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世界的レーサー塙郁夫さんが語る「EVの魅力」(3) 意識改革して電気自動車ライフを楽しもう!

2017年7月25日更新

塙郁夫選手_3

スマートな運転が航続距離を伸ばす

このごろ、街中ではEVの存在感がグッと増してきています。塙さんがめざしてきたことが現実化しつつあるということですが、どのような感慨をおもちですか?

「すばらしいことです。僕のレース活動の影響なんて微々たるものでしょうけれど、わずかでもそれに組みすることができたかもしれないと思うと、嬉しい限りです」

「ただですね、みなさん、まだガソリンエンジン車の延長線上でEVを捉えているところが少なからずあるので、その意識を改革して乗ってもらえれば、もっといいのになとは思っていますが……」

それは、どういうことでしょうか?

「さっき、レースでのEVのドライビングは、ガソリンエンジン車とはまったくちがうということをお話しましたが、これは街中の走行でもいえることなんですよ。急激なアクセルワークやブレーキング、ハンドリングを控えた運転をすれば、もっともっと快適に楽しい運転ができるようになるはずなんです」

「たとえば航続距離。よく、EVは航続距離が短いのが欠点だなんていいますけど、大げさな操作をしない運転を心がければ、スピーディに走りながらも自然と距離は伸びていき、欠点が欠点じゃなくなっていくんです。みなさん、そういうところに、ぜひ気づいていただきたいですね」

「たまに、市販のEVを試乗した自動車評論家が『カタログにある数値より少ない距離でバッテリーが切れそうになる。EVはまだまだ実用的とはいえない』なんて書いたりしていますが、僕にしてみれば、それはあんたが頭をつかわない運転(=ガソリンエンジン車と同じ運転)をしたせいだ、といいたくなるわけですよ(笑)。EVは、これまでとはまったくちがう乗り物なんだから、その特性をわきまえて、スムースに、スマートに運転しなきゃダメなんです」

「ちなみに、小まめな充電習慣をつけるというのも意識改革のひとつといえるでしょうね。『ガソリンタンクが空に近くなったら満タンにする』というガソリン車の感覚のままで、EVの充電を捉えるのは間違っています。家で充電し、会社で充電し、買い物先で充電するといった感じで、満充電に近い状態であっても常に充電することを心がける。そんなふうに注ぎ足しで充電するのがEVにフィットしたやり方です。普通にそれができるようになれば、EVは航続距離が短いだなんてまったく感じられなくなるはずなんです」

アウトランダーPHEV_充電口

画像提供)三菱自動車



EVの絶対的な魅力を発見してほしい

EVの普及が進む一方で、かたくなにEVを認めようとしないドライバーも少なくありません。そういう人たちには、どうやってEVの魅力を伝えればよいとお考えですか?

「たしかに『あんな家電みたいで、おもちゃみたいなクルマのどこがいいんだ』っていう人、けっこういますよね(笑)。でも、そういうみなさんはだいたいが食わずギライなんです。なので、とにかく一度、試乗することをオススメしたいですね。きっと、ガラリと意見が変わるはずですから」

「事実、僕も、オフロードレースでは大排気量のラリーカーを駆り、普段の自家用としてポルシェをもっていたりするので、ガソリンエンジン車にはそれなりに特別な思いをもってるんですが、はじめてEVを運転したときは、雷に打たれたような大きな衝撃を受けました。いやはや、これはすごい乗り物だな、と」

アウトランダーPHEV_走り

画像提供)三菱自動車



「だって、アクセルを踏んだら、平地でも上り坂でもまるで無重力のなかを進んでいくような格別なフィールがあるんです。大げさな喩えをするならば、まるで映画の『スターウォーズ』にでてくる一人乗りの宇宙戦闘機に乗っているみたいな感じ(笑)。もう、本当に未来のクルマなんですよ。乗り物好きなら、きっとだれでも一瞬で惚れ込むはずです」

「それに、速さだってガソリンエンジン車には負けはしないんですよ。なにしろ、ちょっと大きなアンペア(電流の強さ)がかかるEVであれば、それがコンパクトカーであったとしても、0-100m競争では余裕でポルシェやフェラーリに勝ててしまうんです。おもちゃみたいなクルマだなんてバカにしている場合じゃありません」

EVを敬遠する人のなかには、『エンジンの咆哮音が楽しめないから好きじゃない』なんていう人もいるようです。

「試乗してEVのすごさを体感しても、なおそう思うというのであれば仕方ないかもしれません。でも、エンジン音のような大きな人工音がないEVは、海辺を走ると波の音が聞こえ、山を走ると木々のざわめきが聞こえてくるんですよ。そして、スピードをあげれば風の音がしてきて、走る臨場感が楽しめる。僕は、こういうところは、EVならではの音に関する大きな歓びのひとつだと思っています。ガソリンエンジン車と比較してあれこれ語るのではなくて、ぜひ、EVそのものがもつ絶対的な魅力に注目してもらいたいですね」

「そう、だから、EVを楽しむには、やっぱり意識の改革、それが大事なんですよね」

インフラ&整備工場のEV対応に期待

最後にお聞きします。今後、日本においてEVがさらに普及していくために必要なことはなんだとお考えですか?

「より性能のいいEVがでてくることもそうですが、やっぱりなによりインフラの充実でしょうね。いまの交通インフラは、ガソリンエンジン車を前提としてつくられているので、それを徐々にEV用に移行していくことは、普及のためにかなり重要だろうと考えています」

「まず、街のどこの駐車場にも、必ず充電器があるようにすべきでしょう。さらに、駐車すると非接触の状態で充電できるようになると、もっといいですよね。それから、非接触ということで考えるなら、『高速道路も3車線のうちの1車線は走りながら充電できるようにする』といったことも思い浮かびます。とにかく、EVを普及させるためのいいインフラアイデアはいっぱいあるんですよ。しかも、それらは技術的にもある程度は実現可能となってきているので、決して夢物語というわけじゃない」

「ただ、これらを実現するためには、法律や制度の改正が不可欠です。先ほどはEVを楽しく乗りこなすには、個人の意識の改革が必要といいましたが、社会や国も意識の改革が必要ということなんですね。それに、どれだけ時間がかかるのかわかりませんが、環境のために、未来の健全なモータリゼーションのために、ぜひ早期の実現を熱望します」

「そうそう、これも忘れちゃいけないな。身近なところでは、街の整備工場などが、普通にEVのメンテナンスをやってくれるようになる環境が整うというのも大事ですよね。ロータスクラブさんでは、私の『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』挑戦をサポートしてくれたのと同時期から、EVの整備ができる設備投資と人材育成に力を入れていると聞いています。そうした未来志向の変革をどんどんやっていっていただきたいと思います。期待しています」

「ということで、みなさん、EVで街を、大自然を、スマートかつ爽やかに駆け抜けましょう!」

2012_走り

 

プロフィール

塙選手プロフィール用2塙郁夫(はなわ・いくお)
1960年茨城県生まれ。高校3年生のときに『全日本オフロードレース選手権』でレースデビュー。その後も『JFWDAチャンピオンシップレースシリーズ』で10年連続チャンピオンを獲得するなど勝利を重ね、2001年に公式戦100勝を達成。また、1991年にはアメリカン・オフロードレースのビッグイベント『Baja1000』で日本人初完走(1991年)、クラス優勝(2002年)を遂げるなど、海外のオフロードレースにおいても大活躍。2009年~2014年のアメリカの『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』へのEVでの参戦と勝利は、世界中のEV熱を盛りあげる大きな要因のひとつとなった。

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