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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.35 地震・噴火・津波による被害は補償されないの?(前編)

2018年10月23日更新

もしも_地震1web

【今回のやっちゃったストーリー】

ある日、海辺の街に住むFさん(24歳・看護師・独身)は、買ったばかりの愛車を駆って勤務先の病院へと向かっていた。
「やっぱり新車って気持ちいいわあ」
通勤途中とはいえ、気分はルンルンだった。
が、そのルンルンも突如暗転することに。助手席に置いたバックのなかのスマホから緊急地震速報のブザー音が鳴り響いたと思ったら、直後に急にハンドルが取られるような感覚があり、同時に車体が上下左右に揺れ出したのだ。
地震だ。しかもけっこう大きな揺れの地震だった。
突然のことでかなり動揺したFさんだったが、毎年行われる消防署と病院との共同防災訓練に参加しているので、慌てて急ブレーキを踏むなどという愚を犯すことはなかった。ハンドルをしっかり握り、周りの交通状況を見つつ、徐々にスピードを落としながらクルマを路肩に止めたのだった。
まだ揺れがつづくなか、すぐに外に飛びだすこともしなかった。そのまま車内に留まりラジオからのニュースに耳をすませ、状況確認することを優先させた。
すると、あまり間を置かず「震度6弱の揺れがあった」という放送があり、次には津波警報が流れてきた。
「ただちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難してください」
Fさん、これを聞いて即座にやるべき行動を開始した。ダッシュボード内にある車検証をバッグに入れ、それを手にして、近くにある高台の公園へと早足で向かったのだ。
その際、クルマのエンジンを切って窓は閉めたものの、ドアはロックせず、キーはダッシュボードの上に置いたたままにした。これも消防署との防災訓練で知ったことで、その後に行われるかもしれない救援活動において動かせないクルマが邪魔になることを避けるための必須の措置だった。
息を切らせて高台の公園に到着したFさんは、ほかの避難者とともにしばらくのあいだ事の推移を見守った。
そうしたところ、幸いにも津波は数十センチ程度のもので済んだようだった。その後に若干大きめの余震が1回あっただけで大事には至らず、ほどなく津波警報も解かれることとなった。
ホッとしたFさんは、急いで自分の愛車が置いてあるところまでもどった。既に家族と家の無事はラインで確認済みだったので、すぐに病院に駆けつけ、おそらく少なからずでているであろう地震による負傷者への対応に就くつもりだった。
ところが、ここで再び想定外の事態に直面する。
大きな本震に加えて余震があったせいか、1本の大きな街路樹が愛車の前部に倒れ込んでいたのだ。フロントウインドウは蜘蛛の巣状にひび割れ、ボンネットもべっこりと凹んでいた。もはや運転不可能な状態だった。
「ああ、わたしの新車が……」
一応、警察に連絡したが、ほかの震災被害への対応に忙しく、到着までにはかなり時間がかかるとのことだった。仕方がないので、とりあえずクルマをそのままにして徒歩で病院へと向かった。1時間ほどかけて到着したとき、病院は、やはり想像していたとおりに大わらわだった。Fさんはクルマのことを忘れるほどに忙しく、患者への対応に専念した。
警察による現場検証やクルマのレッカー移動などが行われたのは、地震の翌日のことだった。Fさんは、そのときになってはじめて保険の代理店に連絡を入れた。車両保険に入っていたので、クルマの修理代の補償が受けられるはずと考え、その手続きをお願いするためだった。
しかし、悲劇はつづく。保険代理店の担当者の答えは、Fさんの想定外のものだった。
「誠に残念なことですが、地震による被害に車両保険は適用されないのです……」
ガーン!
Fさん、その日も患者への対応に忙しく働いたのだったが、さすがにこのショックは大きかったようで、ときどき上の空となってケアレスミスを起こし、そのたびに先輩や婦長に厳しく怒られることになったのであった。

走行中に地震がきたら
どう行動すべき?

Fさんの悲劇がどうして起こったかを語る前に、大きな地震が起きたときに走行中のドライバーはどういう行動を取るべきかについてお話しておきたいと思います。

実は、今回、Fさんが取った行動こそが見習うべきものなのです。
Fさん、さすが消防署と病院の合同防災訓練に参加している看護師さんならでは…といえます。

【運転中に地震にあったら】

●揺れを感じたら

1.急ブレーキは禁物です。ハンドルをしっかり握り、前後の車に注意しながら徐々にスピードを落とし、道路の左側に停車します。

2.エンジンを切り、揺れがおさまるまでは車外に出ず、カーラジオから情報を入手します。

3.避難の必要がある場合は、車のキーは付けたままにし、ドアをロックしないで、窓を閉めます。

4.連絡先を見えるところに書き、車検証などの貴重品を持ち、徒歩で避難します。

●車での避難は、緊急自動車などの妨げになりますのでやめましょう。

※消防庁防災マニュアルより

ドアがロックされたクルマは
壊されても仕方がない

上記の項目は、地震のシーンを想像すれば、どれも納得いくものです。ですが、もしかしたら、一つだけ、3番目の項目「避難の必要がある場合は、車のキーはつけたままにし、ドアをロックしないで、窓を閉めます」については、かなり抵抗を感じる人もいるかもしれません。

「普段、クルマを離れるときは、防犯上、必ずドアをロックするというのが当たり前になっているので、それに反した行動は、どうも受け入れがたいなあ」と……。

はい、たしかに、そう思う気持ちはわかります。ロックせず、キーを付けたまま(あるいはダッシュボードにおいたまま)クルマを離れるなんて、普通はやりませんから。いや、基本、やっちゃいけませんから。

でも、それはあくまでなにも起きていない平常時での話。万が一の災害時には、そうした意識をあっさりと捨てて、ドアをロックせずにキーを付けたままにするという行動がセオリーとなるのです。

理由はカンタン。Fさんが意識したように、「その後に行われるかもしれない救援活動において、動かせないクルマが邪魔になることを避けるため」です。

もし、ドアがロックしてあるクルマが公道を塞ぎ、救援活動の邪魔になるようであれば、多くの人命が危機に瀕することになります。それは決してあってはならないことでしょう。

ですから、たとえば今回の事例のような大きな地震があったとして、実際にそんなクルマが公道に置かれていたとしたら、おそらく救援部隊によって無理矢理にでも移動されることになるでしょう。しかし、それはあくまで人命優先の正当な行為。愛車がどんなになったとしても、ドアをロックした状態で場を離れた人には、文句をいえる筋合いはまったくないのです。

地震国ニッポンにおいてクルマを運転するわれわれは、看護師のFさんならずとも、この3番目を含め、地震の際の取るべき行動を常に意識しておくことが大切です。今日からでも、遵守することを自身の心に固く誓いましょう。

地震・噴火・津波による被害は補償されないの?(前編)

地震・噴火・津波による被害は補償されないの?(後編)

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