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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.8 自動車保険に未加入のドライバーが事故後の賠償から逃げだした。むむむ。

2016年9月30日更新

もしも_弁護士2
今回のやっちゃったストーリー

交差点の信号が青に変わった。Hさん(67歳男性・団体職員)はアクセルを踏んでゆるりと直進をはじめた。と、そこへ左側の道路から1台のクルマが信号を無視して交差点内に進入してきた。「わっ!」。とっさの急ブレーキ。だが時すでに遅く、2台のクルマは直角に交わる形でフロント部分を軽くぶつけ合うことになった。ガシャン!

幸いどちらにもケガはなかった。しかし、クルマの損傷は意外に大きく、Hさんのクルマでいえば、左側ヘッドライトが粉々に砕け、バンパーがひしゃげ、ボンネットとフェンダーも歪んでいた。
「こりゃ、修理代がけっこうかかるなあ……」
現場に駆けつけた警察は、事故の主原因は信号無視をした若い青年ドライバーにあるとした。当然だ。ただ、Hさんにもわずかながら前方不注意の過失があるとの指摘をしてきた。それを踏まえて保険会社も「90%対10%の過失割合で賠償が行われることになるだろう」との見解を示してきた。一瞬、「なんで交通規則をしっかり守っている自分にも過失がつくのか」と腹立たしかったが、だからといってどうにもならず、Hさんは保険会社が相手方との示談交渉をその過失割合の元で進めることを了承した。とにかく、こうした面倒は早く終わらせたいという思いが強かった。

ところがところがである。交渉がはじまった途端、保険会社から信じがたい内容の連絡が矢継ぎ早に入りだした。
「相手は対物賠償を含めた自動車保険に入っていませんでした。なので現在、本人に賠償金を払ってもらうよう交渉を進めています」→「最近、相手がなかなか電話にでてくれなくて、困っています。賠償金の支払いはちょっと遅れそうです」→「先日、ようやく話しができたんですが、『貯金はないし給料も安いので、賠償金は払えない』といいだしました」。
そして数ヵ月後には、遂にこんな連絡が。「電話もなにもまったく連絡が取れなくなりました。法的手段で解決する方法はありますが、私たち保険会社にはそれができません。すみません、いまのところお手上げです」。
な、なんということだ。いい歳をした青年が卑怯にも逃げを打つというのか? Hさん、既に支払っていたクルマの修理代数十万円の領収書を眺めながら、自身の老後資金が目減りした現実と、現代の格差社会におけるモラル崩壊の実態を同時に憂い、眉間に深い深い皺を刻んだのであった。

4人に1人以上が
対人・対物保険に未加入!

Hさんはじめ、世の多くの人は「クルマを運転する者は必ず自動車保険に入っている」と考えがちです。
でも、実態はさにあらず。下のグラフにあるとおり、かなりの割合で未加入のまま公道を運転するドライバーが存在しています。

自動車保険加入率_掲載用

※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 平成26年度」より作成



そもそも自動車保険は自賠責保険とちがって本人の意思つまり任意で加入するか否かが決められるもの。だから、自分は事故を起こさないと慢心している人や、なんらかの事情で保険料が払えない(払いたくない)人などは、ためらいなく未加入で運転することを選びます。これ、道義的にどうかと思われるところはあるものの、第三者の厳しい目で見ても法的にはなんら問題はないのです。

問題は、そういう人たちが自分が主原因の事故を起こしたあと、どういう行動にでるかです。
人間を性善説から見るなら、みんながみんな責任を感じ、どんなことをしてでも賠償金を支払ってくれることになるのでしょうが、残念ながらそうはなりません。Hさんの相手のように、[(お金がないので)賠償金の支払いを拒否する]→[連絡を取らなくなる]→[逃げる]という行動を取り、あからさまに逃げ得を図ろうとする輩が多くでてきます。なんとも悲しい話。でも、これが世の現実。Hさんも、この陥穽にはまったということです。

弁護士なら法的拘束力をもって
賠償金の支払いを迫ってくれる

では、こんな目に遭わないためには、どうすればいいのでしょうか?
答えは前回のVol.7に書いたことと同じになります。「事故後にあたふたするのではなく、万が一のときを考えて、事前に保険面で万全の手を打っておく」ことが大切です。今回のような物損事故で相手が支払いを拒否するケースでは、契約している自動車保険に弁護士費用特約=弁護士費用等補償特約(自動車)を付けておくことがもっとも合理的かつ有効な手立てとなり得ます。

弁護士バッチ

なにしろ弁護士費用特約の費用は年間わずか千数百円。これだけで弁護士が雇え(補償を受ける人1名あたりの弁護士費用は300万円まででるので、補償金との逆ざやの心配はほとんどありません)、保険会社が使えない法的手段をもって相手に賠償金の支払いを迫ることができるようになるのです。

たとえばHさんのようなケースだと、弁護士は相手に給料から分割で賠償金を支払わせる手続きを迫ることでしょう。あるいは、身辺の家財・財産などを差し押さえ、強制的に支払いをさせることになるかもしれません。とにかく、あらゆる法的拘束力を発揮して賠償金の支払いを実現させてくれるというわけです。なんとも頼もしい限り。こうしたことを考えると、弁護士費用特約、付けない理由が見当たりません。

なお、一般に、弁護士費用特約は自分の過失が0%のとき(すなわち、相手側との示談交渉に自分の保険会社がでられないとき)にしか使えないと思われている節がありますが、それは大きなまちがいです。今回のように示談交渉が保険会社が手をだせない法的領域に入った場合をはじめとし、さまざまなケースで弁護士費用特約は活用できます。人心さもしい現代においては、どのような交渉もこじれることが多くなるため、そういう意味ではかなり使いでがある特約といえるでしょう。Hさんの悲劇に思いを致しつつ、みなさんも、ぜひ付帯を前向きにご検討ください。

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