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Book Review① みらいをクールに予測する『モビリティー革命2030』(後編)

2017年4月28日更新

モビリティー革命2030_web
デロイト トーマツ コンサルティングの複数コンサルタントが著した、『モビリティー革命2030 ~自動車産業の破壊と創造~』についてさらに読み進もう。

3.3%の自動運転車が
公道を33.1%も走る

第2章「クルマの知能化・IoT化」に突入すると、デロイト トーマツ コンサルティングのクールな分析と筆致はますます冴えわたる。

〈技術的実現性に加え、社会・消費者からの要請に基づき、コネクテッドカー・自動運転車といった形でクルマの知能化・IoT化が普及する見通しである。今後20年間で、世界において100万人を超える都市人口は1.4倍、交通事故数は3倍ー中略ー とも言われる。そのような中、交通の全体「最適化」に寄与するクルマの知能化・IoT化は、これら課題解決の有望な打ち手の一つとして期待が寄せられている〉

それで日本における自動運転車の普及予測だが、順調にクルマの知能化・IoT化が進んだ場合は、いわゆる完全な自動運転車は、2030年になると全販売台数のなかの3.3%を占めることになるという。
意外に少ない印象だが、これは、自動運転車のコストがそれ以外のクルマよりも費用が高いであろうことを前提とし、消費者は追加費用を払いたがらないことを加味してはじきだした数字だからだ。

ただし、3.3%でも存在感、インパクトは相当なものとなるらしい。なぜなら、その時点における3.3%の自動運転車の多くはタクシーのように街を24時間/365日走行する公的なクルマになる可能性があり、移動距離ベースでは33.1%もの比率を占めるようになるからだ。つまり公道を走るクルマの3分の1以上が自動運転車になるかもしれないということなのである。

自動運転者_web

※出典:『モビリティー革命2030』



うーむ、どうなのだろうか。少ないようで多い感じもし、そういう意味では、リアリティがある予測に思えるわけだが……。

おそらく、デロイト トーマツ コンサルティングがいう、今後、世界的に増えていくであろう交通事故の問題のなかには、最近、日本で話題になっている認知症となった高齢者による事故の頻発とその対処法の問題も含まれると思われる(地方においては高齢者は免許を返納すると移動のための足がなくなる等の問題)。そういう意味では、人間が運転しなくても安全に走れる自動運転車の3.3%以上の普及を強く望みたいところだ。すなわち、デロイト トーマツ コンサルティングの論と予測を全面的に支持しつつ、さらなる進化と普及を夢見る次第である。

すべての「運転手」は「移動者」に?

さて、そうはいいつつも、やはり別の視点からの想像の翼は否応なく広がる。
第1章「パワートレーンの多様化」を読んだときと同様、もし自動運転車の販売が100%ほどになったとき、自分で運転したいと思っている人たちは、いったいどうなるのかということが気になって仕方がない。

もちろん、この本には、それに関する言及はまったくない。近しいものとしてあるのは、以下のようなもの悲しい記述だけだ。
〈従来の自動車産業はモノづくりにおける価値の喪失に直面しつつある。これまで自動車メーカー各社の主たる顧客への提供価値は「走る・曲がる・止まる」といったクルマの基本性能における差別化と、量産による低価格化であった。しかし、クルマの知能化社会、とりわけ(完全)自動運転社会においては、人々はハンドルを握る必要がなくなり、「運転手」は単なる「移動者」になる〉

いくらなんでも極論すぎるように思えるが、みなさんはどう捉えるだろうか?

いま、エコカーや自動運転車の進化について語られることはあっても、運転する歓びのいく末について語られることはほとんどない。これでいいはずがないだろう。

みなさんには、ぜひ、この運転する歓びに対するアンチテーゼ的なクールな一冊を読んでいただき、そのうえで、よりゆたかな次世代カー文化の在り方についての考察を深めてもらいたく思う。エコカーや自動運転車の普及の過渡期になるであろう2017年だからこそ、それは意味があることだと思うのだが、どうだろう。

モビリティー革命2030_案内用

『モビリティー革命2030 ~自動車産業の破壊と創造~』

・2016年10月10日発行
・著者:デロイト トーマツ コンサルティング
・発行:日経BP社
・発売:日経BPマーケティング
・価格:1,600円+税

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