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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2023年11月8日更新
このレース、トップ争いとは別に、第1戦同様に総合4位争いが大いに盛り上がった。
昨シーズンは、参戦クラスが異なる2台、日産のリーフe+を駆るレーサー鹿島選手(チーム:東洋電産株式会社)と、トヨタのFCV・MIRAIを駆る飯田章選手もしくは鵜飼龍太選手(チーム:AKIRA RACING)がほぼ全戦にわたって総合4位争いを繰り広げていた。
今シーズンは、そこにリーフのモーターとバッテリーを積んでEVにコンバートしたシビックを駆る山下将史選手(チーム:D-REV@武蔵精密工業 ※第1戦は水谷侑司選手 )が加わり、争いはさらに熾烈で面白くなった。
今回のレースにおいても、期待どおり、ほぼ全周回でこの3台の国産EV同士が抜きつ抜かれつの熱いバトルを繰り広げ、観る者を興奮させた。そして、最後のホームストレートで、団子状態の中から山下将史選手のシビックがジリジリと前に出て、“鼻の差”で総合4位をゲットするという超劇的シーンまで見せてくれた。雨中の激闘は、まるでレース映画のように面白い展開だった。
モデル3同士のトップ争いに多少の食い足りなさを感じていた観衆が、この3台に喝采を送ったのはいうまでもない。
このEVレースには実に多様な楽しみがある。
4位シビックの秘密兵器は
独自開発のキャパシタ
それにしても、なぜコンバートEVであるシビックが、これほどまでに高い戦闘力を示すことができたのか。昨シーズンから「結構速い」という印象はあったが、今シーズンの伸長ぶりは尋常ではない。
決勝後、チームD-REV@武蔵精密工業のピットに行き、監督的な立場である加藤宣保氏(武蔵精密工業研究開発部グループマネージャー)に急に速くなった秘密を聞いた。
それによると、今シーズンから搭載した自社製のキャパシタ(コンデンサ)が大きく奏功しているらしかった。
そもそも市販EVはアクセル全開を長く続けるとバッテリー温度が上昇し、自動的に加速の制御がはじまる。だから、レースにおいてドライバーは、その現象を避けるべく、アクセルをある程度控えめに踏んで走る必要がある。
しかし、D-REV@武蔵精密工業が独自に開発・搭載したキャパシタは、ドライバーが留意せずともバッテリーの温度上昇そのものを抑制してくれるようになっている。その結果、いきなり加速抑制が働くことがなくなり、ドライバーはこれまで以上に思い切りアクセルが踏めるようになった。今シーズンの速さはそのお陰なのだという……。
さらに、このコンバートEVのシビックには、参戦当初からマニュアルシフトが採用されている。そもそもマニュアルトランスミッションを搭載していることが速さに大きく影響しているようだった。
「マニュアルシフトだから、ドライバーの感覚と意思に沿ったモーター回転が選べる。すなわち、マニュアルによってモーター出力の一番美味しいところが自由自在に使えるようになっている」(加藤氏の話を要約)
マニュアルシフトはEVには不向きあるいは不必要というのが一般的な見方だ。しかし、レースにおいてはそうとは限らないようだ。そのことをD-REV@武蔵精密工業はしっかり見抜いて採用し、進化させていこうとしているのである。
レースに勝つための秘密兵器として、独自のキャパシタとマニュアルシフトの採用……この話を聞いて、驚きの速さの理由が、なんとなくではあるが理解できた。
かつて武蔵精密工業は、MuSASHi RT HARC-PRO.として二輪レース界を席巻した。そのDNAがEVレースの世界で息づいていると言えるのかもしれない。
最後に、加藤氏に将来の展望を聞いた。
――今はリーフのモーターとバッテリーを積んでいます。そのうち、もっと大きなモーターとバッテリーに積み替えることはあり得ますか?
加藤 あり得ます。キャパシタの熟成がある程度進んだら、次は大容量のモーターとバッテリーを積んで、さらに戦闘力をアップしていきたいと考えています。
――そのときは、モデル3よりも速いコンバートEVを目指しますか?
加藤 目指したいですね。どうせ大容量にするなら打倒モデル3で優勝ですよ!
それがいつになるのかはまだわからないが、とんでもなく速いコンバートEVをわれわれは目の当たりにするかもしれない。いや、きっと……。
繰り返すが、このEVレースには実に多様な楽しみがあるのである。
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