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次世代エコカー勉強会〈17時限目〉SDGsと自動車産業―日本の自動車メーカーの取り組み(後編)

2022年2月24日更新

次世代エコカー勉強会17時限目

一般社団法人日本自動車工業会が発行する広報誌『jamagazine(ジャマガジン)』2022年2月号に掲載された、「加速する日本の自動車メーカーによるSDGsの取り組み」と題する記事を読み解いてみようという、今回の次世代エコカー勉強会。後半の大きなテーマは、自動車産業と「まちづくり」である。

自動車産業と「まちづくり」
解答はウーブン・シティ待ちか

記事の半ばでは、自動車産業と「まちづくり」について、2ブロックに渡って述べられている。確かに、交通は現代の“まち”を形成する主要要素の一つになっている。記事に付けられた2つの見出し内の一つは「誰もが安全に自由に移動できるまちづくりを」となっているが、そうしたまちづくりに自動車産業が発言・企画・参加していくことはいいことだ。では、そのまちづくりはどのようなものなのであろうか?まずは、この2ブロックの要点を挙げてみたい。

●自動運転の技術開発の進展により運転の快適さは増し、さらに交通事故のない世界の実現にも近づいていく(これは、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」にもつながる)。

●自動車メーカー各社は多種多様な福祉車両やシニアカーなどを市場に提供し、体が不自由な人や高齢者などの交通弱者の移動手段確保に取り組んでいる。

●新たなパーソナルモビリティーの開発・販売も進展し始めている。

●今後、自動運転技術を組み合わせることにより、11の「住み続けられるまちづくりを」の目標達成に貢献することも自動車産業の役割となっている。

●近未来の都市交通にとって、公共交通機関への自動運転車の採用は不可欠。

●過疎化が進む地域では高齢者などの日常生活の足を確保することが大きな問題となっている。ラストワンマイルの課題解消にモビリティーの多様化と自動運転技術の組み合わせが大きく役立つ。

●過疎化が進む中山間地では、ガソリンや軽油だけを使った自動車から電動車両に転換していくことで問題が解消される。

●都市間を結ぶ高速道路では、車車間通信技術を用いたトラックの隊列走行実験も行われており、輸送の効率化と物流業界の人手不足解消策として期待されている。

この2ブロックでの記述からは、残念ながら自動車産業発のまちづくりをはっきりとらえることはできない。そこにあるのは都市の概念というよりは、都市の機能のリニューアルや付加となる要素である。

しかし、この記事に感じる物足りなさは、言外に“あること”を示唆する。それは、SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」への回答は、トヨタが開発する実証都市「コネクテッド・シティ=Woven City(ウーブン・シティ)」から示されるのではないか、という期待である。
※ただし、この記事にWoven City(ウーブン・シティ)の記述はない(ビジュアルでの掲載もない)。

従来の自動車産業の発想にまちづくりの要素は希薄であった。しかし、未来を見つめ、持続可能な開発目標に真摯に向き合い、持続可能な社会を創りだそうとしたとき、自動車産業は「まちづくりを避けて通れない」という事実に気付いたわけである。

Woven City(ウーブン・シティ)の第一期完成は2024‐25年ということだが、そこにどんな“まち”があるのか、興味は尽きない。

Woven City

Woven City(ウーブン・シティ)のイメージイラスト



CSRの見直しや
グループによる共同開発

この記事の後半では、日本の自動車メーカー各社が取り組み続けているCSR(企業の社会的責任)活動を、SDGsの観点から見直すことによって、ゴール4の「質の高い教育をみんなに」や、ゴール5の「ジェンダー平等を実現しよう」、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」、ゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」などに取り組んでいることが報告されている。

また、世界の自動車業界は、100年に1度の大変革期を乗り切るために資本や技術の提携などを行っており、そこで形成されたグループによる共同開発の中でゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」が進められているという記述もある。

ここで述べられたグループによる共同開発などについて深堀りしていくとおもしろそうだが、他のブロック同様に具体的な記述はされていない。

「巻き返し」の決意を
最後の記述で表明

さて、たどり着いた最後のブロックの見出しは、「日本の自動車メーカーの巻き返しが始まる」という元気のいいものである。だが、本文はネガティブなトーンで始まる。日本の自動車メーカーはSDGsへの取り組みをがんばって行っているのに……以下のような評価があると、真摯に認めるのだ。
〈世界の自動車産業の中で、日本の自動車産業のSDGsの取り組みは、欧米の自動車産業に遅れを取っているという声もあります〉(jamagazine2022年2月号)

そうなってしまっている理由を、記事では二つ挙げている。

●日本の電力供給において、石炭火力による発電が占めるウエートが大きいこと

●欧米の自動車産業が自動車のEVシフトを加速させたことに対して、HVやPHV、EV、FCVといったマルチソリューションを唱えていた日本の取り組みを評価しない意見があったこと

そして、日本の自動車メーカーのEVシフトが遅れたのは、「自動車を利用する地域や使い方に合った自動車の提供」「自動車の電動化へのサプライチェーンの対応」「車載電池などに用いる天然資源の確保問題」などの現実的な課題を考慮したためだとしつつも、以下のように記事を締めくくっている。
〈グローバルに活躍する日本の自動車メーカー各社も世界の潮流を見極め、EVの市場投入を積極化していきます。…(中略)…カーボンニュートラルを中心にSDGsに貢献する活動の動きが速まる中、日本の自動車メーカーの巻き返しも始まっているのです〉(jamagazine2022年2月号)

一般社団法人日本自動車工業会が発行する広報誌『jamagazine(ジャマガジン)』の記事における記述は、日本の自動車メーカーの発言と考えていい。もちろん、各社間に考えや思いの違いはあるが、それを整えた上でこの記事が成立している。

そう考えると、これまで“重い腰”をなかなか上げようとしなかった日本の自動車メーカーが、2022年の初めに「EVの市場投入を積極化する」と発信した意義は大きいと思う。

ここに至るまでに、トヨタのバッテリーEV説明会開催があった。それが潮目だったのかもしれない。

とにかく、SDGsの中の大きな課題であるCO2排出削減については、明らかにアクションが求められる時期に来ているということだろう。また、自動車産業や自動車メーカー、あるいは一定地域固有の現実的な課題に視点を置くのではなく、もっと大きく地球全体をとらえる視点からの決断が優先されるべきだと日本の自動車メーカーが考えているということだ。

飛躍したイメージかもしれないが、SDGsは鎖国状態にある日本の自動車マーケットを開国させる黒船の役割を果たすのかもしれない。日本の自動車メーカーが変わるのであれば、日本の自動車マーケットも交通社会も2022年を境に変わっていくに違いない。『jamagazine(ジャマガジン)』2022年2月号の記事は、その変化の事前通知と言えそうだ。

SDGsと自動車産業―日本の自動車メーカーの取り組み(前編)

SDGsと自動車産業―日本の自動車メーカーの取り組み(後編)

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