ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.19 高速道路上で逆走車と遭遇! どっ、どうする?(後編)

2019年3月26日更新

逆走_イラスト2

前編では、Pくんの例を元に、「高速道路における逆走」の多さと回避策について紹介しました。この後編では、万が一事故になったときの保険のことなどについてお話しします。

過失割合は100対0だが
変動する可能性もある

「高速道路における逆走」によって事故が起きた場合は、基本的に加害者(逆走した人)が100%悪いということになります。被害を受けた人の過失割合は0%です。

それ故に、被害者のケガ(死傷)に対しては加害者の自賠責保険と任意保険の対人賠償保険で補償が行われます。クルマの損傷に対しては加害者が入っている任意保険の対物賠償保険で補償が行われます。

これは、加害者が認知症の疑いのある高齢者であったとしても同様です。もし認知症と診断された場合は、責任能力が問われない可能性がでてくるので、保険の支払いにも支障がでるのではないかと心配される向きがあるかもしれませんが、そんなことはありません。免許証をもっている以上、保険的には「責任能力アリ=賠償責任アリ」と判断されることになるからです。

ただし、この加害者側100%:被害者側0%の過失割合は、どんなときでも不変というわけではありません。
もし、被害者が見通しのいい直線の高速道路上でかなり前から逆走車に気づいていたにもかかわらず適切な回避行動を取らなかったとすると、前方不注意などの責任が問われ、過失割合が変動する可能性がでてきます。
「そんな理不尽な」と思われるかもしれませんが、それが現実です。事実、過去にそうした判決が下されたこともあります。

前編で紹介したように、逆走車を発見したら、とにかくなんらかの回避行動が不可欠です。当たり前でのことですが、自分の命と財産を守るために、これは動かしがたい鉄則といえるのです。

逆走対策は個々人の心がけに帰する

さて、Pくんが遭遇した“逆走事件”に話をもどしましょう。

みなさんは、このときに逆走してしまったおじいさんには、どんな罰則が科せられたと思いますか?
幸い事故にはならなかったものの、Pくんと彼女は「きつい罰則とかがあるんだろうねえ」と推測していました。でも、ほんとうのところはいったいどうなんでしょうか?

じつは、基本的な答はこんな感じになるようです。
「事故が起こらなかった逆走ということで、道路交通法第十七条の『車両は、道路の中央から左の部分を通行しなければならない』の違反の罪だけが咎められ、違反点2点、罰金9,000円の罰則が科せられることが予想される」

「えっ」というくらに軽いです。逆走はかなり危険な運転行為だというのに、ほとんど抑止効果がないように感じられます。

ただ、どうなんでしょう、ふつうに認知能力があれば、よほどのミスか悪意によるものでない限り、あえて逆走しようという人はいないでしょう。なにしろ、前編でも紹介したとおり、「逆走事故は、死傷事故となる割合が高速道路での事故全体に比べ約5倍、 死亡事故となる割合が約40倍」という恐ろしい現実があります。また、そういう事故を起こした場合の罪はかなり重く、相手にケガを負わせたら15年以下の懲役、死亡させたら1年以上20年以下の懲役が科せられるという事実もあります。そうした認識さえあれば、抑止力は十分に働くと思われます。

※国土交通省『逆走事案のデータ分析結果』より作成

※国土交通省『逆走事案のデータ分析結果』より作成



となると問題は、やはり認知能力が低下した高齢者ドライバーによる逆走ということになります。
これを抑止するためには、事故の恐ろしさや罰則云々は、あまり関係ありません。警察は、高齢者の免許更新時に認知機能検査を実施するなどの対策も実施していますが、それで十分ということにはなりません。「不安がある」という高齢者ドライバーに向けては、本人の意思もしくは周りの家族などの説得による運転取りやめ、免許返納という方向でのPR活動が行われていますが、これも公共交通機関の少ない地方においては、高齢者の日常の足の確保という問題との両天秤で、なかなか進展が難しいところです。

結局、現時点においては、加害者となり得る人(およびその周りの人)、被害者となり得る人の別なく、すべての人が細心の注意をもって高速道路の走行に臨むしかありません。逆走は身近に起こり得ることだと考えて、今日も明日も安全運転を心がけましょう。

高速道路上で逆走車と遭遇! どっ、どうする?(前編)
高速道路上で逆走車と遭遇! どっ、どうする?(後編)

関連キーワード

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • Vol.23 若者の「うっかり無保険運転」を防ごう!(後編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.23 若者の「うっかり無保険運転…

    他人のクルマを借りるときは1日自動車保険がグッドでは、Tさんの娘のような無保険状態および悲劇を避けるためには、どのようにすればよかったのでしょうか?考えら…

    2017.10.24更新

  • Vol.88(前編)社用車を私用で使って物損事故。その損害賠償責任は誰にあるの?

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.88(前編)社用車を私用で使って…

    【今回のやっちゃったストーリー】Fくん(22歳)は、小さな広告会社の新人営業マン。会社の社員は8名で、やることが多い割に給料は安かった。だけど、好きな仕事だ…

    2023.12.26更新

  • Vol.66 自動車保険の等級が高いドライバーなら、保険の長期契約はオススメかも!?(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.66 自動車保険の等級が高いドラ…

    【今回のやっちゃったストーリー】若いころは随分とやんちゃもしたIさん(47歳・会社員)だが、妻子を持ち、役職に就いた30代半ば過ぎから「何事も慎重かつ合理的に…

    2021.09.27更新

  • Vol.26  “保険付帯”のレンタカーなのに、事故で「免責分の支払」ってなに?(後編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.26 “保険付帯”のレンタカー…

    免責5万円=自己負担5万円Wくんが思わぬ出費を突きつけられることになった「免責」については、自分のクルマをもち、任意の保険に入っている人ならだいたいのことはご…

    2017.12.26更新

  • Vol.74(後編)交通事故の過失割合が9対0に。そういう決着もアリなの!?

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.74(後編)交通事故の過失割合が…

    自動車事故の過失割合は、警察が実況見分などに基づいて決めるというわけではなく、基本的に当事者同士の話し合い(示談交渉)で決めることになります。もちろん、通常は、…

    2022.08.23更新

  • Vol.63 マイカーリースには「メンテナンスプラン」と「リースカー向け自動車保険」がオススメです!(前編)

    クルマのトラブル「もしも」マニュアル

    Vol.63 マイカーリースには「メンテ…

    【今回のやっちゃったストーリー】毎日クルマ通勤をしているFさん(35歳・会社員)は、運転があまり得意ではなく、日ごろからクルマを雑に扱いがちである。電信柱に…

    2021.06.24更新

< 前のページへ戻る