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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.72(後編)ETCレーンで急停止した前車に追突! 悪いのはどっち?

2022年12月6日更新

もしも_ETC_2

さて、ここからは事故の過失割合の話です。

前編に掲載したストーリーにおける追突事故では、カード未挿入のためにETCレーン内でクルマを急停止させた女性の過失は問われず(過失割合0%)、追突したOさんの過失割合が100%という結果でした。

つまり、女性のクルマと自分のクルマの修理費のすべてを、Oさんが負担しなければならないということです。もし事故のダメージで女性の首の状態が思わしくなく、医療機関で治療することになれば、そうした治療費をも負担することになります。

その判定にOさんは大いに不満を覚えました。「カードを挿入し忘れた彼女に過失はないのか?」という疑問に、共感を感じなくもありません。いったい、どうしてこんな割合になるのでしょうか?

原則的に追突した側が悪い

まずは一般論から見ていきましょう。

公道での追突事故では、前車が違法な走りをしていない限り、原則として追突した側(=後続車側)の過失割合が100%になります。追突した側の前方不注意が事故の直接原因と見なされ、全面的に責任が問われるわけです。法定速度を守らず、十分な車間距離をとっていなかったら、なおさらです。

追突事故の過失割合

高速道路料金所のETCレーン内での追突事故にも、この「追突した側が悪い」という原則は当てはまります。

明確な規程があった!!
「ETCシステム利用規程」

さらに、高速道路料金所のETCレーン内での追突事故では、「追突した側が過失割合100%」となる、より強固な拠り所が存在します。

それは、「ETCシステム利用規程」の存在です。この規程は高速道路会社や公社などが、国土交通省の省令に基づき定めたもので、高速道路でETCシステムを利用して走行する者は必ず守らなければならないとされています。

「ETCシステム利用規程」の中で「通行上の注意事項」を定める第8条には、「ETC車線内は徐行して通行すること」、「前車が停車することがあるので、必要な車間距離を保持すること」と明記されています。

また、「ETCシステム利用規程実施細則」の中で「徐行の方法」を示す4条は次のように記されています。

第4条 規程第8条第1項第二号及び第六号並びに第2項第一号及び第三号に規定する徐行の際は、ETC車線内で前車が停車した場合、開閉棒が開かない若しくは閉じる場合その他通行するにあたり安全が確保できない事象が生じた場合であっても、前車又は開閉棒その他の設備に衝突しないよう安全に停止することができるような速度で通行してください。

つまり、ETCシステムの運営にあたっては、「ETCレーンで前車が急ブレーキで停車する」ことや「(何かの作用で)開閉棒が上がらない」ことは想定内のことであり、ETCシステムを利用して高速道路を走る自動車のドライバーは、そうした事態が突然発生しても安全に停止することを義務付けられているのです。

ETCシステム使うなら
規程に目を通しておくべき

ETCレーンでの追突事故について、追突された前車のドライバーと追突した後続車のドライバーの主張が折り合わず、裁判所に持ち込まれた場合も、裁判官は「ETCシステム利用規程」を踏まえて判じます。だから、基本的には「追突された側 0%:追突した側 100%」となるのです。

もちろん、例外はあります。

たとえば「前車のブレーキランプが故障していて点灯しなかった」とか、「前車が他のレーンから強引に割り込んできた」といったような、著しい過失が認められた場合には過失割合が修正される可能性があります。

ただ、こうした場合でも、大前提となる徐行・車間距離保持の安全運転義務は変わらないので、基本過失割合はまず「追突された側 0%:追突した側 100%」と設定され、それに対して修正を加えるという流れになるようです(つまり、大きく過失割合が変わることはほぼないということです)。

裁判は明確な法令に基づいて判じられます。ETCの普及とともに、私たちは便利なツールといてそれを使っていますが、ETCシステムは法令や規程に支えられて運営されています。ETCを使うドライバーも、その管理下にあります。ETCシステムを使うなら、「ETCシステム利用規程」にいま一度目を通しておくべきでしょう。

ETCレーンで急停止した前車に追突! 悪いのはどっち?(前編)

ETCレーンで急停止した前車に追突! 悪いのはどっち?(後編)

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