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2021全日本EVグランプリシリーズ 第7戦 レポート①―王者の欠場、赤旗の中断。カオスな予選でアニー選手がトップに立った!

2022年5月9日更新

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ハロウィン当日となった10月31日の日曜日。千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで、2021全日本EVグランプリシリーズ(ALL JAPAN EV-GP SERIES)の最終戦となる第7戦(25周、60㎞)が開催された。

今回、既に4年連続のシリーズ総合チャンピオンを決めている地頭所光選手(Team TAISAN)は不参戦。そのため、優勝候補は、最高峰クラスのEV-1クラスにテスラモデル3を駆って参戦する5人に絞られていた。

最有力候補は、前戦でチャンピオン地頭所選手を破って優勝した総合ランキング2位のTAKAさん選手。それにランキング3位のアニー選手、ランキング4位の今橋彩佳選手、ランキング5位のKIMI選手、初参戦のいとうりな選手と続くわけだが、それぞれ実力は拮抗しており、誰が勝ってもおかしくない状況となっていた。

レースを主催する日本電気自動車レース協会(JEVRA)の富沢久哉事務局長は、決勝前にこう語っている。

「地頭所選手が出ないのは寂しいといえば寂しい。でも、シーズンを通して彼ばかり目立つのも面白くない。最終戦である今回は、上位のテスラに乗る選手たち全員に優勝するチャンスがあるわけで、いつも以上に熾烈なバトルが繰り広げられることが予想できる。観ていてすごく楽しいレースになるはず」

TAKAさん選手が
痛恨のコースアウト

15分間の予選は午前9時にスタートした。

天候は小雨。ウエットではないものの、路面はうっすら黒く濡れている。

そんな中、全クラスの車両13台が次々とコースイン。軽く1~2周走り、タイヤを温めてからタイムアタックへと入ろうとしていた。

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ところが、である。予選がはじまって数分も経たないうちに中断の赤旗が出てしまう。

優勝候補の一人であるTAKAさん選手(#33 適当Lifeアトリエ Model3)が、最初の周回の第2コーナーを抜けたあたりでタイヤを滑らせてコースアウトし、コース上に砂利をまき散らしてしまったのだ。

「ああ」。あちこちから残念そうなため息が聞こえてきた。

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この影響で予選は5分に短縮された。各車はその短い時間でタイムアタックを行い、決勝のグリッド順を決めることになった。かなり厳しい条件といえる。

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そんな状況下で集中力を高めて攻めたアニー選手(#35 スエヒロ テスラ3)が1分19秒154のタイムでポールポジションを獲得。そこから遅れることコンマ数秒から1秒ちょっとの差で、今橋彩佳選手(#2 ガーデンクリニック CNR3 アキラR テスラ)、KIMI選手(#8 GULF.RACING.Model3)、いとうりな選手(#1 TEAM TAISAN 東大 UPテスラ)が続いた。決勝グリッド上位は、やはりTAKAさん選手を除くテスラモデル3が並んだ。

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予選を中断させる原因をつくったTAKAさん選手は、クルマの点検・整備のため、再開された予選走行を回避していた。決勝はピットからのスタートとなり、優勝の可能性はほぼ消滅していた。

出だしから波乱の展開。果たして最終戦の栄冠は誰が勝ち取るのか!?

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1人の選手から
優勝宣言が飛び出した!

予選後、優勝候補として残ったテスラ勢4人に決勝への意気込みを聞いた。

〈予選4位・いとうりな選手〉
元レースクイーンのいとう選手。現在はKYOJO CUPに参戦し抜群の速さを見せるなど、ドライバーとしての輝きも放ちはじめている。決勝で目指す順位を聞くと、EVレースは初ということで「とりあえず先頭集団に付いていって、上手くいけば2位を狙いたい」と控えめな返事。その一方で「EVは回生ブレーキが効くので、エンジン車のようにコーナー手前でガツンとブレーキングする必要がない。踏力が小さい女性でも勝利できる可能性は少なくない」と、言外に2位より上を狙いたいという願望をチラつかせていた。

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〈予選3位・KIMI選手〉
これまでの予選では常にいい位置に付けているが、決勝ではアクセルを踏み過ぎてバッテリーの過熱制御によるスピードダウンを招き、惜敗することがたびたびだったKIMI選手。そのことを前提に意気込みを聞くと、「参戦したてのころはエンジン車レースの思い切りアクセルを踏む癖が出て失速していた。でも、そんな僕も学習して、近ごろはかなり抑えて走れるようになった。ものすごくストレスが溜まるけど、これから徐々にいい結果が残せそうな気はしている」との返答。そして、「今回も最初から飛ばし過ぎないよう気をつける。その作戦で、できれば優勝し、溜まりに溜まったストレスを発散させたい」と秘めた野望を明かしてくれた。

