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世界的レーサー塙郁夫さんが語る「EVの魅力」(1) 大自然のなかを電気自動車で走りたい!

2019年6月27日更新

塙郁夫選手_1

2009年から2014年にわたり、アメリカの『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』というレースにEV(電気自動車)で参戦し、華々しい活躍を見せた塙郁夫選手。EVの普及期に入った2017年のいま、当時を振り返りながら、改めてEVの魅力、可能性などについて語ってもらった。

ゼロエミッション車でレースを!

▶塙さんは、2009年から20014年まで、毎年、アメリカの『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』というレースにEV(電気自動車)で参戦されています。なぜ、EVでの参戦となったのでしょうか?

「僕は、高校三年生のときから数十年にわたり国内外のオフロードレースに参戦しつづけてきました。そして、そのステージはモンゴルのゴビ砂漠やメキシコのバハの砂漠地帯など、すばらしい大自然に恵まれたところばかりで、毎回、言葉にできないほどの感動をもらってきました」

「だけど、2004年ごろから、ふと思うようになったんです。こんな美しい大地を走れるのは幸せなことだけど、たくさんの排気ガスをだしている以上、無反省に幸福感に浸っているだけではダメなんじゃないか、と。そこから僕は、環境にいいクルマでレースすることの必要性というものを強く意識しだしたんです」

「レースのことだけじゃありません。そういう美しい場所はだいたい発展途上国にあって、どの国もこれからどんどんとクルマが増えていくことが予想されていたわけですが、環境のことに敏感になっていた僕は『そうであれば、できるだけ環境に負荷のかからないクルマが増えていくべきだろう』と考えるようにもなっていました」

「それで、ちょうどそのころ話題になりつつあったゼロエミッション車であるEVの存在に関心を向けるようになっていったんです。もし、このEVでレースをして注目を集められるようになれば、レース界、そして世界のクルマ市場の風向きが変わっていくかもしれないと考え、僕は、それにトライすることを決めたのです」

初期のコンバートEV

「最初のころは自分でコンバートEVをつくり、それで国内の小さなレースを走ったりしていました。だけど、幸いにも、低燃費車用のエコタイヤを開発していた横浜ゴムさんが、僕の環境への思いに共感してくれて、いっしょに、もっとアピール力のあるレースにでようということになった。それが、アメリカで行われている『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』だったのです」

EVの長所が発揮できるパイクスピーク

▶『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』は、どんなレースなんでしょう?

「アメリカではインディ500に次いで歴史と伝統があるレースです。1916年にはじまり、昨年の2016年には100周年を迎えました」

「このレースはアメリカのコロラド州にあるパイクスピーク(Pike’s Peak)という山を舞台にして開催されていて、1台ずつが標高2,862メートルの地点から富士山より高い4,301メートルの頂上までの約20キロを、156もあるコーナーや最大勾配11%という難所をクリアしながら一気に駆け上り、そのタイムを競う内容となっています」

2011_コース

標高4,301メートルの頂上まで20キロを一気に駆け上る



2013_絶壁のコース

現在はこのように舗装されているが、路面の隣りは断崖絶壁である



▶走行距離がわずか20キロとはいえ、普通のサーキットでのレースとちがって、かなり過酷な条件に思えます。

「そのとおりです。でも、2009年当時、はじめて参戦した僕ら『チーム・ヨコハマ EVチャレンジ』は、走行距離が短いことと、過酷な条件がEVに有利に働くだろうと踏んでいました」

「そのとき投入したオリジナルのEVは、バッテリーは最新式だったものの、モーターが直流式で古く、満充電の状態でもわずかな距離しか走ることができなかったのですが、20キロであれば、余裕をもって走りきることができるという確信がもてていました」

「そして、そもそもEVは、酸素が薄くなるとパワーダウンするガソリンエンジン車とはちがって、どんなに標高が高いところのカーブや坂道でも一定のトルクで走ることができるという特性があるので、完走しさえすれば、きっといいタイムが叩きだせるだろうとの算段もできていました」

はじめてパイクスに挑んだ『チーム・ヨコハマ EVチャレンジ』

はじめてパイクスに挑んだ『チーム・ヨコハマ EVチャレンジ』



はじめてパイクスに挑んだ『チーム・ヨコハマ EVチャレンジ』

▶それで実際、いきなり好タイムをだされた。

「じつをいうと、予選のときは思わぬトラブルが頻出し、一時は顔面蒼白となっていました(苦笑)。でも、決勝までにチームがEV特有の走らせ方を会得したことで、EVのいいところが発揮できるようになり、なんとか14分50秒といういいタイムを残すことができたんです。この14分50秒というのは、それまでのEVによるコースレコードといわれる14分37秒にはわずかに及ばなかったものの、目標としていた1999年に自動車メーカー系チームがだした公式タイムを大きく上回るものでした。」

「このことで僕らは、EVはシステムさえ整えばもっといいタイムがだせるという確信をもちました。同時に周りも僕らの走りとEVの可能性に大いに注目してくれるようになり、たとえば大会運営側が翌年から『エレクトリッククラス』というEV専用のクラスをつくってくれたのは、その表れのひとつとなっています」

「そういえば、ロータスクラブさんもこの結果を受けて、翌年からのスポンサー契約を決めてくれたんですよ。なんか、僕がめざしていた世の中のEVの潮流が、このときから急に動きだした感があって、すごく嬉しかったですね」

2010_マシンサイド_ロータスマーク

ロータスクラブは翌2010年からスポンサードしている



世界的レーサー塙郁夫さんが語る「EVの魅力」

(1) 大自然のなかを電気自動車で走りたい!

(2) 電気自動車はスマートな走りで勝負する!

(3) 意識改革して電気自動車ライフを楽しもう!

▼プロフィール

塙選手プロフィール用2塙郁夫(はなわ・いくお)
1960年茨城県生まれ。高校3年生のときに『全日本オフロードレース選手権』でレースデビュー。その後も『JFWDAチャンピオンシップレースシリーズ』で10年連続チャンピオンを獲得するなど勝利を重ね、2001年に公式戦100勝を達成。また、1991年にはアメリカン・オフロードレースのビッグイベント『Baja1000』で日本人初完走(1991年)、クラス優勝(2002年)を遂げるなど、海外のオフロードレースにおいても大活躍。2009年~2014年のアメリカの『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム』へのEVでの参戦と勝利は、世界中のEV熱を盛りあげる大きな要因のひとつとなった。

 

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