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【ルポ】東京理科大で開発が進む超コンビニエンスな燃料電池車〈後編〉

2016年12月26日更新

集合写真_web

新しい学生たちとめざす
大阪城までの500㎞走破

2012年に5㎞/hにも満たないスピードで走ったSTEPS-FCVシステム搭載の燃料電池車は、2016年現在で大学構内の数十メートル長の走行路を約30㎞/hで走行できるまでになった。「もっと長い距離の走行路で走らせれば、慣性の法則も手伝っておそらく50㎞/hはでる」らしく、これはもう長足の進歩といっても過言ではないだろう。



とはいえ、まだまだ完成の領域にはまだまだほど遠いのも事実だ。水素化ホウ素ナトリウムの粉末を入れるコンパクトなカートリッジの開発や、排水および副生成物の回収と再利用の実現等々、やるべきことはたくさんある。そんななか星教授は、現状使っているシステムをブラッシュアップし、まずは長距離を継続的に走行できるようにすることを目標に研究開発を進めようとしている。

2016年時点の水素生成装置。これをブラッシュアップして長距離走行をめざす。

2016年時点の水素生成装置。これをブラッシュアップして長距離走行をめざす。



「具体的には、2020年ごろまでに千葉県の野田にある東京理科大のキャンパスから大阪城まで約500㎞を水素化ホウ素ナトリウムの粉末を無補給で走りきることをめざしています。これができれば、おそらくそこから普及への道が拓かれるだろうと考えているのです」
「現在、2012年に初走行を成功させた学生たちは博士課程に進んだ一人以外はだれも残っていません。ですが、彼らから情熱のバトンを受け継いだ若い学生たちがこのプロジェクトを熱心に進めてくれている。はい、きっと今回も成功を勝ち取ってくれるであろうと信じています」

STEPS-FCVシステムの研究開発に取り組む学生メンバー。左上から友田圭祐さん(博士後期)、相坂裕斗さん(修士2年・右上)、内藤友里さん(学部4年・左下)、北村駿憲さん(学部4年・右下)。2012年の初走行時から研究に関わり、現在リーダーを務めている友田さんは来春自動車メーカーに就職することが決まっており、「パッションをもって燃料電池車の開発に携わるつもり。そして、いつかSTEPS-FCVシステムを手がけたい!」と熱く語る。

STEPS-FCVシステムの研究開発に取り組む学生メンバー。左上から友田圭祐さん(博士後期)、相坂裕斗さん(修士2年・右上)、内藤友里さん(学部4年・左下)、北村駿憲さん(学部4年・右下)。2012年の初走行時から研究に関わり、現在リーダーを務めている友田さんは来春自動車メーカーに就職することが決まっており、「パッションをもって燃料電池車の開発に携わるつもり。そして、いつかSTEPS-FCVシステムを手がけたい!」と熱く語る。



STEPSアイランドの実現と
STEPS-FCVシステムの普及

最後に、星教授に「将来、STEPS-FCVシステムを搭載した燃料電池車がどのような形で社会に普及していけばいいとお考えですか?」と聞いてみた。星教授は、将来といってもそう遠くない日のことを思い浮かべたように具体的な展望を二つ語ってくれた。

「一つは、やはり国や自動車メーカーさんを巻き込んで水素化ホウ素ナトリウムで走る燃料電池車を製品として販売できるようにすることです。ただ、その際は、単にクルマだけを対象にするのではなくて、先に紹介したような社会全体のなかでの水素化ホウ素ナトリウムの循環システムも同時に構築しなければあまり意味がない。ですから、まずは小さな島で、STEPSアイランドの完璧なモデルケースをつくることが理想の普及の第一歩になるだろうと考えています」

図4._web

ちなみに星教授によると、2007年以降、急速に水素化ホウ素ナトリウムで走る燃料電池車への関心を薄れさせた自動車の開発関係者が、粉末による走行の成功を受けて、再び関心をもちはじめているという。理由としてはインフラの問題に加え、安全性の問題もあるようだ。現行の燃料電池車が積む高圧水素タンクが安全な設計になっているとはいえ、クルマのなかではやはり低圧で水素が生成できることに越したことはなく、彼らはそれを実現させられるSTEPS-FCVシステムに関心を寄せているらしい……。

「もう一つの将来的展望としては、STEPS-FCVシステム自体をセットとして一般に流通できるようにすることがあげられます。いま、コンバートEVとして昔のクルマを電気自動車化する改造が一つの潮流になっていますが、STEPS-FCVシステムもあれと同じように簡易に載せ替えられるものにできれば普及の大きなインパクトになると考えているのです。それで、たとえばその載せ替えについては、整備力の高い全国のロータス店さんでやってもらえれば、うれしい限りなんですけどね(笑)」

取材の最後を、星教授はそんな明るい会話で締めくくってくれた。そう、この構想が現実になる頃には、もしかしたらロータス店で水素化ホウ素ナトリウムの粉末が充填されたカートリッジが販売されているかもしれない。未来はいつの間にかやってくるのではなく、星教授と星研究室の学生たちのように創り出すものなのだ。「みらいのくるま」とそのクルマのある社会を追い続ける、星研究室の研究開発に乞うご期待だ!

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