッシュ、コンチネンタルなどが……。アメリカではGM、フォード、テスラ、グーグル、アップル、Amazon、ウーバー、リフト、NVIDIA、インテルなどが……。中国では各自動車メーカー、バイドゥ、アリババ、テンセント、滴滴出行などが……。
それぞれが、それぞれの得意分野を活かしながら、CASEを体現する次世代自動車の実現もしくは関与に取り組んでいて、それがいまも活発に続いているのである。
ガラパゴス化が懸念される日本
そんな中、自動車大国である日本の各メーカーやIT関連企業などのCASEへの取り組みはどうなのか?
現状を見れば、E=電動化はまあまあ進んでいるにしても、C、A、Sの分野に関しては、残念ながら、かなり遅れを取っている模様だ。
たとえばA=自動運転化では、独米中の各企業がいきなり完全自動運転化をめざしているのに対し、日本の各企業はレベル2あたりから順次自動化のレベルを上げていく方法を採っている。
たとえばS=シェア化&サービス化では、世界各国においてライドシェアが一大産業に成長しているのに対し、日本ではタクシー業界への慮りなどから芽すらなかなか出ない状態となっている。
日本の各メーカーの現状には、携帯電話などで経験してきた日本企業のガラパゴス化を懸念させる、危険な兆しが垣間見える。
477ページもあるこの本は、こうした事実を微に入り細に入り、明かにしている。その内容は戦慄的といっても過言ではなく、読んでいるうちに「日本の自動車産業は大丈夫なのか?」といった恐れがどんどんと膨れあがっていく。
勝負の時期は2020年~2022年
しかし、著者は日本の読者を震えあがらせることだけを目的にしてこの本を書いているわけではない。ちゃんと、CASEの時代においても日本が自動車大国であり続けるためのヒントをいくつか書いてくれている(その具体的な内容については、本書を購入して、ご確認いただきたい)。
ここでは、日本が勝ち残るためのタイムスケジュール的なことだけを挙げておきたい。著者は、2020年、つまり東京オリンピックが開催されるときに、CASEを体現したクルマを社会実装すべきであるとしている。それができなければ、CASEの覇権の趨勢が決まっているであろう2022年ごろにはまったく間に合わないと見ているようなのだ。
東京オリンピックまではあと2年しかない。震えはおさまるにしても、しばらくは手に汗握る時間が続きそうだ。
『2022年の次世代自動車産業 ~異業種戦争の攻防と日本の活路』
・2018年6月1日発行
・著者:田中道昭
・発行:PHP研究所
・価格:1,150円+税
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