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〈予選2位・今橋彩佳選手〉
シーズン途中からの参戦ながら、タイヤのバーストによる1回のリタイヤを除いてはすべて上位入賞を果たしている実力派の今橋選手。第5戦後に我々が行った単独インタビュー2021全日本EVグランプリシリーズ 第5戦 レポート③では「今シーズン中に初優勝したい」と明言していたので、最後の一戦でそれが実現できるかどうかを尋ねた。すると「今日は勝てると思う」と躊躇なく優勝宣言を口にした。聞けば、レースを重ねていくうちにバッテリーを過熱させず電欠もさせないでEVを速く走らせる感覚がつかめたのだという。今回の雨模様の決勝では、その感覚を活かしたドライビングをして早い段階でトップに立てれば、そのままゴールできると確信しているとのことだった。

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〈予選1位・アニー選手〉
弟のTAKAさん選手の活躍に刺激され、今シーズンのはじめからフル参戦しているアニー選手。コンスタントに好成績を挙げてはいるものの、優勝はまだない。だが、今回はポールポジションからのスタートということで初優勝の大チャンス。さぞや気合いが入っているに違いないと思い、意気込みを聞いてみた。すると「本当はポールを獲るつもりはなかった。決勝では後ろから付いていって、あわよくばトップに立てればいいかなぐらいに考えていた。作戦が白紙になって戸惑っている」と自信なさげな回答。だが、それは謙虚過ぎる発言のように思え、なおも食い下がったところ、「せっかくのポール。そのままトップを走り続けるプランに切り替えて、優勝を狙ってみるのもいい」との本音が出た。前戦で優勝したTAKAさん選手に続いて優勝すれば、史上初となる兄弟での連続優勝の快挙。狙わないわけにはいかないだろう。

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やはり、みんなが優勝を狙っていた。ほぼ同じ性能のクルマ、拮抗したドライビングの実力。決勝での見応えのあるバトルへの期待がいやが上にも高まった。

● ● ●


前編の最後に、予選でコースアウトしたTAKAさん選手の声を紹介しておこう。

酷であるとは承知しつつ、TAKAさん選手に総合ランキング2位の上手くて速いドライバーが、なぜファーストラップのタイムアタック前にコースアウトしてしまったのか、そして、決勝では最後尾となるピットスタートからどれだけ巻き返すつもりなのかを聞いた。

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まず、コースアウトした原因。TAKAさん選手は「小雨が降る朝イチの予選1周目。温まっていないSタイヤで滑りやすいことはわかっていた。だけど、気負い過ぎてアクセルを踏み過ぎてしまった」と教えてくれた。クルマが原因ではなかった。優秀なドライバーも心理状態ひとつで滑ってしまうということだ。

次に、決勝ではピットからどこまで巻き返すつもりかについて。TAKAさん選手は「優勝はさすがに厳しい。でも表彰台は狙いたい。ワンチャンあると思っている」との意気込みを表明した。これを実現するには最低でも11台抜かなければならず、ほかのクラスのパワーが小さいクルマはともかく、同じテスラモデル3を2台も抜く必要がある。かなりの難行だが、もし本当にそんな走りにチャレンジしてくれるなら、トップ争いとは別の楽しみができる。期待したい。

最後に、決勝前で気が早いと思ったが、この1年を振り返っての感慨を聞いた。TAKAさん選手は、「うーん」と唸ってから、こう答えた。
「やっぱり前戦で地頭所君を真っ向勝負で破って優勝できたのは、これまでで一番嬉しかったかな。そういう意味では充実した1年といえるし、今後もこの感じを維持しながら頑張っていきたい。ただ、来シーズンはもっと多くのモデル3が参戦してくれると嬉しいかな。そうすれば、上位争いが白熱して面白くなるから。ロータスタウンの読者のみなさんの中に、我こそはと思う方がいたら、ぜひモデル3をひっさげて参戦してほしい!」

なお、写真のTAKAさん選手が手に竹箒を持っているのは、ハロウィンで魔女のコスプレをしたからではない。コースアウトした際にクルマのアンダーカバーに入り込んだ大量の砂利を竹箒で取り除く作業をしているときにインタビューを受けたからである。撮影の段になると、予選を中断させた申し訳なさがあったのであろうか。TAKAさん選手は「罰として余計な作業を強いられている」姿をアピールし、周りに寛大な許しを乞うたのである(たぶん)。

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2021全日本EVグランプリシリーズ 第7戦 レポート

①王者の欠場、赤旗の中断。カオスな予選でアニー選手がトップに立った!

②「女子に二言はない」。今橋彩佳選手が宣言どおりに初優勝を決めた!

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