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BookReview(37)『モビリティX』―日本の自動車メーカーも、モビリティの未来を明るくするDXとSXに真摯に取り組むべし!

2023年3月28日更新

書評_モビリティX_1

この本の正式書名は『モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質』と長い。キーワード的に打ち出された『モビリティX』のXは、DX=デジタルトランスフォーメーションとSX=サステナビリティトランスフォーメーションのそれぞれのXからきている。

これからの脱炭素社会に対応できる理想のモビリティは、現在進みつつあるCASE(C:コネクテッド、A:自動化、S:シェアリング、E:電動化)によるDXに加え、再生可能エネルギーを活用するエネルギー産業と融合しながら取り組んでいくSXも必要不可欠であるとの認識に基づいている。

その上で本書は、DXとSXが単なる技術導入に終わらず、顧客の新たな体験・価値(X=エクスペリエンス)の創造につながることも必要であり、Xにはその含意もあるとしている。

書評_モビリティX_2

テスラ車オーナーは
「S」で25万ドル稼げる!?

現在、シリコンバレーをはじめとしたアメリカでは、さまざまな企業がモビリティXの動きを活性化させている。

本書は、その最たる例の一つとして、イーロン・マスク率いるテスラを挙げている。

まずDXの領域。

テスラは従来C:コネクテッド、A:自動化、E:電動化を強力に推し進めてきたわけだが、将来的にロボタクシーによるS:シェアリングの実現も視野に入れている。しかも、それは顧客側に大変な体験・価値(X=エクスペリエンス)をもたらすものとなるようだ。下記は本書からの引用である。

〈(テスラ車は)自動運転が完成した際、テスラ車オーナーが使っていない駐車中にロボタクシーとなって勝手にお金を稼ぎ始める ―(略)― 購入してからのライフサイクル全体で収支を計算すると、実に15万~25万ドルの「利益」が出るという。テスラを買うことで、移動もできて儲かるかもしれないというのだ……〉

続いてSXの領域。

テスラの企業ミッションは、以前は「持続可能な輸送手段への世界の移行を加速させる」だったが、現在は「世界の持続可能エネルギーへのシフトを加速すること」に変わっている。脱炭素はエネルギーを消費する側のクルマ単体の調整だけでは難しく、エネルギーを供給する側からの調整も重要であるとの考えに導かれた変更だ。

その志に沿うように、テスラは早くからクリーンエネルギー会社を設立したり、太陽光発電の企業を買収したりしている。さらには、バッテリー製造も自社で大規模に行う計画を持っている。これらにより、いずれ脱炭素の達成はもちろん、EV普及が進んだときの電力需給のコントロールも自在にできるようになるという――。

テスラはまさにモビリティXの体現者。EVを起点とした明るい未来のモビリティのグランドデザインがしっかりとできている自動車メーカーなのである。

今のところ、日本にはテスラのように活動している自動車メーカーは皆無だ。EVを出すだけで精一杯という感さえする。モビリティXの視点でいえば、1周遅れどころか、2周、3周は遅れているといって過言ではない。

しかし本書は、そんな日本の自動車メーカーも、自分たちの強みを生かせばモビリティXの潮流に乗れるはずだと励ましてくれる。一見すると、どれも絵に描いた餅のようだが、テスラに追いつく可能性がゼロではないことはよく伝わってくる。期待と希望を持ちたい。

書評_モビリティX_3

『モビリティX シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業 DX、SXの誤解と本質』
・2022年12月19日発行
・著者:木村将之、森俊彦、下田裕和
・発行:日経BP
・価格:1,980円(税込)

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