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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2023年5月11日更新
2023ALL JAPAN EV-GP SERIES(全日本電気自動車グランプリシリーズ)の第1戦「全日本筑波EV55㎞レース大会」27周の決勝は、午後4時15分にはじまった。
レッドシグナルがブラックアウトして全車一斉にスタート。最前列のスエヒロ自動車商会(以下、スエヒロ)の2台のモデル3は、TEAM TAISAN(以下、TAISAN)のモデル3を従える格好で閃光のように第1コーナーへと飛び込んでいった。
1番手はゼッケン35のTAKAさん選手。ゼッケン39のアニー@ニキ選手とゼッケン1の余郷敦選手が近接してそれに続く。3台がコーナーを立ち上がったときには、すでに他の電動車両は後方に置き去り状態となっていた。
スエヒロ対TAISANの対決はさておき、モデル3がため息が出るほど速い電動車であることを改めて思い知らされた。
余郷選手が魅せた
ル・マン24の実力
3台はレース序盤から前半にかけて激しいバトルを繰り返し、観衆を沸かせた。
TAISANの余郷選手の攻めの走りは特に光っていた。
予選時と同様、とにかくコーナリングが鋭くうまい。状況に応じてインあるいはアウトから挙動を乱さずコーナーに進入し、そのままスピードを落とさずスッと曲がり、出口でグイッと加速して前車に迫る。
かつてル・マン24でクラス優勝を遂げた実力がはっきりとわかる操舵。これと比べると、TAKAさん選手とアニー@ニキ選手のコーナリングはいくぶん粗さが感じられるほどだった。
実際、余郷選手はわずか2周目の第一コーナーの立ち上がりで2番手のアニー@ニキ選手を抜き去っている。いきなりのオーバーテイクではあったが、その実力をもってすればごく自然の成り行きと感じられ、驚きは少なかった。
ただただ、さすが、と見ほれるばかりだった。
TAKAさん選手の
EVレース巧者ぶり
2番手に上がった余郷選手は、間を置かずトップのTAKAさん選手を猛追する。
やはりコーナーの立ち上がりは鋭く、何度もTAKAさん選手のモデル3のテールに迫る。
周回を重ねるごとにその車間距離は詰まり、このままいけば余郷のオーバーテイクも十分にあるかと思わせる。
「やっぱり王者TAISANは強い」。そんな感想が口をつく。
が、しかし、である。
トップのTAKAさん選手は、抜かれそうになるポイントでは徹底したブロックと加速で踏ん張り、オーバーテイクを許さなかった。
余郷選手をしっかり抑えたあとは、ときにアグレッシブさを見せつつも、バッテリーの過熱でスピードダウンしないよう沈着冷静な高速ドライブでトップを維持し続けた。
まさにEVレース巧者らしい走りといえた。
30分を切ってのウィン!
この近接バトルに変化が起きたのは、レース後半15周目のことだ。
TAKAさん選手は、2周回遅れにならんとする4位以下の車両が団子状態にあるのを見て、ストレートですかさずアクセルを強く踏み、全車をパスしていった。逆に、猛追していた余郷選手は、コーナー手前で周回遅れの車両の渋滞にはまりタイムロス。詰めていたトップとの差が大きく開いた。
これで余郷選手は万事休す。
大きなアドバンテージを得たTAKAさん選手は、そのまま独走態勢に突入。最終的には55㎞27周を29分59秒787という好タイムで、ポールトゥウィンを成し遂げた。
TAKAさん選手の優勝は、これが初めてではないので、喜びは格別とまではいかない。だが、今シーズンの年間総合でスエヒロのドライバーがTAISANのドライバーに勝つ大きなチャンスを迎えていることを踏まえれば、この初戦優勝には大きな意義・価値があるように思える。今後、参戦が噂される「打倒モデル3」の新たなマシンが登場すれば状況が変わるかもしれないが、現段階では年間チャンピオンへの道が大きく開いたといって過言ではないだろう。
おめでとう、TAKAさん選手、そしてスエヒロ自動車商会!
地頭所選手への
再参戦ラブコール
レース後の表彰式。TAKAさん選手は最上位クラスであるEV-1クラスの優勝と全クラス総合優勝の二つの金メダルを首にかけながら、こんな主旨の優勝コメントを発した。
「今日は個人的に二つの目標があった。ひとつ目は予選で、(かつてシーズン4連覇を成し遂げたTAISANのドライバーである)地頭所光君が持っていた筑波でのEVのベストタイム1分1秒537を更新することを目指した。二つ目は決勝で、やはり地頭所君が記録したEV筑波55kmレースでのベストタイム30分13秒980を上回ることを目指した。残念ながら、ひとつ目は達成できなかった。でも、二つ目は29分59秒787で記録を大きく上回れた。だから、ちょっとだけ嬉しい。今年の最終戦である第6戦も筑波のレース。そのときには予選タイムも更新し、両手を挙げて喜びたい」
このコメントは、勝者スエヒロ側からの敗者TAISANの意気をくじく勝ち誇りに聞こえるかもしれないが、そう単純な話ではない。
実は、TAKAさん選手は以前のライバルである地頭所選手が参戦していないことを誰よりも悲しんでいる。なぜなら、ここ数年、予選でポールポジションを獲るにしても、決勝で優勝するにしても、年間チャンピオンになるにしても、地頭所選手を倒した上で成し遂げたいと願い続けきたからだ。彼のコメントには、そんなドライバーとしての渇望が詰まっており、あえて挑発的な表現で地頭所選手の再参戦を促したのである。
事実、決勝前にTAKAさん選手はこんな発言をしていた。
「もし、僕らが初戦から勝ち続けることができれば、TAISAN側も慌てて『おい、地頭所、走れ』ってなるかもしれない。そうなれば、レースがもっと楽しくエキサイティングなものになるはず。だから僕は今回、しっかり優勝を狙いにいくつもりです」
さて、TAISANそして地頭所選手は、今回の結果とTAKAさん選手の切なる想いをどう受け止めるだろうか……。ぜひともドラマチックな展開を期待したい。
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