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クルマのことならなんでもガイド
2019年4月9日更新
今月の達人
大村モータース・山中剛
これまで主にガソリン車のバッテリーに関して解説してきましたが、今回はハイブリッド車やPHEVといった次世代車に付いている『補機用バッテリー』に関するお話です。
モーターに電力を送るメインバッテリーとは違って、小さくて車体の片隅に隠れるように搭載されているバッテリーですが、これが上がってしまうとメインバッテリーに十分な電力がストックされていても、クルマは1ミリも動くことができなくなるので要注意です。
最新の次世代車にも
12Vの鉛電池が載っている
皆さん、あまりご存じないようなのですが、大きなリチウムイオンバッテリーを積んでいる次世代車にもガソリン車と同様の小さなカーバッテリー(12Vの鉛電池)が載っています。
その名を『補機用バッテリー』といい、ハイブリッド車やPHEVはもちろん、かなり大きなリチウムイオンバッテリーを搭載しているEVでさえも、基本的にこれを載せていると考えてよいでしょう。
そして、それらの多くは後部座席下のプラスチックカバーに覆われたところやトランクルームなどにひっそりと収納されています。
大きなリチウムイオンバッテリーがあるのに、それとは別に補機用バッテリーがあるのはなぜなのかと疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。その理由はとてもシンプルです。次世代車の大命題である電費もしくは燃費を向上させるためです。
たとえばハイブリッド車でいうと、リチウムイオンバッテリーは主にモーターを駆動させるために使われるようになっていて、それ以外のカーナビゲーションシステムやエアコンといった機器類の作動、さらにはハイブリッドシステムの起動やECU制御に必要な電力供給は、すべて補機用バッテリーが担っています。
つまり、大きなリチウムイオンバッテリーを走りに専心させることでモーターの航続距離を延ばすとともに、エンジン駆動時間を短縮させてガソリン消費を減らしているのです。
この補機用バッテリーが上がってしまうと、ハイブリッドシステムを起動できなくなります。そのため、たとえメインバッテリーに十分な電力が残っていても、車を動かすことができません。
この一点をとっても、補機用バッテリーの重要性はお分かりいただけると思います。
『補機用バッテリー』には
ガス排出のための排気口がある
補機用バッテリーの性能は、基本的には普通のカーバッテリーと同じであるものの、構造的には少し異なっていて、バッテリー内の化学反応で発生する可燃性ガスを車外に排出できるような作りになっています。
それは排気口とホースがついているということ。冒頭で紹介したように、補機用バッテリーは後部座席の下など車内に置かれるケースが多いので、充電時に発生する可燃性ガスを車外に排出する必要があり、そのために排気口とホースが付いているのです。
もし、この可燃性ガスを車外に排出することができなければ、可燃性ガスは車内にたまり、たとえばタバコの火などちょっとした火種で引火の危険性があります。
多くの場合、補機用バッテリーには、ガスを制御(電槽内で吸収・還元)する機能とガスが発生しても社外に排出する機能(排気口とホースなど)を持った、VRLA制御弁式(一般的に密閉型と呼ばれる)のバッテリーが指定されており、普通のバッテリーでは代用できません。
補機用バッテリーの形式は、「S34B20R」「S46B24R」などのように、頭に「S」が付いていますが、これは「排気構造がVRLA制御弁式である」ことを表しているのです。
3~5年ごとの交換は
知識と技術をもつプロに任せる
補機用バッテリーの寿命はだいたい3~5年ぐらいです。その時期が近づいたら、普通のカーバッテリーと同様に交換が必要です。
そして、その交換は絶対に自動車整備のプロに任せるべきです。多くの次世代車の補機用バッテリー交換を行ってきている自動車整備の現場にいる立場から言えば、自分で補機用バッテリーを交換することはお勧めできません。
次世代車はコンピューター制御されているので、自車に適した補機用バッテリーはどれかということもECUにインプットされています。よって、違う規格の補機用バッテリーを付けるとすぐにチェックランプがつきます。作動はしますが、「補機用バッテリーがおかしい」という表示をするわけです。
また、補機用バッテリーはさまざまな機器類とつながっていますから、単純にバッテリー本体を入れ替える作業だと思っていると大間違いです。その他の機器類の作動を正常に保つには、それらの機器類のオン・オフなどを含めた正しい手順が求められます。
もっとも深刻な事態は、交換にあたっての注意や手順を知らないで、ちょっとしたミスで火花を飛ばし、高価なECUを壊してしまったというような場合です。そうなれば、修理費用はバッテリー交換費用の比ではありません。
ロータスクラブの
『次世代自動車取扱認定店』がオススメ
ところで、巷では「次世代車の補機用バッテリーは、そのクルマをつくったメーカー系列のディーラーでしか交換ができない」というあらぬウワサが流布されているようです。困った話です。
まあ、その責任の一端は自動車整備業界側にもあると思いますが……。
一時期、あまたある自動車整備工場の中には、はなから「次世代車の整備はしない」と言うところもあったと聞きます。要は、「面倒だ」という思い込みからでしょう。
われわれロータスクラブに加盟する会社の間では、「次世代車お断り」というフレーズは笑い話ですが、全体的には違ったわけです。
それが、お客さまに「自動車整備工場では、次世代車を整備できないのでは?」という意識を与えてしまったのでしょう。業界として大いに反省すべきことではないかと思います。
だから、ロータスクラブとしては、「もちろん、次世代車も大丈夫ですよ!」というアピールを行っています。
ここ数年で推進している『LOTAS次世代自動車取扱認定店制度』もその一つ。ロータスクラブ独自の(次世代車の点検・整備体制に関する)認定条件を設け、これをクリアしたロータス店を『次世代自動車取扱認定店』としてい
ます。
もちろん、すでに多くのロータス店では、さまざまな次世代車を日常的に整備しているし、補機用バッテリーの交換も当たり前のこととして行っています。
『LOTAS次世代自動車取扱認定店制度』は、これを明確化する動きと言えるでしょう。
ちなみに、メーカー系ディーラーで扱っている、“純正”と謳った補機用バッテリーの価格は、そのブランド価値も含まれているからでしょうが、通常よりは高めの設定です。高いものになると、われわれが扱っている同種の補機用バッテリーの1.5倍ほどもしたりします。
これは、「メーカーが違う」「製品が違う」というところから発生する価格差ではありません。ロータスクラブが提携する『GSユアサ』『パナソニック』の2社は、日本を代表するバッテリーメーカーですし、自動車メーカーに純正補機用バッテリーを供給してもいます。
ですから、私は、ハイブリッド車やPHEVといった次世代車に乗っていらっしゃるお客さまに、声を大にして次のように申し上げたいと思います。
ロータスクラブの次世代自動車取扱認定店で、GSユアサやパナソニックの補機用バッテリーに交換する……これこそ、コスパのいい安心・安全・快適なカーライフです!
1 カーバッテリーは安心・快適なカーライフを支える「小さな巨人」です。
2 消耗品であるカーバッテリーは「3年ごとの交換」がセオリーです。
3 「3年ごとのカーバッテリー交換」は信頼できる自動車整備工場に任せましょう!
4 カーバッテリーの寿命はクルマの乗り方で変わります!
5 「バッテリー上がり」のときのベストの対処法をお教えします!
6 『充電制御車』には『充電制御車対応カーバッテリー』を!
7 『アイドリングストップ車』には『アイドリングストップ車用カーバッテリー』を!
8 次世代車の『補機用バッテリー』は腕とコスパのいいロータス店で交換を!
9 『新☆車生活』の利用は究極のバッテリーケアに繋がります!
お店紹介
大村モータース:機械を扱うことが得意だった大村金夫氏(初代)が、1940年、地域の自転車、バイク、オート三輪車、消防車などの修理・整備を行う整備工場を創業。その後、二代目の大村勤一氏(現会長)のもとで整備工場としての実力と規模を拡充。1975年の全日本ロータス同友会設立にあたって、メンバーとなる。現在は、三代目である山中剛氏が代表となり、「自動車の販売や点検・整備を通じ、社会を円滑に動かすファンベルトの役割をはたす」をモットーに日々の活動を展開している。
住所:岡山県玉野市田井1丁目3-17
電話:0863-31-1811(代)
HP:http://ohmura-m.com
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